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ダイヤ?サファイヤ?それとも石!? 軽量シャープナーの決定版はどれだ

(2016.03.19)

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「ホーニング」と「タッチアップ」

 切れ味によって作業効率に大きな差が出るナイフは、いつでも鋭く砥ぎあげておきたいもの。しかし長いトレッキングなどに重たい砥石を持ち歩くのは非現実的です。

 そこで活躍するのが、砥石よりも軽量で持ち運べるシャープナー。鈍った刃先に当ててこすると、丸くなった刃先が細かい鋸歯状になり切れ味が復活します。

 ここで覚えておきたいのが、ひと口に「ナイフを砥ぐ」といってもその砥ぎの種類には2種類あること。

 ひとつは「ホーニング」。粒子の大きさが異なる数種の砥石を使って順に砥ぎあげ、鋭角かつこすり傷のない鋭い刃先を砥ぎだします。もうひとつが「タッチアップ」。丸まった刃先をヤスリ状のもので削り落とし、細かい鋸歯状にすることで切れ味を戻します。

 シャープナーができるのはこのタッチアップ。ホーニングのようにきれいな刃を付けることはできませんが、野外での応急処置的な刃付けには十分活躍します(ただし、タッチアップは刃先を削りすぎるのであくまでも応急処置的に!)。

 タッチアップを行なうシャープナーには、大別してプレート状のものとスリットの間を往復させるものがありますが、軽量なのはプレート状のもの。

 今回は野外に気軽に持ち出せてしっかり砥げるもの、という視点で軽量なシャープナーをチェックしました。

試験に使ったのはモーラナイフの「748MG」とルアーボックスのなかで錆び付いていたジグのフック。研削の具合がわかりやすいよう、ナイフには一度バフをかけました

エントリーナンバー1
サンクラフト/ダイヤモンドシャープナー しなり
¥2,100


薄いステンレス鋼にダイヤモンドを電着加工。その名のとおり、力をかけると全体がしなる。メーカーによれば「無理なく最適な力加減が生まれ」るそう。両面に施されたヤスリ面の長さは約80㎜、重量27g。


広めのヤスリ面は触ると「ザラリ」とした粒立ちで、刃先をなでればその名に恥じない驚きの研削力でタッチアップ。思わず口をついて出るのはあのフレーズ。「ダイヤモンドだねー!」。削りっぷりは刃の減りが心配になるほどだが、砥粒が大きいので刃先に着く鋸歯は大きめ。釣り鉤を砥ぐには砥粒が粗すぎたため、鉤先カットは割愛。

エントリーナンバー2
スノーピーク/サファイヤヤスリ
¥540


鉱物のなかでダイヤモンドに次ぐ硬さを誇るサファイア。表裏で粒子の大きさを変え、荒砥ぎと仕上げ砥ぎができる仕様になっている。ヤスリ面の長さは65㎜、重量3.5g。


(写真は、左から荒砥、仕上げ砥、鉤先)特筆すべきはその重量。なんと3.5g! 軽量でありながら片側には「ザラリ」、反対側には「サラリ」とした質感のヤスリを2種装備。刃先を砥いでみるとしっかりと粗砥ぎ、仕上げ砥ぎの効果が感じられる。鉤先を砥ぐとガリっとした仕上がりに。全体に粒子は粗めで研削力も高め。

エントリーナンバー3
ベルモント/ダイヤモンドシャープナー鮎
¥1.100


その名のとおり、鋭さにシビアな鮎用の鉤に合わせて作られたヤスリ。両面にダイヤモンドの粒子が付けてあり、どちらも粒度は小さめ。粗いほうでもスノーピークのシャープナーの仕上げ面より数段細かい。ヤスリ面の長さは約70㎜、重量5.5g。


粒子が細かいぶんだけ研削力は小さいものの、砥ぎあげたあとにつく鋸歯は小さい。荒砥ぎ、仕上げ砥ぎの効果の違いもしっかり感じられる。針先を研いだ場合の仕上がりは滑らかのひと事。針先は爪に立てるとしっかり食いつくほど鋭角に。

エントリーナンバー4
オーナー/フックシャープナー
¥1,200


素材は驚きの「天草砥石」。荒砥ぎと仕上げ砥ぎを装備し、側面には針を手軽に砥げる溝ももつ。しかも、針先がストレートタイプとカーブしたものの両方に対応できるよう、片側にはRが設けられている。先端にあいた穴は針先の曲がりを修正するためのもの。ヤスリ面の長さは85㎜、重量18.5g。


