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【A&F ALL STORIES】黄色と緑のパッケージ。キャンプの便利小物なら「コフラン」におまかせ!

2018.09.28 Fri

林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

コフラン(COGHLAN'S)とのお付き合いはもう、45年くらいになると思います。いちばん最初にビジネスをしたのが、創業者のノーム・コフランさんでした。それからその息子さん、娘さんと窓口担当者が代わって、今では甥っ子さんとやり取りしてますから、4代に渡ってのビジネスパートナーってことになりますね」

 そう言いながら楽しそうに笑う赤津孝夫会長は、意外なエピソードを話してくれた。

   COGHLAN'Sの創業者、ノーム・コフラン氏。キャンプ道具に対する先見の明と、良いものを届けたいという情熱が、COGHLAN'Sを現在の一大企業へと育て上げた。

 

「実はコフランって、A&Fができるきっかけになった会社なんです」

 どういうことだろう? コフランはキャンプ用小物のブランドとして古くからアウトドア好きに親しまれている。スクイーズチューブやリペアテープ、エッグホルダーといった品々は、今でもアウトドア用品売り場で必ず見かける定番商品だ。決して高価ではないラインナップが、なぜA&Fの創立に関わったのだろうか?

印象的な色使いのパッケージを見たことがない、という人はいないのではないだろうか。左上から反時計回りに、インタビューにも登場するフォールディングトースター、マヨネーズなどを移し替えて持ち出せるスクイーズチューブ、卵用ケースのエッグホルダー、コンパス付きホイッスル、防風防水のストームマッチ、バーベキューに便利な伸縮式のテレスコーピングフォーク。このようにあらゆるものが揃うのが、コフランの強みだ。

「A&Fができたのが1977年です。それまで僕は東京銃砲火薬店っていう猟銃の販売店で輸入の仕事をしていました。そこでコフランや他のアウトドアブランドも扱っていたんですよ。その頃、アメリカでバックパッキングが流行り始めていて、僕自身も大型バックパックを買ってきたりしました」

 まさにアメリカを発信地として、世界中にバックパッキングの波が広がり始めていた時代だ。

「バックパッキングの精神って、自然を大事にすることじゃないですか。ありのままの自然を愛し、草花や動物を愛でる。ところが勤めていた会社は鉄砲屋さんですからね。銃器を扱っているわけですよ。そういう会社が取り引きを申し込んでも、バックパッカーの精神を持ってるメーカーからすると、自分たちとは別の考え方を持ってる会社だって思われかねない」

 その心配ももっともだ。取り引き依頼の手紙を書く際、東京銃砲火薬店を英語表記にした「Tokyo Firearms」の名を記すことに、赤津会長は大きな抵抗を感じていたのだ。

コフランの製品の中でも特にファンの多い「キャンプクッカー」。脱着式のヒンジを備えたアルミ製のホットサンドクッカーは、内側をテフロン加工することで焦げ付きを防止し、キャンプでの後片付けを簡単にしている。また、長い柄は焚き火でも扱いやすい。(sumi☆photo)

「そうした経緯からA&Fを作ったんです。東京銃砲火薬店の社長の藤田と、赤津の名字の頭文字をとって“A&F”。この会社は鉄砲じゃなくて、バックパッキングを中心としたアウトドア用品を扱おうって考えたんです」

 つまりコフランをはじめとしたアウトドアに関わる商材のために作られた会社こそ、A&Fだったのだ。

「その当時はコロンビアとかクラスファイブ、アルパインデザインなんかも取り扱ってました。そのなかでずっと続いてるのはコフランですね。その意味ではA&F以前からですから、うちが扱っているブランドで一番古いのがコフランなんです」


 COGHLAN'Sは「コフラン」と発音されることもあれば、「コグラン」と言う人もいる。正しい発音はどちらなのだろうか?

