• 山と雪

ただいま挑戦中!チョーオユー、シシャパンマ、マナスル連続登頂をめざして vol.1

2016.09.13 Tue

岩田京子 登山ガイド

 誰もが経験を積み、「いつかヒマラヤへ…」小説『神々の山嶺』の主人公さながらに、そんな思いを抱く人は少なくなったと言われて久しい。でも、ヒマラヤの峰々はかわらず紺碧の空を突いています。その姿に心躍らない岳人はいないでしょう。
そしていま、8千メートル峰3座に挑戦しようとする女性がいます。彼女は、先日カトマンズに到着しました。Akimamaでは無事の成功を願い、数回にわたって挑戦の様子をお伝えします。


ゴーキョから見えたチョーオユー。この景色が8,000メートル峰チャレンジのはじまりだった。

~プロローグ~

 2016年秋、ヒマラヤにある8000mの山を登る決意をした。しかもチョーオユー、シシャパンマ、マナスルの3座連続登頂という、自分にとっては一大チャレンジだ。

 私がはじめてヒマラヤの山へ足を踏み入れたのは2013年のこと。エベレスト街道にある、ロブチェピークという6000mの山に登頂した。その時に見た周囲の山々はすばらしく、言葉を発することができないくらいの圧倒的な存在感を放っていた。

 トレッキングをしながら見上げる景色とは違ったその存在感に胸を強く打たれた。山頂から目にした景色は今でも目に焼き付いたままだ。ヒマラヤの山は見る位置によっても山容が変わり、さまざまな顔を見せてくれる。それ以来、「ヒマラヤにいつかまた登りたい」という憧れは強くなり、その後チャンスをずっと狙っていた。いつでもそのチャンスに飛びつけるように、自分なりにも準備はしていたつもりだ。

ネパールの寺院にあるマニ車。これを手で回すことでお経を唱えたことと同じ功徳があるとされる。

今年の5月、ネパールのスリーパスを歩き、最後に訪れた、ゴーキョから見えたチョーオユーを見て心が揺れた。冒頭の写真は、その時に撮影したゴーキョから見えるチョーオユーの山容だ。あの山の上からの景色を見てみたい。8000mという未知の領域にチャレンジしてみたい。という気持ちがふくらみ、帰国後、公募登山隊に参加する決意をし、念願のヒマラヤの山へ行くチャンスを掴んだ。心の中でくすぶり続けていた気持ちとヒマラヤ登山のチャンスが偶然にも重なった。

自分は決して特別な人間ではない。登山を本格的に始めたのも今年で7年目。体力も人並みだ。不安材料はたっぷりある。しかし、それらを気にしていたら前に進めない。自分がどこまでがんばることができるのか、山の中で自分と向き合ってきます!

プジャという安全祈願も済ませ、お守りを頂き、その足でボーダナートという場所に向かい、さらにマニ車を回しながら一周した。

安全祈願でもらったお守り。ネパールらしいカラフルでかわいらしいお守りだ。

初めてのチャレンジなので、確信が持てないもどかしさがつきまとい、すがれるものにはすがりたい。できることはすべてやっておきたかった。

 ヒマラヤ登山というのは、大学山岳部や社会人山岳会など、大きな組織の人間しか海外遠征に行くことができなかったが、今では公募登山という方法があるので、行きたい!という意思があれば、そのような組織に所属していなくてもチャンスをつかみやすくなった。公に行きたい人を募り、費用をシェアして、個人がそれぞれ同じ頂をめざす。参加する人のチャンスは平等だ。昔に比べて行きやすくはなったが、お金を払い、参加すれば誰もが登れるということではない。

 高所登山はデスゾーン(人間の住むことのできない領域)に立ち入る行為であり、気を抜けば、すぐさま死に直結することもある。したがってそれなりに準備が必要だ。高い山では、たとえガイドがついていても、自分のことは自分でやるのが基本。登山に必要な最低限の道具を自分で調達し、さらにはその道具の使用に慣れておく必要もある。そして高山病への対応や体力トレーニングなど、しなければならないことは山ほどある。

しかし、公募登山の良いところは、食事の用意やテントの設営など、生活面で必要な部分は大体お任せできる。テントなどの装備は、ポーターやクライミングスタッフが運び、設置をしてくれる。

運び出すために梱包された大切な荷物の数々。

 そして食事はなんとコックさんが、毎食作ってくれるのだ! まるで王様のように、至れりつくせりな環境を作ってくれるのだ。高所では、些細な心配ごとでもストレスとなり、体調にも影響が出るので、それを最小限にできる。未熟な分、スタッフの力を借りることで登山に集中する事ができる。

周りには、なぜそんなツライ思いをしてまで……と言われることもある。しかし、大変なことやツライことを乗り越えた先には、それ以上に大きなモノを得ることができる。また、今まで出会えなかった人とも出会えたり、世界はいっそう広がる。それが高所登山の魅力だと私は思う。

今回の遠征は、1座だけのチャレンジではなく、3座を連続登頂するという、今までにないチャレンジとなる。約2ヶ月間の長期の間、何が起こるかは、行ってみないとわからない。でもこのチャレンジを通して必ず何かが変わると信じている。

ぜひ、応援してください!

がんばれ!京子ちゃん!Akimamaは応援します。
遠征の様子は、ブログからもご覧いただけます!→→→アウトドアを楽しもう♪

岩田京子 登山ガイド

日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。アウトドア業界でのイベントの企画運営の仕事の経験を生かし、現在はガイド業をするかたわら、海外添乗員も兼務。プライベートでは、ヒマラヤの山々にチャレンジしている(チョーオユー、マナスル登頂)。2019年5月、エベレストーローツェへの連続登頂に挑戦。見事、成功を収めている。
Blog:アウトドアを楽しもう♪

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