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干しエビ→小魚→イカ!「パックロッドULわらしべフィッシング」がイカす

(2018.01.04)

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「旅に気軽に持ち出せて、獲物が美味しくて、良い時間を過ごせる釣り」を研究するうちに「わらしべフィッシング」に行き着いた。

 わらしべフィッシングとは読んで字のごとく、取るに足らないものからステップアップして、最終的に価値ある獲物を手に入れるわらしべ長者式の釣りのこと。

 最初に小魚を釣って、その小魚を餌にして大物を狙うスタイルは、沖釣りや堤防釣りで昔から楽しまれている。

 しかし私が提案したいのは「干しエビ」からスタートして、「晩のおかず」を手にいれるウルトラライトスタイルである。餌の重さは1g足らず。道具も全部で5000円以下。道具がコンパクトで金銭的な負担も軽い、旅人向けの釣りだ。

 この釣りの研究の発端は、昨年私がはまったアジ釣りであった。

 一般的にアジなどの小物釣りでは、小さな鉤がたくさんついた仕掛けを撒き餌のなかに漂わせて、餌と間違えて食いついた魚を釣り上げる。この小さな鉤はエビに似せた疑似餌を使うか、小エビを付けて使うのだが、当然、本物の餌が付いているほうがよく釣れる。

 しかし、市販の餌はどうにも身がグズグズで、仕掛けを投入するたびに餌がはずれてしまう。そこで私は考えた。

「川でエビ採ってきて付けりゃいいんじゃね?」

 川で採ってきたエビは効果テキメンだった。明らかに周囲の釣り人より食いがいい。しかし、もう少し釣果を伸ばせそうな気がする。そこで私は考えた。

「食紅で赤く着色すればいいんじゃね?」

 採ってきたエビを、食紅を溶いた水に泳がせる。1日漬けると少し赤くなったが、それほど釣果は伸びなかった。どうやら生き餌であることに意味があったようだ。

 そしてしばらくは自分で採ったエビでアジを釣っていたが、そのうち、冬の川で餌を採るのが面倒になってきた。そこで私は考えた。

「ボイルして冷凍保存しときゃいいんじゃね?」

 ボイルすると生き餌ほどは釣れなくなったが、市販のオキアミと比べて川のエビは殻が丈夫なので餌持ちがいい。餌つけの手間が減るだけでもストレスがない。茹でると食紅の赤もより強く出るようになった。

 私のアジ釣りは「自家採集半茹冷凍餌」に落ち着くかに思われた。

 しかしある日、時合い(魚の食いが立つタイミング)が来た時に、私はうっかり付け餌を切らしてしまったのである。

 アジはいる。餌はない。周囲に目をやると、カピカピに乾いたオキアミが落ちている。先行の釣り人が捨てていったやつだ。

 すばやく鉤につけて投入すると、はたしてアジは釣れた。しかも、半乾きで硬いので餌持ちもいい。そこで私はひらめいた。

「付け餌はもう、干しエビでいいんじゃね?」

 そこで私は付け餌各種を用意してアジ釣りに取り組んだ。生き餌、食紅ボイル、ボイル、市販釣り餌、干しエビの5種である。

 数回の釣行で得た結論は

食い=「生き餌>ボイル=食紅ボイル=市販釣り餌>干しエビ」
餌持ち=「生き餌>干しエビ>ボイル=食紅ボイル>市販釣り餌

 干しエビに関する結論は「バックアップとしては十分使えるが、撒き餌を使う釣りなら特に選ぶ理由はない」であった。

 撒き餌を使う釣りは、そもそも道具が多いし手も汚れる。付け餌が変わった程度では全体の手間はそれほど変わらない。それなら食いが立つ餌を使ったほうがいい。

「それじゃぁなんで、干しエビを推すタイトルなのだ」

 今、読者諸賢はそうお思いであろう。そう急かれるな。干しエビが実力を発揮できないのは、あくまで撒き餌釣りの場合。干しエビの真価は、ウルトラライトなスタイルのときにこそ発揮される。軽くて腐らない干しエビは「旅に持ち出す餌」として最高なのだ。

