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芸術の秋、歩いて藤野を楽しむローカルアートフェス。もう何回やっているんだシノバラ展

(2017.09.26)

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神奈川県北部の小さな山々に囲まれた、「フジノマチ」に暮らす由なし事を、山岳写真家の三宅岳さんが、つらつらと書き綴る都市近郊田舎暮らし系定点観測型連載「自然暮らし時々方々山(仮)」の第3回目。芸術村とも呼ばれる藤野の秋は、なかなかおもしろいイベントに満ちてます。ハイキングがてら足をのばしてみませんか。
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 秋である。食欲もスポーツも大事だが、藤野においてはやっぱり芸術の秋なのである。というわけで、実は夏の終わりのころから、週末平日に限らず町内各地で大小のイベントが勃発。遊んでいる暇がないほど、遊びに忙しいというのが、この地域の特色になっているのです。

 なのですが、たまたま仕事が重なったりして、あんまり遊んでいないぜ、という小生。しかしながら、遊ばないわけにはいかないイベントがこれからドーンとあるのです。それが、「ぐるっとお散歩篠原展」。(以下、めんどうなので略称の「ぐるしの」で。)

 この「ぐるしの」。藤野町の南部、石砂山と石老山という二つの里山に囲まれた篠原地区全域を会場にして、お散歩して楽しもうという、イベント。この期間、人口アバウト200人ほどという地域のあちらこちらの家でささやかなれども充実感ある展示が行われたり、地域のシンボルでもある「篠原の里」でのコンサートが催されたりと、それはそれはにぎわうのであります。

 まあ、最近はこういった地域全体でのアート祭りというのも少なくはないのですが、この「ぐるしの」はすでに20回は開催されていると思うのです。

 この祭り、そもそもは酔っ払い同士のたわごとから始まっているというのが、いかにも藤野らしいので、ちょっとそのお話を。

 さかのぼること、だいたい四半世紀前の夏のある日。篠原の神社である大石神社祭典のその年の当番の中に、二人の重要な酔っ払いがいたのです。

 一人は、地域で一番の地元若手リーダー格、パンチパーマも精悍なYさん。もう一人は、これまた昼間から酒が抜けないという彫刻家の植草永生さん。祭りの直会で酒を酌み交わしながら、移住組であった植草さんに、Yさんが問いかける。 お前は芸術家だと聞いただが、ここで何をしているのか、地域の中で何ができるのか? と。それに応えて「わからないなら一緒にやりましょう」と、これまた謎の答えを返したという植草さん。

 この、わかったようでわからない酔っ払い問答がきっかけとなり、とにもかくにも、一緒に事を起こしたのが「篠原造形展」。酒の力とはなんと恐ろしいことでしょうか。

 ただの展示だけではなく、メインには即興と舞踏などという、ちょっと見慣れない聞きなれないアートまで展開。古民家の庭先で繰り広げられる、前衛アートを横目に、地元のおばちゃんたちが、地域の伝統食であるうどんを供するという、なんともミスマッチな空間が、これまたなんともアートになることに、またびっくり。

 当時、すでに篠原の小さな家を借りて暮らしていた僕にも当然声がかかり、ささやかながらも写真を展示。あるいは子供たちと作品をつくったり。というわけで、地域ぐるみでのアートの面白さを味わったのが「篠原造形展」だったのです。

 この「篠原造形展」。たぶん三年ぐらい続いたと思うのですが、植草さんが大学教授の席を得て広島に転居。ということで、休止。

 でもねえ、地域ぐるみのアートって面白いのですよ。というわけで、ついつい、名乗りを上げてしまったのです、僕が。「また、面白いことやろうぜ!」と。

 そんなことで、はじまった「ぐるしの」。たぶん、20回は続いていると思うのですが、確固たるアートイベントだぜベイビー、といったしっかりとしたコンセプトで始まったのではなく、なんとなく、造形展は楽しかったねえ、という思いから始まったので、いったい第一回が何年に催され、現在が何回目なのか、主催者である僕にさえさっぱりわからないのです。だって、それがわかったからって、どうということはないのだし。

 でも、たぶん、もう20回は越えていると思うのですよ。もちろん、山あり谷ありでしたが、それもまた振り返れば楽しい出来事だったのかなと。

 というわけで、いったいそれがどんな催しなのかは、来てのお楽しみ。ただ、はっきりしているのは、歩いて楽しむ催しということ。時間があるし、行ってみようかな、という好奇心旺盛なかたがもしいらっしゃれば、おススメは、石老山越えでのご来場。ハイキングで有名な石老山を越え、東海自然歩道を下山すれば、篠原地区に降りてくるのですよ。あとはご自由にお散歩して楽しんでくださいなのです。お散歩展なので、これがベスト。駐車場も少ないので、歩きが大歓迎。

 というわけで、いつのまにか主催イベントの告知になってしまいました。あ・・・本当はネットで呼びかけないでね、って言われていたかな・・・ま、イイカ。

 
 
ライター
Miyake Gaku

(みやけ・がく)写真家。1964年生まれ。東京農工大学環境保護学科卒業。自然と芸術の町・藤野町牧野(現在は相模原市)に暮らし、山や自然を中心に撮影を続ける。これまでに多くのガイドブックなどを執筆撮影するいっぽう『山と溪谷』や『岳人』をはじめ山岳雑誌などで活躍中。

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