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いまアウトドア的に群馬・桐生が熱いらしい!とっても気になるので行ってみた

(2017.04.11)

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桐生市イメージアップポスターはまるで女性誌の表紙のようでとても話題になった。

「桐生がね、なかなか面白いんですよ」群馬の友人が言った。群馬県桐生市。地名は前々から知ってはいたが、行ったことはない。なぜか…。これといって行く理由がなかったからだ。しかし、最近は行ってみたいアウトドアスポットが続々と増えているというので、”初訪桐”することにした。

 桐生市は群馬県の東側にある。もしかすると、「桐生」を発音できない読者の皆さんもいるかもしれない。桐に生きると書いて「きりゅう」と読む。桐生で思い浮かぶのは、織物の町、野球の強豪校、そして篠原涼子…。うーむ、片手に収まるほどしか浮かんでこない。たしか小学校(注:母校は神奈川県だが、踊った)の運動会で踊った八木節も桐生あたりの民謡のはず。などとはじめて訪れる桐生に思いを巡らせていた。

パーヴェイヤーズの店内。20年間使われていなかった鉄工所の跡地を利用した面白い作り。

 3月初旬に東京・世田谷に北欧アウトドアブランドのNordiskの直営店がオープンしたことは「NORDISK世界初の直営店が東京・世田谷にオープン。プロデュースするのは、toeの山根さとしさん。」の記事でご紹介したとおり。世田谷のショップオープンから一週間弱、3月10日にオープンしたのが今回最初に訪れたPurveyors(パーヴェイヤーズ)だ。Nordiskの全ラインアップを揃え、さらに商品の問い合わせや修理、返品といったカスタマーセンターNordisk BASEの役割も担っている。

スタッフの関東さん。この仕事のために桐生暮らしがスタート!住みやすい町で毎日楽しいと話す。

 パーヴェイヤーズとは、「ご用達」「調達人」という意味だという。みんなのご用達になってくれたら…、そんな思いが込められている。製鉄工場の跡地を利用して作られている店内には、Nordiskテントがいくつも張られ、くつろぎながら現物を見ることができる。そして国内外からセレクトされたこだわりのグッズも並ぶ。「アウトドアグッズというと、年に数回の出番しかないことが多いですよね。でも、しまい込むのではなくて、もっと日常でも使えるようなものを揃えています」と、スタッフの関東帝香(きみか)さん。

2Fのセレクト商品が並ぶ一角。家でもアウトドアでも使えるグッズがところ狭しとある。

バックパックなどのギアから、アパレル類、鍋、食器、文房具といった小物まで豊富にラインアップされており、時間を忘れて見入ってしまう。ほうきや木箱など昔から日本で使われてきたものも多く「和」を感じる。これらのグッズをセレクトしているのは、オーナーの小林宏明さんだ。日本中、そして世界各地を旅して、これは!と思うものを選んでいる。

 小林さんは、神奈川県生まれ。過ごした時間でいえば東京がいちばん長いというが、桐生に魅了されたひとり。

「いろいろな方との出会いがあってここをオープンすることができました。桐生はほんとうに面白い町ですよ。人もユニークだし、町自体もコンパクトシティというか大きすぎなくて。フィールドにも近いですしね。朝ちょっと山に登りにいってコーヒーを飲んだりして」

オーナーの小林さん。いまは東京と行ったり来たりだが、週末は家族も桐生に来てともに過ごすという。

都内との往復の日々を送る小林さんも徐々に桐生で過ごす日が多くなってきているそうだ。

「地元の方に話しを聞くと、昔は県内から桐生にみんな洋服を買いに来たそうです。繊維の町ですよね。ここでファッショナブルな着こなしを手に入れて。スカジャンってありますよね、横須賀の。あの刺繍も桐生で縫われていたそうです。だからここには桐生人という誇りがあるんです」

 繊都1300年の桐生。繊維の町として栄えた歴史は古く、奈良時代の文献にはすでに絹を朝廷に献上した記録があるという。1600年、天下分け目の大戦・関ヶ原の戦いでは徳川軍に2400もの軍旗をわずか1日で収めたという逸話もあり、以来、天領とされ養蚕と絹織物で栄えた。県内には2014年に世界遺産登録された富岡製糸場と絹産業遺跡群もあり、群馬はまさに繊維の町だ。「西の西陣、東の桐生」と賞されたプライドはいまも息づいている。

