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【連載】日本のロングトレイルを歩く vol.4 日本を代表するロングトレイル・信越トレイルは、こうして生まれた!

(2018.07.04)

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 樹脂でできた擬木や製材して形を整えた木材などを持ち込んだほうが、作業は円滑に進み、登山道も長持ちするだろう。しかし、作業効率を優先することなく、多少の手間がかかっても現場で伐採した立ち木や倒木、落ち葉を利用して登山道をつくる。それは、信越トレイルの基本理念である「生物多様性の保全」を守ることでもあった。
信越トレイルの基本理念のひとつは「生物多様性の保全」。重機は使用せず、人力でなるべく現地にある倒木や落ち葉などを利用して登山道を完成させた。

登山道が整ったら、最後に道標の設置です。信越トレイルには、開通当初設置した木製の道標が計113本あります。1本30kg以上の道標を、車が入れないところは、すべて人力で担ぎあげ、設置場所に60cmほど穴を深く掘り、埋めました。

目的地までの距離がわかりやすく表示された信越トレイルの道標。米国を代表するロングトレイル、アパラチアントレイルの道標を参考にして作られた。重量は1本約30Kg。これを人の手で稜線へ担ぎあげるのだから、相当な重労働だ。

 実地調査をして、登山道を刈り払い、道標を立てる。これら一連の作業は誰の手によって行われたのだろう。

われわれ信越トレイルクラブのスタッフと、ボランティアのみなさんで行いました。地元の方はもちろん、関東方面からこられる方もいらっしゃいましたよ。

 トレイルの名前さえついていない初期段階で、どうやってボランティアを募集し、確保していったのか?

鍋倉山周辺のブナの森の保全と適正な利用を目的とした『いいやまブナの森倶楽部』というのがあって、2000年に設立された組織なんですが、その会員が当時300人くらいいました。まずはそこに協力を募って、地元新聞に募集要項を載せたりして、徐々に増やしていったかんじですね。

 信越トレイルが産声をあげるまえから、ボランティアの力はこの関田山脈に根付いていたということか。

 信越トレイルがロングトレイルとして成功している背景には、ボランティアの力が大きい。いまでは年間約400名のボランティアがトレイル整備に参加している。ボランティアなくして、信越トレイルの維持管理は成り立たないと断言できるほどいまやボランティアの力は絶大だ。自分たちの遊び場は自分たちで作るという、ハイカーのインディペンデントな精神が信越トレイルには宿っている。
トレイル整備に参加したボランティアのみなさん。作業内容はトレイル補修、道標設置、倒木処理など多岐にわたる。必要な道具はすべて貸してもらえるので、はじめてのひとでも参加できる。日時などの詳細は、ホームページをチェック!トレイル補修の一場面。雪解けが誘発する地滑りによって、階段や斜面のトラバース道はたびたび土砂ごと流されてしまう。そのため毎年、トレイル開き前には定期的な集中整備が必要となる。5mもの雪が積もる信越トレイルは、どこよりも手がかかる山道なのだ。
 こうして、ひとりひとりの力が80㎞の山道に集うことで、ついに2008年信越トレイルは全線開通した。冒頭でも触れたように、去年信越トレイルには約3万5千人のハイカーがやってきた。豪雪地にあって雪解けが遅く、初雪が早い信越トレイルのハイキングシーズンは7月から10月までの約5か月と短い。だから、約3万5千人という数字は、いかに信越トレイルが登山者にとって魅力的な縦走路であるかを表している。

 約14年前の思い出が頭に蘇ってきた高野さんは、楽しそうに話し始めた。

そういえば、大西さん、霧が濃い日にリンデワンデリングしてましたよね? ヤブのなかに入ったっきり、30分くらい出てこなかったよね。

あったあった。牧峠から花立山へあがる途中だったかな。整備ボランティアの人たち4、5人と歩いていたら、霧がまいちゃってね。あの辺は尾根が複雑でいくつか道っぽいところがあるんですよ、古道が。その古道をぐるぐる回っちゃっていたという。

 次から次へとでてくる当時の思い出話から「辛かった」「大変だった」というマイナスな発言はひとつも出てこなかった。
 
 わたしたちがいつも何気なく歩いている登山道は、強いブレない芯を持った心ある人たちによって、拓かれた日本の、その地方の財産である。

どこの登山道にも、拓いた人がいて、整える人がいる。ときどき、その先人の苦労に思いを馳せ、歩いてみよう。そして、その財産を維持する活動があるなら1回でも参加してみよう。すると、いままで歩いてきたトレイルが、自分のなかにもぐっと延びてきて、そのフィールドの自然や歴史、文化ともっと深く繋がるようになるだろう。

「それが、ロングトレイルのひとつの楽しみ方だよ」

 信越トレイルはいつもそう語りかけてくれるのだ。
 

【文=森山伸也 写真=太田孝則、信越トレイルクラブ】

 


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ライター
森山 伸也

アウトドアライター。上越国境の豪雪地に暮らす。テント泊縦走、渓流釣り、SUPツーリング、テレマークスキーなどで自然を旅する。北欧のロングトレイルに精通し、著書に『北緯66.6° ラップランド歩き旅』(本の雑誌社)がある。twitter「@moriyamashinya」、Instagram「shinya_moriyama

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