「どちらも正解でしょうね。ノームはカナダ人でフランス語文化圏の人なんですよ。ですからコフランって発音してました。今でも本社の人たちはコフランって言いますが、アメリカのアウトドア用品店では英語読みのコグランの方がポピュラーかもしれないですね」

 そう話す赤津会長自身も、インタビューの間は「コフラン」と発音していた。

「ノーム・コフランはね、元々ガス関連の会社を経営していて、ランタンやキャンプストーブを作っていたんです。それがだんだん、寝袋なんかを作るようになって、キャンプ用品メーカーとして成長していくんですよ」

現在のコフラン本社。今や傘下にいくつかのアウトドアブランドを抱えるほどに大きな会社へと成長。グループの中で効率の良い製造が叶うようになったことで、コフランの製品バリエーションはますます広がりを見せている。

 しかし、コフランは単なるキャンプ用品メーカーにはならなかった。

「今のコフランの、最初のオリジナル製品は“フォールディングトースター”っていうんですけどね。キャンプ用のストーブの上において使う、折りたたみ式のトースターです。これ、ノームのお店に来たお客さんが、こういうキャンプ用のトースターがほしいって言うんで、ノームが探したんだそうです。そしたらあった。けど、作ってた会社は経営不振で廃業寸前だったんです。だけどノーム自身、これは売れる!と思って在庫のすべてと製造用の機械も全部買い取って、作り続けたんですよ。それがコフランの“フォールディングトースター”。ここから、便利なキャンプ用小物っていうジャンルを築き上げてきたんです」

ストーブの上に乗っているのが、COGHLAN'Sの歴史を語る上で欠かせない「フォールディングトースター」。薄い鉄板を熱することで、ワイヤーに立てかけたパンをこんがりと焼いていく。ワイヤーは折りたたむことができるなど、各所に工夫がなされている。長きに渡って多くのキャンパーから愛される、まさに伝統の逸品。

 コフランのラインナップを見てみると、その幅広さには驚かされるばかりだ。修理用のパッチがあればテントやポンチョ、蚊帳があり、食器や調理器具があり、ゴトクやバーベキュースタンドがあったかと思えば、ホイッスルやベアベルがある。およそ、アウトドアで役立ちそうなものがこれでもかと揃えられているのだ。

「すごいですよね。まさにアウトドアアクセサリーブランド。彼らが扱うのは、とにかく便利で気が利いたもの。だからワクワクさせられるし、何よりも買いやすいですよね」

 なるほど、このブランドが人気を呼ぶのも当然なのだ。

「本当に製品の幅が広いんです。何か不便に感じたら、コフランのカタログを見ればいい。そこには想像もしていなかった製品や見たこともない便利なもの、不便な状況に先回りしているアウトドア小物が待ち構えていますから」

 赤津会長は、その魅力の理由も語ってくれた。

「コフランのラインナップの広さには秘密があるんですよ。彼らは自分たちで作るべき製品と、そうではないものをしっかり見分けているんです。良いものを見つけたら、コフランとしての製品を作ってもらえばいい。すでに世の中にあるものを、ゼロから作る必要はありませんから。この場合、おもしろそうなものを探してくる目利きの仕事が重要になります。
 そうした目利きのセンスを活かしながら、こんなものがあったらいいな、と思うものは自分たちで作ってしまう。ないものは作る、という姿勢も持っています。だからこそホントに細かいところまで手が届くというか、思いもかけなかったような便利なものに巡り合うことができるんです」

そんなコフランとA&Fがコラボレートして作り上げた製品がある。2017年に発売した『A&F ホットサンドクッカー』だ。「コフランにもホットサンドクッカーはあるんです。けど、アメリカの食パンサイズって、日本のものに比べると一回り小さいんで、日本の食パンを挟むと耳を切り落とさないといけないんですよ。これ、耳まで含めて日本の食パンが入るようにしたいね、っていう話をしましてね。ダメ元でコフランに相談したらできるよ、ってことになって。開発のスピードもとても早くて。結局、企画から発売まで半年ちょっとでできあがりました。製造工程も製造工場もとても良く知ってるんですね。ですから、ベストなものをきちんと提案してくれる。コラボレートする相手としては、非常に頼りになる存在でしたね」

「アメリカのアウトドア用品店に行くとね、コフランの製品がラックいっぱいにかかってたりする。すごい物量感ですし、扱う製品ジャンルが多岐にわたってる。それに、黄色と緑を基調にした印象的なパッケージが壁一面を埋め尽くしている様子は、ちょっと圧巻ですよね」

 こうしてコフランは創業から60年を経て、アウトドアアクセサリーの専門ブランドとなった。フォールディングトースターもスクイーズチューブもエッグホルダーも防水マッチも裁縫セットも、製品はもちろん、パッケージデザインさえほとんど当時のままだ。このアウトドア黎明期の空気感を漂わせるオーセンティックなデザインもまた、コフランの大きな魅力となっているのだ。

 
【写真=sumi☆photo, エイアンドエフ】
 
 


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