• アクティビティ

パックラフトでス〜イスイ、お江戸を漕いでみよう

2016.03.26 Sat

 都会のド真ん中を漕ぐ——。いつかはやってみたいなぁと思いつつも、なかなか機会に恵まれなかった。都会なんてところに住んでいると、どうも腰が重くなる(と、都会のせいにしてみる)。そんな折、「パックラフト in 大都会〜春のお花見ver.」開催参加者募集中という絶好の便りが届く。これはいいチャンス!と、さっそく参加してみることにした。

ガイドのハナさん(中央)。春先から秋にかけては、群馬県みなかみ町を流れる利根川の激流をガイドする。数少ない実力派女性ガイドであり、頼もしい存在。パックラフトが楽しい!とさまざまなツアーを企画中だ。

 今回参加したのは、群馬県みなかみ町に拠点を置くカッパクラブが主催するツアー。経験豊富なガイドが同行するこのツアーは、初心者もOK。川や周辺の下調べもしっかり行われていて、安心して参加できる。また、参加者にはドライスーツが貸与され、雨が降らない限りほとんど濡れる心配はない。

 パックラフトはインフレータブル(空気を入れて膨らませる)の一人乗り用のフネで、重量も軽く、扱いやすいという。フィールドでの機動力も高く、水遊びの可能性を感じさせてくれる。何人かで漕ぐラフティングと違って、自分の思うままに自由にフネを操れるのはなにより楽しい。

片手でもヒョイと持ち上がられるほど軽いパックラフト。丸みを帯びたほうが前、尖っているほうが後ろ。

 ドライスーツを着て、ライフジャケット、スプレスカートも装着。漕ぎ方とパックラフトの扱い方の説明を受ける。レクチャーが終わると、いよいよ出発。青空の下、パックラフトに初乗艇。安定感は十分、回転性がありながらも推進力はしっかりあるので、ホワイトウォーターカヤックのように、漕ぐたびにくるくる回ってしまうといったことはない。しばらくすると、全員フネに慣れて操船も思うままに出来るようになっていた。

かつては大川と呼ばれた隅田川。遠くにスカイツリーを臨む。大きな観光船などが航行すると引き波を受けるが、ゆらゆら揺れる程度。

 東京の川というと、ニオイなどはどうなのだろう…と気になっていたが、あまり感じなかった。ただ、気温が高くなると(夏季など)気になるという。最近は川の清掃・浄化活動も積極的に行われ、清流を取り戻そうという動きが広がっている。

神田川の水面。思っていたより透明度が高く驚いた。漕ぐたびに水面が輝いて、きれい。

 神田川を上流に向かって漕ぎ進めて行く。川沿いのビル群、橋の下、停泊する屋形船。ふだん見下ろしている風景を見上げるのは、新鮮そのものだ。漕ぎ始めは、海鳥がたくさん飛び、海が近いことを感じさせる。

両岸には、たくさんの屋形船。屋形船にも乗ってみたい〜!と、参加者からリクエストの声があがる。

空を見上げればこんな感じ。気分爽快。ビルの縫うように進むパックラフト一行。ゆったりと時間が流れていく。

 何本もの橋をくぐるたびに、橋の上からは通行人の注目が集まる。平日の昼間、多くの人々は働いているころだ。でも、参加者の皆さんは、今日が休日。橋から手を振ってくれる人も多く、こちらも川面から振り返す。見知らぬ人同士が、こんな風にコミュニケーションを取り合うのも楽しいもの。

水道橋は知っていたが、ここが本当の水道橋。ちゃんとした「橋」なのだ。

個人的に気に入った場所。垂れ下がったグリーン、天井には水面がきらめく。自然が織りなすインスタレーションだ。

 今ツアーのパックラフトin大都会は、春のお花見ver.が副題となっていた。都内は、しばらく暖かい日が続いたこともあり開花は3月18日頃と報道されていたが、ここに来て少し冷え込んでいる。咲きはじめてはいるものの、平年よりも遅く、つぼみはまだかたい。一分咲き、二分咲きといったところだろうか。

