line_box_head

【A&F ALL STORIES】A&Fオリジナル。小さな道具に秘められた、大いなる技と思い

(2018.02.02)

道具のTOP

icon

 世界中の道具の善し悪しやおもしろさを見極めて輸入することを生業にしてきたA&Fが、こうして自社製品をつくるようになったのは、創業から9年がたった1986年のことだった。

「それまで、いろいろな道具を見て、おもしろいと思う道具を扱ってきたんですが、同時に、ここはこうすればいいのに、と感じるものもけっこうあったんです。俺ならこうするのに……みたいなアイデアを、形にしようと思ったんですね」
野外で生き抜くことの基本は火起こし……そんな思いを形にした道具たち。航空機用エアークラフトアルミを削り出してつくった「防水アルミマッチボックス」(左上)。炭素鋼白紙二号で鍛造した火打ち金「フリントロックセット(左)」と赤津会長私物の火打ち金(右上)。コンパクトにたためる収納性のよさと、ダッジオーブンを置いてもびくともしない強靱さを合わせ持つ「A&Fファイアースタンド」と地面に負荷をかけない「A&Fマルチスタンド」(左下)。付属の金属片を擦って火花を発生させ、確実に着火する「A&Fメタルマッチ」(右下)
 そのひとつが、モーターで空気を送り、効率よく火を起こす「サバイバルストーブ」。国内生産されたこの逸品は、赤津会長の盟友であるウェイン・グレゴリー(「グレゴリー」の創始者)を通じて、バックパッキングのバイブルとして知られる『THE Complete Walker』(邦題『遊歩大全』)の著者であるコリン・フレッチャーの手にわたり、長く愛用されたという。また、発売以来、ロングセラーとなっている携帯灰皿「アッシュコンテナ」など、これまで50以上の商品を生みだしてきた。いずれも隙間商品ばかりですよと笑うものの、クオリティにはいっさいの妥協がない。

「同様に長く売れている”ピンオンリール”(フライフィッシングなどに使う、スプリングを内蔵した自動巻取り式の小道具)は、カメラレンズの銅鏡をつくる、精密機械の職人に頼んだんです」

 そこからは腕利き職人の輪が広がり、日本のスイスと呼ばれ、精密工業が盛んな長野県の諏訪・岡谷をはじめとした日本各地に、アイデアを具現化する、頼れる技術者がいるという。国産にこだわるわけではないけれど、信頼性を考えると、自ずと道は決まってくる。

「今年もいくつかの新作を考えていてね。そのひとつが、1.5mmの極薄ステンレスを使った、組み立て式のコーヒードリッパー。真鍮削り出しのオイルライターは、ライフワークである狩猟にちなんで銃弾の形にしてみたよ」

 汲めども尽きぬ、創意の泉。

「社員にアイデアを求めることもあるけれど、売れる売れないを考えると、責任を感じてしまいそうだから、ほとんど自分で考えています」

 そう話す姿は、なんだか楽しそうだ。

 ここで、インタビューに同席してくれた元スタッフが、こんな話をしてくれた。

「ある日、店頭で“キーリリース”(左右の輪に鍵などをつけられれ、着脱できるホルダー)を何十個も買う人がいたんです。たずねると義足をつくる職人だそうで、連結させるのに、この商品がいちばん強度があるから、って」
あらゆる可燃物をすばやく燃やす「サバイバルストーブ」と、発売以来いまなお愛される「アッシュコンテナ」。そして、フライフィッシャーマンの長年の友として知られる「ピンオンリール」とたしかな強度を誇る「キーリリース」
 それを聞くと、会長は我が意を得たりとにっこり。

「あれにはなかにふたつのベアリングが入っているんだけど、そこにNASAの宇宙開発技術が使われていて、200kgの強度があるんだよ」

 そう言ってポケットから取り出したのは、どこにでもありそうなキーホルダー。ありふれた道具に注がれた尋常ではない職人技と、その品質を求める飽くなきこだわり。

「A&Fオリジナル」の名を冠する小さな道具のひとつひとつには、そんな物語がこめられている。

 

(文=麻生弘毅 写真=伊藤 郁) 


1 2
 
 
ライター
Akimama編集部
line_box_foot