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地球を滑る旅 No.6  ギリシャ編「運に招かれた国で出会った、神に試される山々と世話好きの人たち」

(2018.12.07)

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雪質よりも斜度よりも、ワクワクさせてくれるもの

 

 雪があった時点で、俺たちのミッションは99%成功のようなものだ。世界中のパウダーフリークが憧れるパウダースノーの聖地、北海道から、わざわざビーチリゾートのイメージしかないギリシャにスキーに訪れた理由は、当然雪質なんかじゃない。ここにしかない雪があり、ここにしかない地形があり、景色がある。そして、ギリシャのスキー場に根付いたスキー文化に触れるのも楽しみの一つだ。

 スキー場に到着すると、プールに入る直前の小学生のように、バタバタと準備を済ませてリフトチケット売り場に向かった。地球を滑る旅としては、初めてのユーロ圏ということで、さぞかしリフトチケットがお高いんじゃないか、と心配していたけど、予想に反して一日券が約3,000円という安価だった。リフトチケットの料金は、その国の物価以上に、世界中からゲストが来るかどうかが反映されるのだ。要するに、このスキー場にわざわざ海外から滑りにくるような好き者など、ほぼいないと言うことだ。

パルナッソススキー場に到着。雪質と積雪量を日本と比べてはならない。俺たちはギリシャでしかできないスキーを体験しにきたのだ。

  • リフト1日券が日本円にして約3,000円。日本のスキー場でも5,000円が当たり前の時代である。物価が高いイメージのヨーロッパの中では破格だ。
  • スキー途上国のイメージだったけど、蓋を開けてみれば施設は立派で、お客もたくさんのスキー場だった。
  • ビーチリゾートのごとく、リクライニングベッドで日向ぼっこをする人々。全然暖かくないんだけどね。さすがはギリシャ人だ。
  • やけに盛り上がっているな〜と思って、よく見たら、雪上バレーボール大会かよ!? 雪遊びの仕方が何から何までビーチ風だ。
  • 決して雪が多いとはいえないけれど、どのスキー場も個性的な地形を生かしたワイルドなスキー場だった。
  • 初めて訪れたスキー場のゴンドラの中で、トレイルマップを見ながら、どこを滑るか作戦を立てる。このワクワク感は子供の頃から何ら変わらない。
  • ワイルドなオフピステが広がるカラブリタスキー場に連日通うも、強風で軒並みリフトがクローズときたもんだ。こんな時バックカントリースキーヤーで良かったと思う。
  • スキー場の山頂から裏のエリアを眺めると、美しいボウル地形が。バックカントリーを楽しむ人がほとんどいないので、一日中貸切のようなものだった。

 ちなみに、俺が調べた限りで世界一リフトチケット(一日券)が高かったスキー場は、アメリカのコロラドにある高級スキーリゾートのベイルで、約2万円。俺は、20年前にベイルを訪れたことがあるが、その時はランチの価格を見ただけで震えてしまい、結局滑らずにスキー場を後にしたという暗黒の思い出になっている。やはり、貧乏人に優しいスキー場っていうのは、オープンに感じて心地よいものだ。

 ゴンドラの中から、周囲のスロープやその奥に広がる山々を眺めている俺たちは、初めて飛行機に乗った子供よりも落ち着かない様子だっただろう。広々としたスロープには、初中級のスキーヤー・スノーボーダーで溢れ、中腹のレストハウスのテラスに並んだリクライニングチェアには、まるでビーチで寛ぐかのように日向ぼっこしている人々の姿が見えた。

 やがて、このスキー場の象徴というのにぴったりなピラミッドのような山が左手に近づいてきた。俺とケイは、ゴンドラを降りると、スキー場全体が見渡せる場所まで、無言で移動して行った。

「おおお、やっぱり......!」

 世界は、いつも驚かせてくれる。インターネットで情報を得て、何かを知ったつもりでいても、それは単なる情報に過ぎない。ここで目にしているリアルなスケール感。肌で感じる風や空気中の湿気、雪の匂い。そして目に見えない霊的な何か......。ここに立たなければ、1%だって、ここを感じることはできないのだ。

スキー場から見える「あんなところ、滑れるの?」という斜面に、シュプールを残す快感。パウダーの大斜面もいいけど、ピリリとスパイスの効いた滑降が、たまに欲しくなるのだ。

 俺とケイが、『果たしてスキーなんてできるんだろうか?』と思っていたギリシャは、その懐にとんでもなく可能性いっぱいの雪山を隠し持っていた。
こうして、俺たちにとってのメインの目的であるスキー滑走の日々がスタートした。神々の国であるから、天気を司るゼウスの気まぐれに翻弄されながら、荒天の中で一瞬の隙をついて、あちこちのスロープにシュプールという生きた痕跡を刻んでいった。

 その詳細をここで語りたいところだけれど、それは、俺たちが今年10月19日に発売したばかりの新作「GREECE」を読んでいただきたく!

 もちろん、滑走だけではなく、遺跡や街や島での旅、食文化、アクシデントなど......、旅の様々なエッセンスが詰まった一冊です。

 GREECE
 “RIDE THE EARTH Photobook 06”

 著者:Skier&Text: 児玉 毅/Photo: 佐藤 圭
 210×270mm/120頁/定価 2,000円(税抜)
 ISBN978-4-903707-86-0
 発売日:2018/10/20

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ライター
Akimama編集部
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