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GNUさんの部屋Vol.2 軽いお家の答えはなんだ!?「ロングトレイル シェルター考」

(2017.08.31)

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国内外のロングトレイルやウィルダネスを
釣り竿を肩に歩くこと8500km以上。
知る人ぞ知る長距離ハイカー
長沼"GNU"商史さんによる
長距離ハイキング放談の第2弾です!

 俺の生業は建築現場の職人だ。

 若造のころから、能書きを垂れれば親方に「うるせーな、手ーうごかせっ! 手を! 何もできねーくせに四の五の言うな!」と怒鳴られてきた。

 有言実行でも叱られる。無言で実行当たり前。そんな世界から、最近のハイキング界隈を見ると気になることがある。

誰かの文章を読んだだけで、知ってるつもりになっちゃってるヤツはいねーか!? 
実践の量に対して、肩書きや表現が大げさなヤツはいねーか!? 
汗をかくまえに字を書いちゃってるヤツっていねーか!?

「知ってる」と「できる」の間には雲泥の差がある。「できる」のなかにも「間に合わせ」から「これ以上ない」まで、無段階にレベルがある。

「知ってる」から「できる」になり、「できる」をさらに深めていくには実践するしかない。実践するうちに自分のなかに「物差し」が生まれる。

 仕事にせよ遊びにせよ、信じていいのは自分で作った物差しだけなんじゃねーのかな。
 
 ……といきなりディスったんですが、ここからいきなり低姿勢で行きま〜す……超低空飛行。ブ~ン♬

 俺にとってハイキングはまったくの趣味。何百日とトレイルを歩いてきたので、たいていの人よりは長い距離歩いているが、四六時中道具について考えているライターのように、道具に特別詳しいわけでもない。

 そんなところに、「書くためだけに、チョロっと使ってレビューするライターよりはよっぽど良いこと書くんじゃねーか?」と当のライターに言われて始まったのが「ヌーさんの部屋」。

 ライターのように上手いことは言えない。ショップの店員みたいに商品知識があるわけでもない。日本語だってあやしい。

 じゃあ、なんでここにツラツラ書いてるのかって? そりゃ、俺の処女作にして名作である『釣歩日記』を売るためですよ〜!(キッパリ)

 みなさま、『釣歩日記』絶賛発売中です。

『釣歩日記』、超・絶賛発売中です!  

 大事なことなので二度言いました。

 んじゃ、みんなが『釣歩日記』を買う気になったところで、今回はシェルターの話をしようかな。とはいっても、初ハイキングがタープとハンモック持って破線ルートだった雑な俺の話が役に立つかどうかはわからないけどね……。

●シェルターってなんだ!?

「ハイキングに使うシェルター」について考えてみる。そもそも?? シェルター?? って、なんだ?? って所からね。

 俺の中では「雨風をしのぎ、翌日の活動のためにしっかり睡眠がとれる巣」ってことになるかな。最強は「家」。

 大地震のあと、1ヶ月ほどボランティアに行っていた気仙沼で、流されたたくさんの家を見て思ったんだよね。「大自然を前にしたら家もシェルターだな」って。

 この感想に他意はない。それだけ自然の力は凄まじい。

 その容赦ない自然と自分を隔てる巣がシェルター。

 ひと言でシェルターといっても、その姿はビビィ、タープ、ツェルト、テント……とさまざま。

 姿形と用途によって重さもいろいろだけど、ULハイキングの世界に限れば、300gから1kgってとこかな。重いのを運ぶ体力・精神力がある人はなんでもいけるんだけど、俺はヨワッチィから、軽くないとだめなんだな。

 テントならUL系でも約1kg。ツェルトなら約500g(ペグやガイライン、グランドシートを含めて)。その重量差はスニッカーズに換算して9本ぶんもある。同じ重量を担ぐなら、食えないものより食えるものを運ぶ、というのが俺の考え方。

 今回のシェルター論はスニッカーズ原理主義のもとに展開されるから、各自、わり引いて参考にしてね。

 
●テントはどう?

 重い。かさばる。たててからが快適。アメリカのトレイルでは、普通にUL系テント派が多い。

 今のULテントは軽くて600g〜1kg前後。メーカーとしては、zpacksとかzerogramとかsix moon designsあたりか。とはいっても、「重いしかさばる」から今のところ俺の選択肢にはない。

 よく雑誌やら何やらで耐候性が高いとかなんとか説明されているけど、俺的には所詮テントもただの布切れ……。けど、雨、虫、居住性を考えると、運べる人には無敵かもね。

●じゃ、タープは?

 究極の布切れ。虫、ノーガード(笑)。ただ、この開放感・解放感はいいよね。アメリカのトレイルでは、たま〜に使っている人を見かける。

 1人用と考えればまともに使えるのは7ft×9ft=2.1×2.8mってところ。軽い部類のタープで200g前後ってところかな。

 虫の多い季節や毒虫のいるところでは、囲いとなるビビィとかネストなどのメッシュは必須。これらを装備するとULなものでも総重量500gは超えてくる。

 ポンチョタープもサイズの軽くて小さいのを選ぶと、雨降ると少しめんちぃ。風もね。

 濡れる=寝られない=次の日辛いor 低体温で死ぬ。かといって、大きいのを選ぶと結局重くなる。

 タープは、ハンモックと組み合わせてもいい仕事する。

 これがまた、気持ちいんんだなぁ。木があれば平らな場所をいちいち探さなくてもいいし、決してオールマイティーではないけれど、皆が思っているのよりもずっと普通にキャンプができるんだよね。あの感じはぜひ位体験してほしいな。オヌヌメ。

