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地球を滑る旅 No.6  ギリシャ編「運に招かれた国で出会った、神に試される山々と世話好きの人たち」

(2018.12.07)

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神話の国で、巨大な光の塊を見る!

 

 久々の左ハンドルに、いささか緊張しながら、ゆっくりと車を出発させた。ウィンカーと間違えて、何度もワイパーを動かしてしまったけど、その度に助手席のケイが

「雨降ってきた?」

 と冗談を言ってフォローしてくれた。今までの俺たちだったら、真っ先にアテネのダウンタウンを目指しただろうけど、運転に慣れない状態でダウンタウンに向かうことが、いかに無謀なことなのかということに、最近ようやく気がついた。俺たちは、空港からまっすぐ山岳エリアを目指してドライブを開始したのだった。

 飛行機が着陸するときに景色を見渡した限り、雪山の「ゆ」の字も感じられなかったし、ドライブしていても、スキーの「す」の字も感じられない街並みだ。

「順調だね」

 ケイがニヤリと笑って言った。『本当に雪なんてあるんだろうか?』という不安が大きければ大きいほど、実際に雪を目にした時の感動が大きいことを俺たちは経験的に知っているのだ。

 退屈なハイウェイから下道に降りると、ヨーロッパらしい田園風景が広がってきた。アテネを出発して約3時間。『ようやくギリシャっぽい景色が現れた!』と思った場所が、俺たちが最初にベースにしようと思っている街、デルフィだった。

パルナッソススキー場のベースとなる街が、なんと世界遺産の街デルフィ。哲学の祖・ソクラテスも、ここで神託を受けたことがきっかけで、哲学の道を歩みだしたとか。

 ネットで調べたところによると、デルフィはギリシャ最大のパワースポットなんだそうだ。イエス・キリストが生まれるよりもずっと昔、ここは『世界の中心』と呼ばれ、アポロン神殿の巫女による神託(神の御告げ)で国の命運を占ったんだとか。

「20歳になるまでに幽霊を見なかったら、一生見ることができない」

 という都市伝説を信じている俺は、20歳までに幽霊を見れなかった自分を霊感ゼロと決めつけて生きてきたが、そんな俺でも、霊的な何かを感じるような場所がデルフィだった。

 様々な歴史のある街からスキー場に向かうことに、妙にロマンを感じるのは俺だけだろうか。旅人ロマン満載の俺は、桜の花にそっくりなアーモンドの花のトンネルを抜け、街からつづらおれの道路を一気に高度を上げて行った。そのとき......!

 突然視界に飛び込んできた巨大な光の塊に、俺もケイも唖然としてしまい、それが雪山だと認識するのに、数秒間を要した。

「うおおお!!!」

 車内でかかっていた広瀬香美の「ゲレンデがとけるほど恋したい」の歌声を搔き消すどよめきが響き渡った。日本を経ってから数日間、雪景色から離れていただけに、視界を覆い尽くす雪の光はあまりにも鮮烈だった。

デルフィを出発して20分。圧倒的なボリューム感で聳え立つパルナッソス山が見えてきた。地中海性気候のギリシャは、冬が雨季にあたるので、標高約1,000m以上には結構雪が積もるのだ。

  • スキーができる国とは思えない、温暖な気候。麓の町ではレモンやオレンンジがたわわに実っていた。
  • デルフィの街は桜が満開だった......と思ったら、アーモンドの花だった。とにかく、2月後半だというのに、もう春めいてきていた。
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ライター
Akimama編集部
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