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秋、それは渡り鳥到来の季節。シンプルな禅スタイルで野鳥観察はいかが?

2018.11.06 Tue

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

 鳥、それは都会的な環境でも日常的に出会える、もっとも身近な野生動物。そして、恐竜と共通の祖先をもつ「小さな恐竜」でもあります。

 そんな鳥の世界を楽しむといえばバードウォッチング。しかし、「三脚つきの望遠鏡や、でっかい望遠レンズ付きカメラで鳥を見る人たち」をイメージして、「敷居が高いな~」という人も少なくないのでは? でも、じつのところ大げさな道具は必要ありません。

私から2mの距離でくつろいでいたルリビタキ。

 かくいう私のバードウォッチングは、自称「禅スタイル」。用意するのは、薄い野鳥図鑑、小型の双眼鏡、デジタルカメラのみ。これだけでも「禅」的シンプルさなのですが、肝心なのはここから。私の「禅スタイル」とは、なるべく鳥に接近して観察することなのです。

「禅スタイル」のバードウォッチングにはこれ。野鳥図鑑/日本野鳥の会発行の「新・山野の鳥」と「新水辺の鳥」がおすすめ(ともに税込648円)。鳥をイラストで紹介していて、薄くてコンパクトなので携帯に便利。見つけた鳥を特定するときはイラストのほうがいい。双眼鏡/倍率8倍ぐらいのコンパクトなもの。値段は2,000円~5,000円ぐらい。デジタルカメラ/高倍率ズームレンズ付きで有効画素数1,000万画素以上、手ぶれ補正付きであればコンパクトデジカメでもOK.。

(左)画素数の多いデジカメであれば、撮影したときは野鳥が米豆粒ぐらいの大きさでも、(右)パソコンの画面で拡大表示すればどんな野鳥なのかが判別可能。拡大するとモズ、しかも雄であることが判明。

 もちろん、「餌付け」など邪道な行為はご法度。カモ類やウなどは狩猟や害獣駆除の対象なので接近できる個体は少な目ですが、すべての鳥について、「野生動物は警戒心が強いから……」というのはあくまでも先入観です。心を静め、ゆったりと、そよ風のような動きを意識して、心のなかで「きみ、すてきだね、なんてかわいいんだ」とささやいていけば、警戒心がそれほど強くない鳥には5~3mまで近づけるようになります。

スコットランドのシェトランド諸島にあるフェア島は野鳥の楽園。禅スタイルでパフィン(ニシツノメドリ)にこれだけ接近できた。

 声に出して語りかけるのも効果的。穏やかな声というのはなんとなく野鳥に伝わるようで、これまでにスズメ、カナダカケス(北米の鳥)、ヤマガラが私の手のひらに飛び乗ったことがあります。しかし、いいおっさんが「きみ、かわいいね、すてきだ~」とひとりつぶやいている様子は、他人に見せられたものではないですが……。

モズ。この日は3mぐらいまで接近できた。視線が合い、生きる力が伝わってくる。

 さて、日本の野鳥ですが、その多くは旅の途上。季節の移ろいとともに他所へと飛び立っていき、なかには国境を超える「渡り鳥」もいます。日本の野鳥の4分の3(約400種)が太平洋、北米大陸、ユーラシア大陸に渡っているそうです。

 ついばんだ木の実の種を糞で蒔いて植物の繁茂を助け、虫をたくさん食べて生態系のバランスに関わり、ときには私たち人間の食料になる野鳥。われらの隣人は、ほかの地域や国でも必要とされています。

禅スタイルで野鳥に接近すれば、小型の双眼鏡でも、驚愕的自然の造形美を鑑賞できます。

(文・写真=大村嘉正)

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

四国の瀬戸内海暮らし。仕事は自然・旅系ライター&フォトグラファーで、生きかたはバックパッカーでリバーランナー。著書はラフティングガイドたちの1年を追った『彼らの激流』(築地書館)。

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