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THE FIELD OF HEAVEN 第2回『アウトドアガイド 中川伸也』

2013.05.10 UP

インタビューされる人:中川伸也 インタビューする人:林 拓郎

本州から見ると北海道は「冬が長くて夏が短い」ところ。だけど外遊びをしている感覚はちょっと違うみたい。実際には冬も長いけれど、ホントに長いのは春。早春から晩春まで、北国の春はゆっくりゆっくりと移っていく。そんなハナシを聞いて、ターゲットは決定! 「THE FIELD OF HEAVEN」の第2回に登場してもらうのは、アウトドアガイドの中川伸也さん。北海道ならではの自然の魅力をカッチリ分かった上で、天気やお客さんのノリまで考え合わせてフィールドを選ぶ。そのガイディングは、完全におもてなしマインドに溢れていました。

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春だけのぜいたく。
山で夕陽を見て、滑って帰る!

「この時期しかできないっすよね。天気も安定するし、日ものびてきて寒さもおさまるし。別に頂上とかにこだわらなくていいんですよ。キモチ良く歩いて、適当な場所でお茶飲んだり、昼寝したり、本読んだり。そうやってゆっくりして、仕上げに夕陽なんか見たりして。

 夏山だと泊まるんじゃない限り、山で夕陽見るっていうのは危険ですよね。でも残雪の時期にスキーやスノーボードがあれば、サッと降りて来れちゃうじゃないですか。周りが雪だと、暮れ残ってる明かりでも充分滑れるんですよ。山で気のすむまでのんびりして、しかも滑って降りてこられるって、春のバックカントリーでしかできない遊びなんですよ」

 うららかな陽気の山でバックカントリーと夕陽を楽しむなんて。まさしく春のバックカントリーでしかできない贅沢の極致!!

「確かにそうですね。でも別に大げさなことは考えてなくて。今できる楽しいことや気持ちいいことは何かなって思ったら、そうなっただけなんですよね。僕は夏山もガイドするけど、元々がスノーボーダーだから。山が気持ちいいな、って思って歩きに行って。滑って降りればいいんだから、もう少しいよう。あ、夕焼けがキレイだから、もうちょっといよう。そろそろ暗くなるから帰ろう、みたいに思うだけです。

 ガイドの時には暗くなるのはマズイんで、お客さんと一緒のときはやらないです。あくまでもプライベートや、気心の知れた仲間との遊びでですけどね。下りの足が速い、スノーボードだからできることですよ」

 いや驚いた。そんな考え方、したことなかった。

「北海道って春が長いんですよ。時期的にも長いけど、縦の変化が緩やかっていうか標高によって春が来るタイミングが全然違うんです。だから郷は春真っ盛りでも、山は早春。雪も残ってますから場所によってはまだまだ滑れます。ピクニック的なバックカントリースキーやスノーボードなら、6月半ば過ぎまで楽しめます。いいところですよ」

スノーボードには滑り手の人柄が出る

柔らかな身のこなしとスムースなライン取り。雪や斜面にストレスを与えない穏やかな滑り。スプレーも豪快に上げるのではなく、上がってしまう分を少しだけ。スノーボードには滑り手の人柄が出る。photo:key photo

プロスノーボーダー、
お客さんに接する喜びを知る

 中川さんは北海道のど真ん中、大雪山(だいせつざん)を中心に活動しているアウトドアガイドだ。

「大雪山ってよく誤解されてるけど、そういう名前の山があるわけじゃないんですよ。旭岳とか黒岳とかの山が含まれた大雪山系全体のことを指してるんです。だからまぁ、案内するのはこのあたり。半径100kmくらいのエリアかな。十勝岳とか旭岳なんかもガイドの範囲です」