サバイバル登山家・服部文祥さんも愛用の釣り鉤用砥石。粗い面でさえほかの砥石の仕上げ面以上に粒子が細かいため、研削には時間がかかる。しかし、仕上がりはタッチアップのレベルを離れ、ホーニングのレベルに肉薄。刃先、鉤先とも、シャープかつ滑らかに砥ぎあげる。

エントリーナンバー5
第一精巧/セラミック砥石
¥300


メーカーサイトの紹介文はたったの12文字。「ナイフや鈎研ぎに最適です」。この製品の公に明かされている情報は以上のみ。名前から素材はセラミックと知れるものの、「セラミック」自体が陶磁器からときにはシリコン、炭化物まで指すことを考えると、製品のスペックのほぼすべてが謎に包まれている。ヤスリ面の長さは30㎜、重さ8.5g。


ヤスリ面はレンガ、あるいは陶器のような質感。研削性は高く、大小入り混じった粒子が確実に刃先に鋸歯をつける。使い込むうちに砥石表面が剥がれた砥石と金属の粒子で埋まって滑らかになる。複数回使うと研削性が落ちるが、滑らかになった部分とそうでない部分を使い分ければ、荒砥ぎと仕上げ砥ぎができる、ともとれる。針先もしっかりと研げるがハンドルに厚みがあるため、フトコロ側は砥ぎにくい。仕上がりはザクリとした質感に。

結論:みんなちがってみんないい!
 複数のシャープナーを使い分けてみてわかったのは、シャープナーも「適材適所」ということ。使うナイフの鋼種、釣りをするかどうか、年間での使用頻度などによって、それぞれにもっとも合うシャープナーが変わりそうです。以下は、シチュエーション別おすすめシャープナーです。

安い包丁に!
サンクラフト/ダイヤモンドシャープナー しなり

握りやすいハンドルと大きく広いヤスリ面は日常使いでこそ活躍。拙宅にあったどんな砥石でも刃が付かなかった安物包丁を試しに砥いでみたところ、今までにない切れ味に! 安い鋼の場合、シャープナーで大きな鋸歯状の刃を頻繁につけたほうが仕事をするようになることもあるようです。

手間はかかっても最上の切れ味を
オーナー/フックシャープナー

さすがはサバイバル登山家御用達。砥ぐのに時間はかかるものの、ナイフ、鉤先ともに、仕上がりは今回試したシャープナーのなかでもひとつ頭抜きん出ています。鉤先の尖り具合が重要になるテンカラなどの釣行に携えるならコレ!

釣り場でさっと鉤を砥ぎたい
ベルモント/ダイヤモンドシャープナー鮎

ナイフも砥げるものの、やはり本来の用途通り繊細な釣り鉤向き。釣り場で首から下げておき、鉤先の甘さが気になったときにさっと砥ぐ、という使い方に。

なんでも砥いでやろう!
スノーピーク/サファイヤヤスリ

仕上がりはやや粗いものの研削力は抜群。短時間で確実にタッチアップできる。ナイフ、鉤先ともに短い時間で使用にストレスないレベルにまで高める。

コスパ重視!
第一精巧/セラミック砥石

お値段は驚きの300円! しかしする仕事はお値段以上。長期の登山や旅行にはたまにしか出ない、という人におすすめ。

おまけ!
 今回のシャープナーレビューは、私の旅行に向けての自由研究の副産物でした。獲物を調達しながら無人の海辺を1週間歩くなら、果たしてどんなナイフが良いのか?刃先の鋭さを維持するにはどうすればいいのか? 

 採った魚をストレスなくおろして刺身に引ける刃渡りがあり、キャンプ中の雑作業もこなせる、ということで選んだのがモーラナイフの748MG。今回はこれにスノーピークのシャープナーを合わせてみようと思っています。


泳ぐ時に無くさないよう、着脱可能なバンジーでシースとナイフを接続。視認性を高めるテープを目印に


シャープナーのケースはクリアファイルの切れ端を使用


テープの有無での比較。テープは彩度の高いものと明度が高いものを巻いておくと、緑のなかに落としたときは彩度の高いテープが、暗いところでは白いテープが目立ちます

 
 
ライター
藤原祥弘

採集系野外活動を中心に執筆とワークショップを展開。著書に『海遊び入門』(小学館・共著)ほか。好きな獲物はカンパチとノコギリガザミ。twitterアカウントは@_fomalhaut

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