1Fのスペース。テーブルとイスもあり、くつろげる。カフェも併設しコーヒーなども提供している。

 そんな桐生に魅せられた小林さんは、これまでイベント制作など都内で長らく仕事をしてきた。さまざまなジャンルの最新・最先端が集まる東京で培ってきたことを、地方で活かしていきたいと話す。

 「東京から離れた地方で、その地域の規模や大きさにあったものに発展させていく、そんな風に思います。ここは車でも電車でも都心から2時間ほどかかるので、決してアクセスがいい場所ではないです。でもそれが、わざわざ目指していかないとならない絶妙な距離とも思います。ノルディスクのCEOであるエリック・モーラーもオープンに先立って桐生に来ました。ノルディスク本社があるデンマークのシルケボーもコペンハーゲンから電車で4時間かかる場所なのですが、雰囲気がとても似ているって喜んでいました」

1Fには男女別のお手洗いがある。そして授乳室も!子ども連れにやさしいお店だ。

 店内は広々、テント内に入ってみたり寝てみたり、じっくり物選びができるだろう。この日は春休みだったこともあり、ファミリーが多く来店。まるで公園に来たようだ。近所の人もよく来てくれているという。地元に根付いた店作りができている印象だった。

店内をくまなく見ていると、洒落たショップカードを発見。どうやらコーヒースタンドのものらしい。よく見ると、バックパックを背負っているロゴがあるではないか!むむ、これは行ってみたい。パーヴェイヤーズを後にし、さっそく店舗のある駅方面へ。

このカードに導かれてお店へGO。裏面にはバックパッカーが! ©minmin

店主のノリさん。突然のアポ無し取材にもかかわらず、笑顔で対応してくれた。

 桐生駅北口の目の前に、NORRY’S COFFEE(ノーリーズコーヒー)はあった。テイクアウトメインながら席も3つほどあり、座ってコーヒーを楽しむこともできる。さっそくコーヒーを注文。この日のメニューは4種類ほどあり、エチオピアをオーダーする。紅茶のような香り高いフルーティな味わいでおいしかった。店主のノリさんは桐生出身、バックパッカーでいろいろな場所へ旅をしていたという。数年前に地元に戻って店をオープンさせた。

店内に飾られた絵は、地元出身のdetellさんというアーティストのもの。

 大学や就職などで一度は地元を離れ、ある程度の年齢になってまた戻ってくるというのは、よくあることかもしれない。でも、こうしてノリさんのように店を持ち起業するという、独立したたくましさには、自ら仕事を生み出すDIYを感じる。地方で暮らしている友人たちもフリーランスであったり、いわゆる一国一城の主であることが多い。

 さて、この日最後の目的地も桐生で起業したアウトドアブランド、PRIRET(プライレット)だ。繊維の町ならではの織物を活かし、「山ストール」というアウトドアで使うことを目的に作られたアイテムを展開している。

店は、大正時代に立てられたレンガ造りの繊維工場跡地。国の有形文化財に指定されている。桐生市内にはこうした貴重な建物が数多く現存。

プライレットのショップは、桐生の町づくりの起点となった桐生天満宮の近くにあった。出迎えてくれたのは山ストールの発案者でもある上久保匡人さん。ブランドができたいきさつなどを聞いてみた。

プライレットの上久保さん。地元桐生でアウトドアブランドを立ち上げて6年ほどになる。

「もともとは山登りには興味がなかったんですが、大学のときに友人に誘われて山に行くようになりました。ちかくの赤城山などに。大学を卒業してワーホリでカナダへ。住んでいたのは、ロッキー山脈の麓、バンフという町です。山がむちゃくちゃきれいでしたね。帰国したあとは何をしようか考えていました」

地元・桐生に戻ってきた上久保さんだったが、何を生業としていくか悩んでいた。都内に行けば働き口は見つかりそうだが、幼いころから山の近くで育ち、カナダでも山に囲まれていた。その環境からか、「やっぱり群馬は出られないなぁ」と、しばらくは家の仕事を手伝うなどしながら留まることを決めたそうだ。

