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アウトドアライター村石太郎が 友人たちを訪ね歩く「旅する地球」。ニュージーランド編 その1

(2017.08.11)

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アウトドアライター、
村石太郎が友人たちを訪ね歩き、地球を旅する。
第1回目は、ニュージーランドの南島でスキー・インストラクターとして働く
横尾わなかさんを尋ねます!

 スキー場の片隅につくられたレストハウスのベンチに座っていると、満面の笑顔とともに彼女がやってきた。
 「こんにちは! お久しぶりです」
 横尾わなかさん。この3月に日本からニュージランドへと渡り、いまは南島にあるスキーリゾート「カドローナ」でインストラクターとして働いている。彼女が教えているのは、おもに初心者の子どもたち。彼女自身が希望した担当だ。

「スキーやアウトドアなどと子どもたちの教育をあわせたような仕事がしたいんです」
 世間話をしながら乗っていたリフトのうえで、将来についての話をしはじめる。
「いまの仕事も面白い。でも、ずっとインストラクターを続けたいわけでなくて、将来を模索中です(笑)」
 そう、さらりと言い放つ彼女と僕が出会ったのは、3年ほどまえのことだった。
 米国西部にソルトレイク・シティという町がある。ここで毎年2回、最新の登山装備などを集めて発表する大きなアウトドア用品受注展示会があるのだが、そこを訪れるたびに僕がいつも世話になっている人たちが、当時市内にあるユタ大学に通っていた彼女のホストファミリーとなっていたのだ。

横尾わなかさん
出身地/北海道・倶知安町
ワナカ在住歴/5ヵ月
職業/スキー・インストラクター
休日の過ごし方/スキー、ヨガやハイキングなど
好きな音楽/ワイルドナッシング『ライフ・オブ・パウズ』
好きな映画/キャプテン・ファンタスティック(邦題「はじまりへの旅」 2016公開)


海外生活へと飛び出す勇気

 その後、わなかさんは大学を2年で中退。地元である北海道の倶知安町に戻っていたが、倶知安町と言えばパウダーキャピタル“ニセコ”がある場所だ。1年のうちの半分はスキーとスノーボードのことばかり考えている僕にとっては、馴染みの土地であり、ワンシーズンに必ず2〜3回は訪れる。そのため、彼女が米国を離れても、毎冬何かと連絡を取り合っていて、今回もこうしてニュージーランドで会うことができた。25歳ほども年の差があるけれど、地球のどこかで会う大切な友人のひとりだ。
 僕はいつも、わなかさんのようにさらりと海外に出ていってしまう人に感心させられる。自分が十代だった頃も、なんとなく海外へ出ていきたいと思っていたはずだ。でも、勇気が出なくって、飛び出すことができなかった。

「日本の大学に興味がなくなってしまったんです」

 そう、打ち明ける彼女にとって、外国での暮らしはどのようなきっかけで始めることになったのだろう? 

「高校生のときに、英語ディベート(討論会)をやっていて、そのときに日本の大学は9月入学を始めるべきか、否かという議題で1年間討論をしていました。そのことがきっかけで海外の大学に目を向けて、米国への留学に興味が沸いてきたんです」

「それで、出身が北海道のニセコなので、子供の頃から続けてきたスキーもやっぱりしたいと。そう考えると、おのずと場所も絞れてきて、コロラド州かユタ州かで迷っていたんです。結果、山から近くて公共の交通機関が整備されているユタ州のソルトレイクに来ることにしました。でも、出発する1ヵ月前になっても住む家が決まっていなかったんですよ。中学時代に同じモーグルチームに参加していた友人に相談したら、ホストファミリーになってくれた藤原匠吾さんと水奈さん夫婦を紹介してもらったんです」

藤原夫婦は、アウトドアやスノー業界ではちょっとした有名人だ。ファミリーについては、またの機会に紹介できたらと思う。



生まれもっての、明るくオープンな性格

 わなかさんは、米国の大学に通うために必要な語学力は、子供の頃からすでに国際的なリゾートタウンとして知られ始めていたニセコで育つことで自然に育まれたと話す。生まれてまもなくは、両親が経営するスキーロッジにやってくる国内外さまざまな土地の人々に囲まれ、ニセコという英語を話す環境があるなかで育った。 