 ちなみに、上の組み合わせでタープが140g、ハンモックが272g。

●ワンポールシェルター

 これ、虫いない時期は最高なんだよな。タダの四角い布切れのタープより形が無駄なく作られているので、収納時の大きさはタープとたいして変わらない。

 そして重さの割にはしっかり雨風から守ってくれる。これもメッシュの蚊帳的なものは必要(蚊取り線香って手もある)。
 
 オススメはグレートコッシーマウンテンのコッシルシェルター(上の写真のヤツ。中に入っているのはborah gearのビビィ)。

 ローカスギアのクフも調子いい、という人が多いみたい。

●ビビィ
 布切れ以下。ただの袋。野垂れキャンプには最高。

 調理? 外でしかできねー。 着替え? 中ではほぼ不可能。この辺は面倒くさい。雨の多い日本では、タープと組み合わせて使うのが正解かな。

 防水素材のものが500gくらい、撥水素材なら170gくらいからある。タープと合わせると最軽量クラスの組み合わせで400g前後って感じかな。

 ちなみに上の写真は、俺がアイデアを出し、形になった「GNU SHED+CAPE(ヌーシェッドケープ。ハイカーズデポで販売中!)」とborah gearのビビィを組み合わせ。

 ケープが130g、ビビィが190g。膝下まで覆うケープを広げ、膝上まで防水素材でできたビビィを使えば、極小のパーソナルスペースが確保できる。

 ヌーシェッドケープは雨具、パックカバー、シェルターの一枚三役。荷物の重量を削りながら、雨中でも濡れずに座れるスペースを作れる。料理するにしても着替えるにしてもこれ大事。
 
 ビビィをSOLのエスケープライトビビィとかにしたら、130g+156g!!

 この軽さにピンと来た人はハイカーズデポでチェケラーでーす。


●グランドシートのみのカウボーイキャンプ
 開放感ぱねー。むき出し、最弱。

 でも、雨が降らないとわかっていて、虫がいないのならこれに勝てるキャンプはない!

 星を見ながら、頬に風を感じながら眠ることができる。日本ではチャンスが少ないが、乾燥しているカリフォルニアではする人も多い。

●ツェルト 重量約500g。「長く歩く」ならこれが俺のシェルターの結論。軽い。小さい。必要最低限のディフェンス。

 収納サイズの割に、遮蔽されたそこそこの居住空間が得られる。メッシュなしだけど虫は結構防いでくれる。たまにクモが寝袋の上を歩いてることあるけど、むき出しよりは全然まし。

 俺はファイントラックのツェルトを愛用。密閉空間は室内温度が上がるので、タープで眠るときよりも寝袋をワンランク薄いものにできる。シェルターも寝袋などと組み合わせて「寝るためのシステム」だと考えると、結局全体では軽くできる。

 耐候性を気にする人もいるだろうけど、きちんと張れば十分な強度が出る。俺はアメリカやニュージーランドでは、稜線でツェルトを張って寝ていた。もちろん、わざわざ稜線で寝る必要はないから、できるなら森林限界の下のほうがいい。それができなければ大きな遮蔽物の近くに張ればいい。

 ツェルトの優位性はその軽さ。身軽なぶん、歩ける時間、距離が伸びる。移動距離が長く取れるということは、そのセクションの食料も少なくて済む(俺は多めに持つけどね)。今までのハイキングではなんの問題もない。

 ULテントとの重量差はスニッカーズにして9本ぶん、約2232kcal。

 最悪、我慢すれば1日2日はこれで行動できる、停滞ならなおさら食い伸ばせる。2日動けたらエスケープできるかもしれないじゃん? これでツェルトの優位性が伝わるでしょ??

●まとめ
 あれこれ書いたけど、最近はメインはツェルト、たまにワンポールシェルター、でなきゃ自作のケープ+ビビィ。気持ち良く眠りたいときはハンモック+タープのどれかを選んでる感じかなぁ。

 結局はぜーんぶ布切れ。何使っても同じかもね、所詮布切れだから。と雑なまとめ(笑)。

 歩く地域、張る場所、自分が担げる重量。何を使うにしても、大切なのは判断力。そして判断の物差しを作る経験だと思う。「ここまではこれでも大丈夫!」って感覚ね。

 ミニマリストやULの先人たちは、たくさん金を使ってたくさん経験して「自分の物差し」を作ってきた。死なない程度の安全圏でいろいろ試し、たまに痛い思いをしてね。

 楽するために流行りのミニマリストを真似るのもいいけれど、経験なしでスタイルだけ真似ると最悪死ねるから気をつけてね。軽快に見えるミニマリストは、なくしたぶんの道具と重量を経験で補っているんだから。

 ここまで読んでくれたテント派の人は、ツェルトの優位性に気づいて活用してみたくなったでしょ? はっきりと言う! ツェルトでトレイルを歩き、眠るのは最高の体験だ。

 ……だけど今、俺がいちばん気になってるシェルターは、実はさんざん腐したUL系のテントだったりする……。

 やっべ! 俺こそ四の五の言わずに、自分の物差しを作んないとだな・・ww

GNUさんの部屋Vol.1「裸に近ければ近いほど、自然は近くなる」。ヌー式超長距離トレイル対応レイヤリング

長沼”GNU”商史
パシフィック・クレスト・トレイルをスルーハイク、コンチネンタル・ディバイド・トレイルをセクションハイク、テ・アラロアをスルーハイクするなどなど、国内外の長大なトレイルを歩き、その模様を『釣歩日記』にまとめる。近年取り組むのは、子供の頃から楽しむ釣りとハイキングの融合。ブログ=「釣歩大全 ロングトレイルと釣り」

 
 
ライター
A kimama編集部
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