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【連載】日本のロングトレイルを歩く vol.14 ぐんま県境稜線トレイル踏破録:第二章「未開の地グンマー? 新規開拓ルートに挑む」

(2018.11.22)

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いよいよ、核心部へ。歩き通すことができるのか? 新規整備ルートへ突入!

翌朝、4時前、三角山

 まだ暗いうちに、そっと静かに小屋を出てきた。朝食は、歩きながら。昨晩に温めておいたチャイを保温ボトルからすすりながら、菓子パンをむしゃむしゃ。

朝焼けが美しく、今日もまたいい1日になりそうだ

 いよいよだ。いよいよ、核心部に突入する。
 ぐんま県境稜線トレイル公式マップの「三国・四万エリア」だ。ぐんま県境稜線トレイルに興味を持っている人の多くがここをどう乗り切るかということに頭を悩ませているはずだ。群馬出身の仲間、グンマーズ(第一章参照)も、「藪がすげぇんだよなぁ」「どうなってるか行ってみないとわかんねぇよなぁ」「1日で抜けないと寝るとこないでしょ」などと、この区間を話題に挙げていた。

最新のぐんま県境稜線トレイルのMAPは公式サイトからダウンロードできる

 わたしがまず初めにやったことは、Google先生に聞いてみるっていうイマドキの方法だ。過去の山行計画・記録を片っ端から読み漁った。それでわかったことは、稲包山から先は藪漕ぎのメッカだということだった。大学の山岳部などが重装備で挑み、時には撤退したりもしている。前日に平標山の家で小屋の方と話したら、「笹藪が男の胸くらいまであって、ほんの2kmくらいに何時間もかかってね」と言っていた。しかもここは水場がない。周辺の沢まもかなり遠い。それどころか、そもそも、すでにトレイルとして歩かれている平標山の家から稲包山の区間さえも水場がない。

 トレイル開通まであと1ヶ月強。ぐんま県境稜線トレイルというロングトレイルを作るにあたり、新たに開拓する必要があった場所が、まさにこの区間だ。ここさえ繋がれば・・・とはいえ、最も整備が大変だったに違いない。エスケープルートがなく、整備に入るにも何時間もかけて山を登らなければならないからだ。刈払いがかなり進んでいて、藪はもうないのでは?という情報だった。距離、高低、地形を地図で見ながら計画を立てた。これまで破線や岩場でないバリエーションを歩いたことはあったが、藪が深ければすぐに引き返すことを心に決めて、可能ならば一日で野反湖まで行く。破線の初っ端から厳しければ(入り口さえも見つからなければ)、三坂峠から三国スキー場跡経由で苗場まで下山、あるいは途中で時間がかかりすぎるならばムジナ平という場所で幕営しようと考えていた。

三国峠の分岐。特になにもない

 三国峠から稲包山までは実線だ。破線で苦戦することを想定して、このあたりはさくさく歩こうと考えていたわたしの額には、まだ朝早くだというのに汗がダラダラ流れていた。

「まじかぁ、そうかぁ」

 ひとりごとが漏れる。三国峠には駐車場があるけれど、そこからハイキングに出掛けるなら間違いなく平標だろう。稲包山に登る人はそうとうマニアックらしい。初夏ということもあり、わたしの印象ではほとんど歩かれていないな、という感じだ。踏まれているのはおそらく整備の方の足跡で、足元の青い笹は整備したばかりであることがわかる。

毎年雪解け後に刈るのだろう。今後も初夏はこんな感じかもしれない

送電線巡視路がたくさんあるので迷い込まないようにしたい

たぶん直されたと思う

これも

実線だけど、注意して歩きたい

 笹の下りで何度かすっころびながらも調子よく歩いていたら、なんだか足跡が薄いことに気付いてハッとする。GPSを見るといつのまにか300mも三坂峠を通り過ぎていた。三坂峠に何か標識があると思っていたら、全く以て何もなかったのだ。GPS片手に30分ほど行ったり来たり、トレイルの入口を探してウロウロ。あともう少し探して見つからなかったらやめようと思っていた時、ふと目をやった先に不自然に潰れた笹薮を見つけた。これだ! と思ってかき分けると、綺麗に刈払いされたトレイルを見つけた。整備後の今はきっと何かしらの目印があり、入口も判りやすくなっているはずだが、迷いやすい場所であることには違いない。

敷地境界の杭を発見

 三坂峠からセバトノ頭までは、すでにしっかり整備されていたものの、道は険しく、急登が続く。ほとんど四つん這いで手足を使って登ような場所もあった。こりゃ、たまらない。たまらなく楽しい。三坂峠を8時、セバトノ頭に着いたのは10時頃だ。公式マップでは、3時間20分かかるらしい。まだ登るか、まだ登るか、よっしゃこい、どんとこい。

これが胸まである笹薮だったところだろう。これを刈るのは相当苦労しただろう

葉っぱに隠れたギンリョウソウ

歩きやすいふかふかトレイルは束の間

ジャングル

ジャングル!

 セバトノ頭付近まで来ると、一気に視界が広がった。

「あの稜線、サイコォォオ!」

 美しい稜線を見ると興奮する。あの姿! あの雰囲気! などと騒いでいるとだいたい友人が隣でドン引きしているが、単独ならば小躍りし放題だ。

こんな素敵な場所が未開の地だったなんて!

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ライター
中島 英摩

ライター。テント泊縦走から雪山登山まで1年を通じて山に通う。趣味が高じてライターとなり、トレイルランニングの取材・執筆をメインに、国内外の長距離レースにも出場している。特技は走りながら取材すること。

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