「父はニセコでパトロールとして働いていて、母もスキーが大好き。しかも、カナダのウィスラーで知り合って、ニュージーランドのワナカで結婚式を挙げた両親です。私の名前の由来も、結婚式を挙げたワナカから来ているんですよ。あと、妹がいるんですけれど、カナダから、かえでといいます。母もひとみで、女3人ひらがなで統一しています(笑)」

「両親は、とてもオープンな性格で、働いていたロッジにいつも外国からお客さんが来ていて、みんなに抱っこされていたりしていて。赤ん坊のときは、台所のシンクで体を洗われていたみたいなんです。英語は、スキー場のリフトに乗っているときとか、バスのなかでとか、電車のなかで知らない人にいつも話しかけていましたね。英語でも、日本語でも、もともと話すのが好きだったんです」

「2年間だけ、カナダ人の先生におもに英語の基本と発音を習っていたことがありました。でも、あとはドラマを見たり、ラジオを聞いたり、本を読んだり、友達と話すとかしかしていない。そうしていると、大学に行くころまでに日常会話は問題ないくらい話せるようになっていました」

 いつも明るくて、だれにも壁をつくらない。そんな彼女の性格は、そんな環境から作られたのだろう。彼女のFacebookを見ていても、家族みんなでふざけあっている写真に、いつも心和ませられている。

ニュージーランドでの生活

 彼女が今年の3月からここで住み始めたのには、やはり名前に由来するところが大きい。同時に、日本で2シーズン、インストラクターの仕事をしたことで、資格を所得したい、日本のリゾートとは異なる世界でも自分を活かしたいという思いもあった。

「両親がこの町で結婚式を挙げていて、子供の頃に2回来ているんです。それで、わなかという名前だったらワンシーズンはワナカで仕事をしないとって(笑) 1度は経験してみないとなぁていうので来てみました。ここで働く人たちは本当にバラエティに富んでいて、ニュージーランドやオーストラリアはもちろん、チェコやフィンランド、イタリアとかから来た人たちもいます。生まれて最初の5年間は、ヨットのうえで育った人とかもいて。面白いですよね」

「ここには子供連れのファミリースキーヤーがとくに多い。インストラクターとして働いていますが、いまの資格は初級のレベル1。いまレベル2の資格を取ろうとしているんです。もともと子供たちを中心に教えたいとボスには伝えているんですけど、だいたいが今日初めてスキーを履く子たちです」

 南半球のニュージーランドでは、6〜9月がスキーシーズンとなる。「ニセコには、いつ戻る?」と聞くと、まだ決めていないと彼女は笑う。以前は、自分で立てた計画に縛られすぎていたから、決めないことにしたという。

「次の半年は、これをすると決めたら、やりたいことが変わっても決めたことをしなといけないって考えていたんです。でも、いまは今日を生きようと。まずは、今日。それと明日と明後日ぐらいかな(笑) 半年後は、うーん。まだ分からないです。いまはインストラクターが楽しくって、お金を貯めることもできますしね」

 次にしたいことへの資金稼ぎをしながら、今年の冬はニュージーランドで頑張る。そう最後に話してくれた彼女。来シーズン、日本の冬にニセコに戻って来る予定ではある。また、どこかで彼女と会うのが楽しみにしていよう。

Cardrona Alpine Resort
ニュージーランド南島の南部の町クイーンズタウンから1時間ほどのところにある総合山岳リゾート。6月中旬から10月中旬頃までの期間はスキーやスノーボード、それ以外の季節にはハイキングやMTBツーリングなどが楽しめる上級者向けの不整地滑走はもちろん、コースの半分は初中級者向けの斜面で、キッズ用ゲレンデなども備えられている。そのため、小さな子供連れのファミリースキーヤーも安心して訪れることができる。なお、ニュージーランドのスキー場の多くは、街から標高を上げてアクセスするところが多いのでレンタカーは4輪駆動車にチェーンを装備しておくと安心だ。

 
 
ライター
Taro Muraishi

アウトドアや登山専門誌を賑わすアウトドアライター。精力的に世界各地のアウトドア・ブランドへの取材へと出掛け、そこで得た登山装備と登山道具史についての知識は国内随一。過去20年にわたって、アラスカ北部に広がる原生自然帯での遠征活動を続ける冒険旅行家としての顔も持つ。

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