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“NEW GENERATION CLIMBER” 注目度急上昇中の中学生クライマー、伊藤ふたばさんの素顔

(2017.02.03)

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 先月末、代々木体育館で行なわれたボルダリングのジャパンカップで、史上最年少優勝をはたした伊藤ふたばさん。次世代を担うクライマーとして、注目度急上昇中の彼女はどんなクライマーなのだろう? その彼女らしさが伝わる過去の記事を再編してお伝えしたい(出典は好日山荘『GUDDÉI research』2016年夏号より。※記事は2016年5月現在のもの)。

 憧れは野口啓代さん。早く追いつきたい。

 伊藤ふたばさん。岩手県盛岡市に住む中学2年生である。「さん」と記すには違和感があり、本当は「ふたばちゃん」と書きたい。14歳になったばかりで、きゃっきゃと無邪気に笑うその姿には、まだあどけなさが残っている。身長は159.5cmというが、本人を前にしていると、そんなにあるようには見えない。明るく、華奢で、小さな女の子。それが素の「ふたばちゃん」の印象だ。

 しかしいったんクライミングウォールに取り付けば、印象は一変する。手足が長く、遠いホールドにも軽々と手が届く。壁のなかで大きく見えるのはうまいクライマーに共通した特徴だが、彼女もその例にもれない。急に体がひとまわり大きくなったように見えるのだ。さっきの「ふたばちゃん」と同じ人とは思えない。顔つきすら違って見える。これは間違いなく、「クライマー・伊藤ふたば」だ。

 2016年3月に開かれたクライミング日本選手権で、ふたばさんは3位に入った。このときの1位は、2015年のボルダリング・ワールドカップの覇者、野口啓代さん。そして2位はリード・ワールドカップで年間8位の大田理裟さん。世界で戦うトップクライマーを相手に堂々の3位。このときふたばさんはまだ13歳だった。
壁のなかでは顔つきまで変わるふたばさんだが、ふだんはふつうの中学生の顔に。とても明るい性格で、いつもなにかしゃべっているか笑っている
 クライミングの世界では、それもとくに女性では、10代前半でトップレベルの実績を残す人がまれに現れる。ふたばさんより1歳上で、世界で注目されているアシマ・シライシさん(白石阿島。アメリカと日本の二重国籍)は、すでに女性最強というだけでなく、男性が登る世界最高難度にまであと1~2グレードというところに迫っている。年齢制限があるためまだ出場できないが、ワールドカップに出てくれば優勝は間違いないとさえいわれている。ワールドカップで活躍している小林由佳さんも、13歳で国内ランキング1位に輝き、4年連続で1位を保った実績の持ち主だ。

 若くして頂点を極めたこういうクライマーたちと、いまやふたばさんは肩を並べようとしている。13歳での表彰台は、それほどクライミング界にインパクトを与える出来事だったのだ。

 ふたばさんがクライミングを始めたのは小学校3年生、9歳のとき。盛岡は岩場にはあまり恵まれない土地だが、市内の運動公園に、公営施設としてはかなり充実したクライミングウォールがある。ここでクライミングを始めた父親の崇文さんについて遊んでいるうち、娘のほうがどんどんうまくなっていったというわけだ。

「最初から登れましたね。高いところがあまり怖くないみたいで、もしかしてこの子は才能があるのかな?と」

 ふたばんさんは最初からうまかったんですか? という問いに、崇文さんはそう当時を振り返る。
ジムのオーナーCHOKUさんといっしょになってムーブを探る
 2012年に「ザ・ストーン・セッション」というクライミングジムが盛岡にできたことも、ふたばさんのクライミング熱を加速させた。このジムのオーナーは、運動公園でのクライミング仲間でもあったCHOKU(吉田直)さん。居心地のいい新たな拠点を得て、ふたばさんは持ち前の才能をさらに開花させていく。

 ザ・ストーン・セッションというホームを得たことのメリットはまだある。多くの国内クライミングコンペの会場音楽を手がける「ジャジースポート」のDJという顔ももつCHOKUさんは、クライマーとの交友が広く、その縁を頼って、安間佐千さんや野口啓代さんなどのトップクライマーも盛岡を訪れる。とくに、現在のボルダリング世界王者でもある野口さんと直に交流できたことは、ふたばさんのクライミングに決定的な影響を与えた。

「もう、啓代さんの全部が好きなんです。ずっと啓代さんをイメージしてクライミングしてきたので、早く啓代さんみたいになりたい」

オーバーハングを軽々と登るふたばさん。手足が急に伸びたように見える
 2016年4月に、埼玉県加須市でボルダリング・ワールドカップが開かれた。ふたばさんはまだ出場できないため、観客席で観戦した。この大会では、絶好調のイギリスのショウナ・コクシーが圧倒的な強さを見せて優勝。動画でしか見たことがなかった世界の強豪と会場のムードに気圧されたかと思いきや、「決勝2課題目は私にもできるかも」と言い、むしろ「やれる」という感触をつかんだようだった。

「いまはまだ実力不足だと思うんですけど、早くあの舞台で戦えるようになりたいです」

 前向きで物怖じしない性格もコンペティター向き。2年後にはこの“岩手っ子”が世界の表彰台に立っているかもしれない。
 

PERSONAL DATA
出身地 岩手県盛岡市
生年月日 2002年4月25日
クライミング歴 6年
主な戦績
2017年 ボルダリングジャパンカップ優勝
2016年 IFSC世界ユース選手権ボルダリング2位(ユースB)
2016年 IFSCアジアユース選手権優勝(ユースB)
2016年 リード日本選手権3位
2016年 ボルダリングジャパンカップ4位
2015年 IFSCアジアユース選手権優勝(ユースC)
最高グレード
ボルダリング初段、リード5.13a
ホームジム
THE STONE SESSION
      

(文・写真=森山憲一)
〔出典/好日山荘『GUDDÉI research』2016年夏号〕
※好日山荘のwebサイトからこの記事を掲載している『GUDDÉI research』2016年夏号』の誌面をフリーでダウンロードできます。詳しくは、コチラから。

 
 
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