一本だけ満開の垂れ桜が迎えてくれた。高速道路と電車に挟まれながらも優美な花がめいっぱいに咲いている。「サクラだ〜」見られないかもしれないと思っていただけに、感動もひとしお。

 垂れ桜に別れを告げながら、神田川から日本橋川へと進んでいく。ここからは上に首都高が走り、屋根のようになっている。

掘留橋。江戸の時代は日本橋川を掘留川といったそうで、その名前だけが残っている。現在の橋は、大正15年に架けられたコンクリート。

 掘留橋より先は、江戸や明治、大正、昭和の痕跡が多く残るゾーン。橋の上や道路からも遺構を見ることができる。川面からだと、さらなる至近距離に!

一ツ橋御門のあたりに残る石垣。気分は一気に江戸時代へとタイムスリップ。算木積みの角が美しい。

 都会の川にもいろいろな生き物が棲んでいる。ハクセキレイはそこかしこを飛び、休憩するカメを2回ほど見た。水中にはアカエイが。こんなコンクリートだらけの都会の隙間にも、しっかり生きているのだな…そんなことを思うのだった。

日光浴中のカメ。しばらく置物のように動かなかったが、近づくと、水中へ逃げていった。

 ツアーのクライマックス、日本橋が見えてきた。ここまでで約4時間。途中休憩も入れながらの、のんびりツーリングだったが、ほどよい疲労も感じはじめたころ。「日本橋が見えてきたよ〜!」一同のテンションもあがる。日本橋といえば、歌川広重の浮世絵が有名だ。橋を渡れない魚売りの表情が渋く、江戸の庶民の生活が垣間見える一場面。

歌川広重の日本橋。橋を渡ろうとしていた魚売りたちが、大名行列に出くわし、しばらく渡れなくなってしまった。「なんだよ〜新鮮な魚が悪くなっちまう〜」なんて愚痴っているところ。

 最初に橋が架けられたのは1603年、江戸時代がはじまったばかりのころ。現在の橋は、1911年に架けられたもので架橋105年。初代の橋から数えて20代目だそう。明治、大正、昭和、激動の時代を見てきた橋でもある。

圧倒的、迫力がある日本橋。翼を持った麒麟がなんとも気高い。橋の下には、関東大震災の焦げ跡が。

 橋の下には黒く焦げたような跡がところどころに残っていた。これは関東大震災のときについたものだという。こうして川からでないと間近に見ることはできないので、とても感慨深いものがある。日本橋から少し進んだところで、今日のツアーは終了。思った以上にたっぷり漕げた!楽しかった!と参加者は全員大満足。

 東京の川は、地方を流れる清流とは違った趣きと楽しさがある。人々の生活や歴史の遺構、都会に暮らす生き物たち。こんなアーバンアウトドアもいいなとあらためて実感した一日となった。

=============
カッパクラブ (http://www.kappa-club.com/ ) TEL.0278−72−1372
 ツアーを主催したカッパクラブでは、パックラフトのほかさまざまなアウトドアツアーを群馬県を中心に開催している。詳しくはホームページをチェックしてみよう。こんなことをしてみたいのだけど…そうした冒険心を応援してくれる頼もしいツアーカンパニーだ。

(写真・文=須藤ナオミ)

Latest Posts

Pickup Writer

ホーボージュン 全天候型アウトドアライター

菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ

森山憲一 登山ライター

高橋庄太郎 山岳/アウトドアライター

森山伸也 アウトドアライター

村石太郎 アウトドアライター/フォトグラファー

森 勝 低山小道具研究家

A-suke BASE CAMP 店長

中島英摩 アウトドアライター

麻生弘毅 ライター

小雀陣二 アウトドアコーディネーター

滝沢守生(タキザー) よろず編集制作請負

宮川 哲 編集者

林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

藤原祥弘 アウトドアライター、編集者

ふくたきともこ アウトドアライター、編集者

北村 哲 アウトドアライター、プランナー

渡辺信吾 アウトドア系野良ライター

河津慶祐 アウトドアライター、編集者

Ranking

Recommended Posts

# キーワードタグ一覧

Akimama公式ソーシャルアカウント