店内。山ストールの他に、キャップやTシャツなども扱う。文化財の建物だけにとても趣きがある。

「地元の産業を活かしてなにかしたいよね、と、友人とも話したりしていました。それではじめはジャケットなどのアパレルをやろうと思ったんです。桐生だったら生地からオリジナルができるだろうと」

そして試作品も作ってみたが、どうもしっくりこなかったという。またサイズ展開を含めた量産を視野に入れると、ますます先行きは不安になっていった。

「作ってはみたのですが、着心地はいまいち。なかなかハードルは高かったですね。行き詰まっていたころに、いつも相談にのってもらっていた地元の機織会社の社長さんが「うちはストールなんかも作れるよ」と。でも、自分自身ストールを日常で使わなかったので、ストール?石田純一?アウトドアで使うかな?そんな感じでした」

筒状になっているストール。軽くて柔らかく、肌触りもいい。ネックゲイターのように使っても良さそうだ。

 しかし、その社長さんにもらったサンプルを、たまたま友人にプレゼントしたときにヒラメキがあったという。

「友人の女の子の誕生日があってストールをプレゼントしたんです。そしたら、その子がそれを頭に巻いたりもして、いろいろ使えるね!と。あ!頭に巻いてもいいのか、と思いました。この風通織(ふうつうおり)は二重構造で、生地の隙間を風が通り乾きも速い。またシルクは紫外線にも強くアウトドアにいいじゃないかと。山ストールという言葉の響きもよかったんです」

 山ストールは、桐生を中心とする足利、佐野などを含めた両毛地区で作られている。桐生のすぐ隣は栃木県。ここ一体を含めて両毛(りょうもう)と呼ばれており、織物が盛んに行われていたのだ。

両面は織りでしっかりつながっている。風通織はゆっくり織り上げるので風合いよくふんわりと仕上がるそうだ。

 「風通織(ふうつうおり)は、桐生の伝統的な織り方なんです。二重で筒型になっています。経糸には両面ともコットンを、片面の緯糸にシルクを使っています。100%シルクだと摩擦などに弱くなってしまうので、混紡しています。生地の両面に異なる色を染めているのですが、最初は職人さんから、生地が二重だからできない、と難色を示されました。でも最終的には、やってみるか!と」

 プライレットの山ストールには赤城山の等高線がデザインされている。そのひとつひとつは職人が手で染め付ける手捺染(なっせん)という技術によるもの。伝統の職人技が生きている。

 町中に織機の音が轟いていた昔に比べると、いまはずいぶんと静かになってきている。しかし、こうして上久保さんのように地元の産業を活かしたチャレンジを大先輩たちが応援してくれているという。

山ストールの生産工程を垣間見れる映像。職人技が光る。

「なにも知らないところからスタートしたので、ほんとうに一から教わりました。きっかけをくれた社長さんからは、若者が織物に興味を持ってくれて嬉しい!出世払いでいいよ!なんて、後押しをしてもらいました。山ストールはそれなりにお値段がします。でも、職人さんたちの手を介して丁寧に作られていることなどを知っていただければ、納得していただけると思います」

 PRIRETはPrivateとSecretを合わせた造語で、「自分たちた欲しいものを密かに作る」という意味合いで名づけられたそうだが、そこには山ストールを支える職人たちのPride(誇り)も織り込まれている気がした。

 すこし早足で回った桐生ツアーは、日暮れとともに終了。今回は町中心にまわってみたが、市内には吾妻山という481メートルほどの山がある。標高こそ低いが、なかなか勾配もあり歩きごたえがあるそうだ。市内の学校がハイキングで訪れたり、誰もが登ったことがある、市民の憩いの場、そんな山らしい。次回はぜひとも吾妻山に訪れたいと思う。

Purveyors.(パーヴェイヤーズ) http://purveyors.jp/
桐生市仲町2-11-4
電話:0277-32-3446

NORRY’S COFFEE(ノーリーズコーヒー) https://www.norryscoffee.com/
桐生市宮前町2-8-6
電話:0277-47-7655

PRIRET(プライレット) http://priret.com/
桐生市東久方町1-1-55
電話:090-6316-1388

(文=須藤ナオミ、写真=sumi☆photo)

 
 
ライター
A kimama編集部
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