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ゾウから徒歩旅行まで!? 作り手の高い志が感じられるアウトドアな「山のリトルプレス」3冊を紹介

(2017.08.04)

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リトルプレスとは、個人や小さな団体が制作から流通までのいっさいを手掛けている小冊子のこと。リトルプレスという名称以外に「MAGAZINE」の「ZINE(ジン)」という呼び名もあります。また、古くは「同人誌」と言ったらわかる方もいるでしょう。いつの時代も世間の流れなどとは違うところにある作り手の人々の「声」が、文字になり、束になり、人知れず書店に置かれているのです。そして、それを面白いと思う人が、少なくともたしかに存在するのもまた事実です。そこで、今回は「山のリトルプレス」として、アウトドアをテーマにした3つのリトルプレスをご紹介いたします。
『mürren(ミューレン)』〜街と山のあいだ。
 身近な自然や山をテーマにしたリトルプレスです。毎年2巻ずつ刊行されていて今季の刊行で21号目になります。面白いのがその特集テーマです。「山の看板」「峠のだんご」「冬のみどり」「行動食」など山にまつわるテーマから、「琉球切手」「アイヌ」「アタカマ砂漠」「壺と私」など、山とはまったく関係のないテーマまで、さまざま自由自在です。なかには「ゾウ」というテーマもありました(笑)。
 この冊子で、一番に覚えている特集は「行動食」です。昨今、山の行動食は、軽くて、美味しくて、保存も効くものが多く出回っていますが、昔の登山家は何を持って行ったのでしょう? 加藤文太郎の「右のポケットに甘納豆、左のポケットに煮干し」も有名ですが、驚いたのは登山家であり霊長類学者でもある今西錦司が持っていくのは「かつお節」であったこと。確かにこの行動食は完璧に近いものがあります。小さく削って舐めていれば飴のように、水と一緒に沸かせばダシに。軽量でたんぱく質も補え、保存もきく! ということで、とても驚かされました。
 このように『mürren(ミューレン)』という冊子は、散歩からハイキング、ピクニック、そして登山のように、身近なものから小難しい山岳文学まで、アウトドアの新しい好奇心を刺激してくれる一冊なのです。最新号のテーマは「多摩丘陵」。まもなく発売です!

『mürren(ミューレン)』
500円+税
編集・制作/若菜晃子 

『Köln(ケルン)』
 以前、当店の店内で「山のドローイング展」を開催してもらったこともある、画家であり、パン屋さんでもある内藤亜希子さんと写真家の砺波周平さんがつくるリトルプレス『Köln(ケルン)』。夏の八ヶ岳の稜線や山中の様子を素描とも言えるラフなドローイングで描くのは前者、森林限界の八ヶ岳の岩肌や稜線、そして積み上がったケルンの写真は後者によるものです。ともに、八ヶ岳の麓で暮らしています。SNSが発達し、いつも情報があふれきっているなか、この冊子には「言葉」、「文章」がないのです。いや、必要がないのかもしれません。
 読みモノより観るモノ。登山者たちが積み上げたケルンはいつでも同じでしょうか? またひとり、またひとりと積み上げていくように『Köln(ケルン)』のページをめくる、そんな想いを馳せながら。

『Köln(ケルン)』
編集・制作 内藤亜希子&砺波周平
500円+税

『LOCKET』
 No2の特集は、徒歩旅行。冒頭からリヤカーマンこと永瀬忠志さんを引っ張り出したのには驚きます。このチョイスにセンスを感じます。格好のいいバックパッキング特集は、もう見飽きたからこそ、できるセレクトがあります。内容も『PAPERSKY』の編集長・ルーカスさんとの対談だったり、北アルプス紀行、屋久島紀行と多彩。その発行人でもある内田洋介さんは、企画、ライティング、取材、撮影、編集、デザイン、そして流通と、ほぼ全てをひとりでこなします。
 創刊号を制作した頃は、たしかまだ学生だったと憶えています。その冊子作りも大学のDTP環境を使用し、雑誌のデザインやレイアウトを見様見真似で制作したものだから大したものです。
 私が好きなリトルプレスは「何を伝えたいか」。ただ、それだけ。この部分がしっかりと筋が通っていれば、デザインやレイアウトなんてものは後からどうにでもなります。よく若者が挨拶もそこそこに「こんな冊子作ったんすよ」的な感じで営業と称して持ってくることがありますが、それでも私は好意的に受け止めてあげています。「お~どれどれ、見せてみなさい。いいね~」なんて言いながら。ただ、これはあくまで若いやつに限ります。たしか、この『LOCKET』の発行人の内田君もモジモジしながら来店してくれたのを覚えています。現在の彼は、某出版社で激務をこなしてながら、『LOCKET』の次号の構想を企てているはず。どこかで、冊子『LOCKET』を見つけたら、ぜひページをめくってみていただきたい。

『LOCKET』
編集・制作:内田洋介 
1000円+税
  
次回は、世田谷文学館で現在開催中の「山へ! to the mountains 展」の様子をレポートしたいと思います。お楽しみに。
(文・写真=荘田賢介「books moblo」)

 
 
ライター
A kimama編集部
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