 用意するのは干しエビとパックロッドとトリック仕掛けとイカの泳がせ仕掛け。5000円以下で一式がそろう。重量も全部合わせて500g以下だ。

 まずは干しエビとトリックで手頃な雑魚を釣る。干しエビは小さいと鉤に付けづらいので、スーパーをまわって大きめのやつを探そう。

 小さいアタリが取りづらくなるので、ウキは使わない。岸壁沿いにスルスルと仕掛けをおろし、竿に伝わる魚信をたよりに、食いついた魚にアワセを入れる。アジは撒き餌なしではなかなか釣れないが、雑魚であれば干しエビだけでも十分釣れる。この日釣れたのはテンジクダイの仲間。

 餌を確保したら今度は仕掛けをイカ用に交換。釣った魚をイカ仕掛けにつけて、発光体を付けたウキで泳がせる。電灯があり、新鮮な墨の跡がある岸壁ならまずイカがいる。

 魚を泳がせたらリールのドラグを最弱に設定。軽い力でも糸が滑り出るようにしてから竿を置く。イカが糸を引き出すとドラグのクラッチが「チキチキチキチキ……!」と鳴るので、ウキを凝視しつづけなくても大丈夫。のんびりイカが来るのを待つ。

 仕掛けに付けられた魚は、あっちへそわそわ、こっちへそわそわ泳いでいるが……

 イカが魚を抱くと、強い意志を持ってウキが滑り出す。イカは明るい電灯の周辺を離れて、暗いところでゆっくりと食べたいのだ。ウキが走り出したらそのままイカを送り出して、しばらく餌を食わせてやる。

 イカがある程度餌を食べたころ、ドラグを締め直して糸にテンションをかける。すると仕掛けが跳ね上がり、イカの体にがっちりかかる。ここで鉤がかりしなくても、餌を一度食べたイカは執着心が生まれるのか、警戒心が解けるのか、もう一度餌を抱く。鉤がかりするまで何度か挑戦しよう。あるいは餌を運ぶ間にイカが勝手にかかることもある。

 イカがのると竿がグイングインと引きしぼられるので、そのままゆっくり引き寄せて一丁上がり! ターゲットになるのはアオリイカやスミイカ、ケンサキイカ、ジンドウイカなどなど。

 イカ用のルアー「餌木」を使ったエギングも道具が少なく、手が汚れない釣りだが、餌木は少々値段が張り、無くすとダメージが大きい。竿も糸もリールもそこそこのものが必要になる。また、餌木を投げ続けなくてはいけないのもせわしない。

 その点、わらしべフィッシングなら、仕掛けを投入したらぼんやりウキを眺め続けるだけでいい。コーヒーを淹れるなり、妄想にふけるなり、ポエムを作るなりして、「獲物を待つ」という時間を存分に楽しめる。岸壁に寝転んで、ドラグが鳴るまで仮眠したっていい。上手いも下手もないから、初心者も始めたその日から楽しめる。

 今回の一連の撮影は、翌朝乗るフェリーを野宿で待ちながら行なった。わらしべフィッシングは、こんな風に「旅のついで」に竿を出すのが楽しい。初めて訪れた島の漁港や、旅の途中に通りがかった岸壁で楽しむのがぴったりだ。数時間竿を出すだけでも、通り過ぎるだけだったはずの土地を、自分にとって特別な場所にできる。

 旅の最中にバックパックのなかに竿が入っていると、目に入る景色はちょっと違って見えてくる。水際を通るルートを選ぶようになり、海のなかをのぞき込むようになる。あるいは、用意した竿を出さないまま旅を終えたっていいのだ。旅支度を調える最中に「自分は次の旅でイカを釣るかもしれない」と想像できるだけでも、道具を用意する価値がある。

 イカ狙いのわらしべフィッシングは、道具一式が安価でコンパクトかつ軽量。そして、獲物も晩ごはんにちょうどいいサイズ。小さな負担で旅を豊かにしてくれる釣りだ。

 
 
ライター
藤原祥弘

採集系野外活動を中心に執筆とワークショップを展開。著書に『海遊び入門』(小学館・共著)ほか。好きな獲物はカンパチとノコギリガザミ。twitterアカウントは@_fomalhaut

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