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Antti Auttiの新作「Arctic Lights」は、ホームともいえる北極圏への原点回帰の旅だ

(2017.11.08)

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画像:©TSUTOMU NAKATA

 日本でもおなじみのプロスノーボーダーAntti Autti(アンティ・アウティ)。冬季五輪やWinter X-Gamesなどで活躍し、日本ではToyota Big AirやX-Trail Jamにも出場してましたので、実際に彼のパフォーマンスを札幌や東京ドームで見たという方も少なくないのでは? その後はコンペティションシーンの第一線から退き、フリーライディングで世界で自己表現を続けています。日本の雪もこよなく愛し、魚沼、白馬、ニセコ、旭岳といった豪雪エリアにも度々訪れていますね。昨年発表されたSTATEMENT IIシリーズの中の「ONSEN TOUR」という作品は、そんなAnttiの日本愛溢れる映像でした。
 
 そして、今回の新作は「Arctic Lights」という作品です。直訳すれば「北極圏の光」。

画像:©TSUTOMU NAKATA

 彼のホームページ「AnttisWorld」の投稿を読んでいると、少し心境の変化があったようです。これまでの「世界中を飛び回ってフリーライディングのベストスポットを見つける旅」とは違い、「ホームともいえる北極圏の可能性を再発見する旅」を目指したと書いてありました。すなわちそれは、北極圏にほど近いフィンランドの街に生まれ育ち、10歳からスノーボードを始めたAntti自身の原点回帰の旅かもしれません。
  
 前述のAnttisWorldにはいろいろ心情を吐露した記事が投稿されているんですが、9月17日投稿された記事をここに翻訳して引用します。

* * *

人生でもっとも重要なプロジェクト

 ストレスを感じています。今日、あるプロジェクトのティーザーをリリースしようとしています。ちっともワクワクしないし、イライラしてるかも? こんな気分になるなんて思ってもみなかった。
 僕のメールボックスはパンパンで、スケジュールに追われています。今日はもっと盛り上がるべきなんですが、実は山に逃げ出したい気分なんです。ここ10年来そうやってきたようにニュージーランドへ行って思いっきりパウダースノーを楽しめるこんな時期に、なんで自宅のコンピューターの前に座ってなきゃならないんだ? クソッ! でも自分に言い聞かせました。『アンティ、これはお前が望んだことだ。家で過ごす方法を学びたがってたじゃないか。滑ることより家でじっとして、何かに集中することを学びたがってたじゃないか。アンティ、お前はここから逃げられない』と。
 メールはあいかわらず来つづけているけど、愛犬のTakuを散歩に連れて行かなきゃ。僕は普段、こいつを森に連れて行って自由に走り回らせてやるんです。でも今日はリーシュにつないでちょっと散歩するだけ。コンピュータとにらめっこに忙しくって時間を無駄にできないんだ。外に出てTakuにおしっこさせるだけ。もうすんだの? まだ家に戻らなくてもいいだよ。心配すんな、そこらじゅうクンクン嗅ぎ回ってもいいんだよ。でもちょっと急いでくれよ。僕らはまだ急かされてるんだから。
 Takuは木の周りを嗅ぎ回り始めました。ふと僕は、もうちょっと長く散歩したほうがいいかなと考えました。
 通常Takuは、リーシュを目一杯引っ張るように走り出すんですが、今日はとってもおとなしいんです。幸せそうに僕の横を歩いてます。そんなこんなで僕は気分がよくなっていることに気づきました。で、このまま歩き続けようと決めました。
 いつの間にか僕が育った家のそばにいることに気づきました。たくさんの思い出が蘇ってきました。そのほとんどが子どもの頃に友だちと滑ったスノーボードの思い出です。
 僕はそのまま歩いて行って、友だちのMattiが育ったアパートを見つけました。彼と僕とは本当に長い間友だちなんです。でも今日みたいに思い出したことは今までなかったな。本当に突然思い出したんです。僕らはある種原点的なものをリリースしようとしていて、Mattiはその中の非常に大きなパートを担っています。Mattiそれに僕の友だちTeemu、Tuukka、Iisakki、Jani、Miikka、Ilmoたちがいなかったら、このプロジェクトが陽の目を見ることはなかったでしょう。
 僕の友人たちは、僕にとってすごく大変なこのドキュメンタリー制作に参加することを決めました。大変といっても、体力的にではなく精神的にね。なんでこのプロジェクトをやりたがったのかわからないけど、みんなサポートしてくれています。たとえ僕の問題が、個人としてアスリートとして現時点ではさほど重大なことでないとしても、放ってはおけなかったんでしょう。
 散歩は続き、Takuはまだお行儀よくしています。彼のフンを始末しながら僕の彼女Ellaを思い出しました。Takuは先週ひどい下痢をしました。っていうか壁に飛び散るくらい。でも今では、何事もなかったかのようにしてるけど。
 で、Ellaについて考えました。彼女はこのことで何度もバトルしてきたし、それでもまだ彼女は僕の活動を最大限に支えてくれてます。彼女は僕を誰よりも理解していて、猛プッシュするより別の解決法があるってことを教えてくれるです。以前の僕は、体力的に強くなれば精神的にも強くなれるって考えていました。でも今回に関しては、これ以上ミスは犯せません。僕の愛するライフスタイルが、僕のいわゆる普通の生活にも支障をきたしているなんて考えもしなかった。これらの問題は体を鍛えたって解決することはないんです。
 僕とTakuはようやく散歩から帰りました。気持ちを整理するのに素晴らしい1時間半でした。まだやることがたくさんあるとわかってるけど、僕はTakuを庭で自由に走らせます、ほんのちょっと。僕はTakuをリーシュにつないでおくことがとても嫌なんです。Takuは気にしてないけど、僕は嫌。彼を自由に走らせたほうが、僕の気分がよくなるんです。
 今僕は、コンピューターの前に座って微笑んでます。僕は人生のリマインダーにこう書き込みます。
「Arctic Lightsは僕の人生でもっとも重要なスノーボードプロジェクトです」と。
 それでは予告編をお楽しみください。

* * *

 どうでしょう? Anttiさんちょっと追い込まれてますね。でも普通の生活とか、家族との接しかたとか、悩みながらも前向きにスノーボードに向かい合おうとする心境などが伝わってきます。過去の作品と見比べてその変化とかも感じてみるのも面白い見方かもしれません。

Arctic Lights Trailer from Anttisworld on Vimeo.

 ちなみに、今回の作品には、日本人のプロスノーボーダー吉田啓介(サロモン・ホグロフス)も出演しています。ラップランドに生まれ育ったAnttiと北海道に生まれ育った吉田啓介、洋の東西は違えど、北国で育ち、生活の大半をスノーボードに費やし、雪降る森を滑ってきたという共通点があります。お互いのホームを案内しながら森をシュレッドする映像は必見です。

画像:©TSUTOMU NAKATA

 本作品は、ウェビソード(WebとEpisodeの造語)という形で、順次各パートがWebで公開されます。
「Arctic Lights Webisode I - Endless Playground」は前述の吉田啓介出演パートで、本日11月8日公開ですので、以下に掲載します。
「Arctic Lights webisode II - Svalbard Voyage」は11月23日公開予定。こちらもお楽しみに!

Arctic Lights - Endless Playground from Anttisworld on Vimeo.

(画像提供=ホグロフス
 

 
 
ライター
A kimama編集部
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