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今日3月16日は国立公園の日。国立公園ってなに?じつは近代史がよく見える。

2016.03.16 Wed

 いまから82年前の今日、1934年3月16日、日本にはじめての国立公園が誕生した。今日は国立公園指定の日。最初に指定されたのは、瀬戸内海、雲仙、霧島の3つ。現在では32を数え、さらに今年新たに33番目として沖縄県本島北部のやんばるの森を「やんばる国立公園(仮称)」に指定する方針を環境省が発表している。

沖縄本島の北部には、深い森が広がる。「やんばる」は地元の言葉で国頭村・大宜味村・東村などの北部一帯を表す言葉。ⒸOkinawa Convention&Visitors Bureau

環境省レッドリスト 絶滅危惧種IA類に指定されているヤンバルクイナ(写真上)とノグチゲラ(写真下)。やんばるの森に棲む固有種だ。近年ヤンバルクイナは、交通事故で死んでしまうことも多いという。ドライバーは気を付けよう。ⒸOkinawa Convention&Visitors Bureau

 国立公園は、だれもが素晴らしい自然環境を楽しむために指定された公園。いわば、みんなの公園だ。自然環境を保護しつつも有効に利用できるよう、国が中心となって必要な施設を整備している。国立公園に指定された広大な自然環境のなかには、日光東照宮や伊勢神宮といった貴重な文化財を含むことも多く、知らず知らずのうちに訪れているかもしれない。

 「みんなの公園」でありながらも、あまり知られていない国立公園。魅力やエピソードを少しご紹介しよう。

復興をめざして改名された「三陸復興国立公園」
高さ200メートルの崖が続く北山崎断崖。4月からは観光船も運航するので、海から見ることができる。 Ⓒ岩手県観光協会

 波で浸食された断崖とリアス式海岸が広がる「三陸復興国立公園」。国立公園に指定されたのは1955年のことだが、2013年に青森県の地区を編入した際に復興をねがって名称が改められた。なかでも海のアルプスと呼ばれる北山崎断崖はダイナミック。近年は、青森県から福島県までをつなぐ「みちのく潮風トレイル」の整備が進んでおり、現在は半分の370キロあまりが開通して歩けるようになっている。

指定年月日も心にとどめたい「西表石垣国立公園」
これぞ南の島!そんな実感ができる自然がもりだくさんだ。珍しい植物や生き物に出会える。ⒸOkinawa Convention&Visitors Bureau

 これまでは西表島の3分の1ほどが国立公園に指定されていたが、その範囲を島全域とする決定が今月にもなされるという。イリオモテヤマネコやカンムリワシといった稀少な動物が棲み、河口付近にはマングローブの森が広がり、亜熱帯性特有の自然が魅力だ。公園の指定年月日は1972年5月15日。この日は、沖縄が日本に復帰した日。復帰と同時に国立公園に指定されたという歴史を持っている。

イリオモテヤマネコは、絶滅の危険性が極めて高い絶滅危惧IA類(EN)に指定されている。全島の国立公園指定が功を奏することを願うばかり。ⒸOkinawa Convention&Visitors Bureau

27年ぶりに誕生した「慶良間諸島国立公園」
世界的にも有名なダイビングスポットでもある慶良間諸島。白い砂は、サンゴ礁が砕けてできたものだという。ⒸOkinawa Convention&Visitors Bureau

 「ケラマブルー」といわれる透明度の高い海が広がる慶良間諸島。指定区域の多くを海が占める。ザトウクジラが子どもを産み育てる海域でもあり、ちょうどいまの時期(1〜3月)はホエールウォッチングが楽しめるという。慶良間諸島は、1987年の釧路湿原国立公園以来、新たに誕生した国立公園だ。国立公園は指定後も再編して分離されたりもする。まったくの新規でというところでは、27年ぶりのことだった。

GHQの力が働き指定された「伊勢志摩国立公園」
深く切れ込んだ入り江に大小の島々が浮かぶ美しい景観。伊勢神宮のほかにも人気のパワースポットが多い、まさにサンクチュアリだ。Ⓒ伊勢志摩観光コンベンション機構

 指定区域の9割を私有地が占める珍しい国立公園。入り江と、島々が浮かぶ湾が美しい景観だ。サザエやアワビなどの海産物が豊富で、海女さんが多く活躍している。伊勢志摩国立公園は、戦後はじめて誕生した国立公園で、伊勢神宮も指定区域に含まれる。終戦まもない混乱期は、神域も解体や乱獲、伐採といった危機に瀕し、保護が急がれた。そこでGHQが大きく関わり急転直下の国立公園指定となったという。今年指定70周年を迎える。

台湾に日本の国立公園が!?「陽明国家公園」
日帰りで訪れることが出来る七星山。昨年12月にのAkimama編集部が登ってきた。台湾は九州ほどの面積でありながらも、3千メートル峰が144座もある。

 昨年Akimama編集部も登った台湾の七星山。七星山を含む陽明国家公園は、かつて日本が統治していた時代に、まさに国立公園にしようとしていたところ。当時は「大屯国立公園」といって予定地とされていたが、第二次世界大戦が勃発したことで実現されなかった。現在は、国家公園という形で日本の国立公園に相当する指定がされている。

 もともと国立公園(ナショナルパーク)という考え方は、アメリカが発祥。19世紀末期にイエローストーンナショナルパークが世界初の国立公園として指定され、イギリスやニュージーランドといった他の国々もこれに続いていく。日本も1931年に「自然公園法」が設立され、国立公園を作った。国によって自然環境の違い、自然に対する考えもそれぞれあるので、必ずしもアメリカの手法をそっくりまねたわけではなかったようだが、自然保護は国立公園というかたちで世界に広まっていった。そうした考え方はアウトドアの原点でもある。彼のジョン・ミューアーも国立公園実現に大きく尽力した人物だった。

 国立公園として自然環境を指定するのはもちろん、大切なのはどうしていくかという未来、これからなのかもしれない。もうすぐ春休み。各地の国立公園を訪れてはいかがだろう。

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