 元々は札幌市の出身だが、今は旭川の郊外、東川町で『Natures(ネイチャーズ)』というガイドカンパニーを立ち上げて活動している。

快晴の旭岳をバックにスノーシューで散策

快晴の旭岳(2,291m)をバックにスノーシューで散策。Naturesではこうしたお散歩的なツアーも開催。photo:Natures photo gallery

 この東川町は近年、たくさんのアウトドア好きが集まる町として、数々のメディアで取り上げられ始めている。理由はもちろん、自然が豊かなこと。そしてそんな自然に惹きつけられた多くの人たちが集まることで、東川町のアウトドアカルチャーはさらに厚みを増している。中川さんもそういったアウトドアの潮流にのって移住してきたのかと思ったが。

「いや、そうではないですね。大雪山は滑るにはいいな、とはずっと思ってたんですけどね。ここに来たのは巡り合わせって言うか。思うところあって、札幌のNPO法人でネイチャーガイドのお手伝いをさせてもらうことにしたんです。そのNPOの活動拠点のひとつがたまたま東川町だったんですよ。ひと夏、旭岳のキャンプ場の管理人なんてやってるうちに、ここなら冬も滑れるし、夏山はきれいだしなぁって思って東川町に住み始めました」

 実は中川さんは現役のプロスノーボーダー。競技生活からは身をひいているが、ここ数年はバックカントリーを舞台に撮影を重ね、そんなライダーたちの活動をおさめた『車団地(Car DANCHI)6』『icon 7』などのDVDに登場している。

「34歳になって、ちょうどスノーボードを始めて20年が経ちました。最初に滑り始めたのが14歳、プロになったのは大学3年の終わりです」

 そうしながら数々のメーカーとスポンサー契約を結び、雑誌やムービーに登場。柔らかな身のこなしでスムースに滑る姿は、今でも多くのファンから憧れのスタイルとして語られる。

「大学卒業してからしばらくは本格的にプロスノーボーダーとして活動してたんですけど、スノーボード以外にもやってみたいなぁってことがあって。それが飲食店だったんです」

プロスノーボーダー、
ネイチャーガイドを目指す

中川伸也

中川伸也(なかがわしんや)
1978年 北海道うまれ。小学生の頃はサッカー少年だったが、14歳でスノーボードに出会い、以降はスノーボードに没頭。大学在籍中の2000年、JSBA(日本スノーボード協会)の公認プロ資格を取得。ハーフパイプ競技とともに、バックカントリーでの撮影などにも積極的に参加。このことがガイド業へのトビラを開けることになり、2008年からはNPO法人「ねおす」の活動に参加しながらガイド修行。その後、旭岳自然保護監視員などを経て、2011年に独立。雪山から夏山まで、安全で楽しい山旅を提供するガイドカンパニー「Natures」 を立ち上げる。
<主な資格>
日本山岳ガイド協会 登山ガイド・ステージⅡ
北海道山岳ガイド協会会員
北海道アウトドアガイド資格(自然・夏山・冬山)
JAN(日本雪崩ネットワーク) avalanche operation level 1

 なにしろスノーボーダーというのは、各人の個性をライフスタイルとして表現する人たちだ。そんな個性で言うなら、自分は勢い、やるなら徹底的にやるタイプ。その世界でプロを張っていたとなれば、中途半端では済まさない。中川さんは店のコンセプトからメニュー、そして内装まで自分たちで手がけた創作居酒屋を札幌市内のススキノで開店。たちまち繁盛店となった。

「店が軌道に乗ったこともですけど、お客さんと接するのが楽しかったんですよね。自分が美味しいと思うものを出して、それで喜んでくれる顔が目の前にある。スノーボーダーとして自分のやりたいことを追いかけてきたんですけど、ほかの人に喜んでもらうっていう意識はあんまりなかったかもしれないです。で、あぁ、自分がやりたかったのはコレだったのかなって思いました」

 ところが! ここには思いもかけないトラップがあった。

「居酒屋ってやっぱり夜の仕事ですから。昼間の外遊びがなんもできないんですよ。スノーボードはもちろん、夏も秋も何もできない。飲食業は楽しいけど、これはちょっと考えないといけないな、って思うようになって」

 飲食店を出店して数年、浮かび上がってきたのが

「ガイドだったんですよね」

>>Naturesのツアーはほぼすべてオーダーメイド方式
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インタビューされる人:中川伸也 インタビューする人:林 拓郎

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