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手のひらのなかの小さな実力派。北欧の野遊び心が詰まったモーラナイフの新作「エルドリス」

2016.11.27 Sun

 長野県の雪深い農村に引っ越して5度目の秋がやってきました。

 首都圏に住んでいたときは、持ち歩くにもドキドキして、めったに触らなかったアレは、田舎に住んでからというもの手放せなくなった道具のひとつであります。

 さて、アレとは一体なんでしょう?

 熊スプレー? いやいや。 アックス? ちゃうちゃう。

 答えは、ナイフです。
 
 ナイフとは田舎暮らしには欠かせないものであり、またその人がどのように自然と接しているかをも表す鏡のような道具であります。

 山菜を摘んだり、イワナをさばいたり、キノコを収穫したり、山栗の皮を剥いたり……。

 田舎暮らしではふとした拍子に刃物が必要になります。そんな場面でさっと取り出せる小さなナイフにこの秋、出会いました。それはスウェーデンからやってきたモーラナイフの「エルドリス」です。

 ぼくらは夏になると、北欧の荒野を1か月も2か月も彷徨い歩く旅に出かけています。ライフワークの舞台である北欧生まれという親近感から手にとってみたのですが、これが使える、使える。

 ケースに収めた長さは約14㎝。第一印象は「これなら山にも持って行けるぞ」と思わせるコンパクトさです。

 刃長は約56㎜で刃の厚みは2㎜。この刃先の深いカーブがさまざまな用途で生きてきます。材質はステンレススチールを用いているので錆びずに堅牢。

 ヨーロッパを代表するアウトドア大国スウェーデンのモーラ地方は刃物の産地です。その品質は世界中のアウトドアズマンのお墨付き。そんなメーカーの最新モデルだけあり、使い勝手、デザイン、品質は申し分ありません。

 特筆すべき特徴は刃長の約2倍の長さを誇る大きなハンドル。力を入れやすいよう丸みを帯びた形状で、素材はラバーとポリプロピレン(中央部)。ぐっと力を入れるとしっとりと弾力のあるラバーが手に吸い付く感じ。手が濡れていたり、手袋をしていても滑りにくく、力を入れやすい構造なのです。
 切れ味がすこぶる良いため2本の指でハンドルを支えるようにナメコをカットできます。そのため狭い倒木のスキマもぐいぐい攻められます。取り回し、切れ味ともに優れているので、このように細かい作業も得意です。

「実用的でありながらコンパクトで軽い。付属のパラコードをつければ、こうして首にぶら下げて山を散策できます。プラスチックシースのうえからセカンダリーロッキング(レザー製)でカバーする安心設計なので、ナイフが落ちる心配もありません」(大森千歳)

「小さいから扱いやすく、なのに力が入れやすい。そのうえ切れ味が鋭い。栗の固い皮もラクに剥けます」(大森千歳)

 焚き火の焚き付けとなるフェザースティックもお茶の子さいさい。ハンドル近くのフラットな刃で押し込むもよし。先端のカーブした刃を押し付けながらスライドさせるもよし。

「畑でも使っています。農作物を収穫するだけなら、普段使っている包丁やハサミに軍配があがります。だけど、いろんな作業をしているときにさっと手にとれる手軽さがいいですね」(大森千歳)

「これはサツマイモの根っこを切って、収穫しているところ。どの角度で刃を押し当てても切り落とせる深いカーブの形状が使いやすいです」(大森千歳)

 ネックナイフキットにはファイヤースターターが付属。刃の背中を押し付け、さっとこすれば火種を作れます。マッチやライターが水に濡れたときや、ストーブのイグナイターの不調時にも活躍しそうです。厳しい環境下ゆえリスクマネージメントが徹底している北欧ならではアイテムといえるでしょう。

 麻ひもをほぐして、そこにファイヤースターターで作った火種を落としました。やさしく包んで空気を送り込めば、大きな炎があがります。

 小さいながらも山菜、キノコの収穫から焚き火の演出まで1本でこなす実用的なエルドリス・ネックナイフキット。暗い闇のなかでも確認できる視認性の高いカラフルな全5色のカラー展開です。

 今度スウェーデンの山を歩くときはエルドリスを里帰りさせてあげようと思います。きっと、生まれ故郷で100%のポテンシャルを発揮してくれるでしょう。

モーラナイフ
エルドリス ネックナイフキット
¥5,500+税

■付属品:プラスチックシース、ファイヤースターター、
パラコード、セカンダリーロッキング
■重量:約80g(ナイフのみ)
■柄の素材:TPEラバー、ポリプロピレン(中央部)
■刃の素材:ステンレススチール
■刃長:約56mm
■全長:約143mm
■刃厚:約2.0mm
■ 生産国:スウェーデン
■問い合わせ先:アンプラージュインターナショナルTEL.072(728)2781

文=森山伸也
アウトドア、山岳雑誌で執筆するアウトドアライター。 2008年から夏の北欧ラップ ランドに通い、歩き旅を続けている。著書に「北緯 66.6° ラップランド歩き旅」(本の雑誌社)。

写真=大森千歳
漫画「岳」を読んでOL生活から山の生活へシフトした カメラマンでありライター。2012年長野県の山村へ移り住み、登山のほか野菜作りや山菜採り、スキーに没頭中。

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