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THE FIELD OF HEAVEN 第2回『アウトドアガイド 中川伸也』

2013.05.10 UP

インタビューされる人:中川伸也 インタビューする人:林 拓郎

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桂月岳からの朝焼け

大雪山系をなす山のひとつ、桂月岳(けいげつだけ 1,938m)からの朝焼け。photo:Natures photo gallery

 バックカントリーで撮影をしていたことから、ガイドと接することは多かった。ガイドなら自分のやってきたことを活かしながら、お客さんを楽しませることができる。自分の技術をベースに、サービスする手応えを得ることができる。こうしてプロスノーボーダーとしての経験と、飲食業に携わる喜びを同時に満たす道が見つかった。よし、ガイドをやろう!

 ここで普通のスノーボーダーなら知り合いのつてを頼って冬山ガイドを目指す。けれど、中川さんは違った。

「見ず知らずのところに行きたかったんです。その方が自分も真剣に勉強するかなって思って。分からないことも聞きやすいし、おかしいと思ってることも遠慮なく言えるし。あとはどうせ生活を変えるなら、正反対に変えたかったですね。大きく変わった方が、変化があっておもしろいですから。それでいろいろ調べて『ねおす』っていうNPO法人でお手伝いさせてもらうことにしたんです。ここなら自分の勉強したいことを吸収できるなって思って。いきなり冬山のガイドからじゃなくて、まずは夏山のネイチャーガイドから始めたかったんです」

これがホントのパウダースノー

自然にあがったスプレーが、まだ空中に舞っている間にライダーは先へ先へ

自然にあがったスプレーが、まだ空中に舞っている間にライダーは先へ先へと。いかに雪が軽いか。そして、いかに速いか。photo:key photo

 決してアウトドアガイドを狙っていたわけではなく、その時その時で自分のキモチに正面から向かい合っていた。東川町に住んでいるのも、流れでそうなっただけ。

 中川さんはそう言うけれど、話してみるとやっぱりこの地を選ぶ大きな理由があった。

「冬がね、いいんですよ。大雪の冬はすごくいいです」

 ほうほう。やっぱりスノーボーダーの血が騒いだようで、キメ手になったのは冬だった。で、冬の大雪のどんなところが魅力なんだろう?

「めっちゃくちゃ寒いことです」

 って!ちょっと聞いただけだと、それって魅力でも何でもないでしょ。でも、その寒さってのがスノーボーダーにはものすごく大事。

「大雪の雪はすごく乾燥してるんですよ。いくら強く握っても雪玉にはならないサラサラの雪で。粉としか言いようがない本物のパウダースノーです。

 こういう雪が降るのも海から遠いから。日本海から季節風で運ばれてきた湿気は、いくつかの山に当たりながら雪になっていきます。だから大雪まで来たときには湿気なんてほとんどないんです。それなのに、わずかに残った湿気がが寒さで搾り取られるように雪になるから、極上の乾いた雪になるんですよ。

 旭岳や大雪山っていう大きな山があって、そこにそういう上質の雪が降る。滑るってことを考えたら、このエリアはホントに恵まれてると思います」

行き先はコンディションに合わせて
オーダーメイド

 ちなみに、そんな冬の季節のガイディングはどんな所に行くんだろう? やっぱり人気の旭岳が中心?

「いや、けっこうバラバラです。僕自身、人の多いところは好きじゃないし、どこどこの山に登ったっていうピークの経験にも興味がないんで。お客さんと話して、ドライパウダーを滑りたいとか、景色のいいところに行きたいとか、そういう希望を聞きながら。じゃあ今日の天気ならあの辺だろうっていう当たりをつけて、ちょっと歩きますかっていうような」

 通常のバックカントリーツアーはあらかじめ行く先を決めてから参加者の募集をする。ガイドが事前に調べて決定したフィールドで滑るというお決まり方式だ。ところが、驚いたことに『Natures』のツアーはほぼすべてがお客さんと話し合ながらその日の行き先を決めるオーダーメイド方式。

「ここに行きたい、っていう目的地の希望があれば別ですけど。だいたいはグループで申し込んで来られるんで。みなさん知り合いなんですよね。だから気心知れてる仲間どうしのことがほとんどです。そのグループ全体の空気っていうか、みんながやりたいことをうまく取り入れながら、行き先は決めます。

 あと、ほとんどのお客さんは先に日程を決めていらっしゃるんで。その日のコンディションで一番いいところに連れて行ってあげたいんですよね。同じ感じで、滑る以外の目的で来るお客さん、たとえばきれいな冬景色を見たいとか、スノーシューで散歩したいとか、そういう人たちにも楽しんでほしいから。行き先も、手段も、全部お客さんと相談しながら決めていきます」

 まさに臨機応変。目的がキモチよくアウトドアを楽しむことなら、徹底してその目的を追求する。

「うん、そんな感じですね〜(笑)」

大雪の紅葉は
週替わりの美しさ

赤と橙色はナナカマド、黄色はダケカンバ、薄緑は笹、緑はハイマツ

大雪山の紅葉はモザイク模様だ。赤と橙色はナナカマド、黄色はダケカンバ、薄緑は笹、緑はハイマツ。photo:Natures photo gallery

「でもね、冬だけじゃないんです。大雪は冬以外もいいですよ。意外に見逃されてるのが秋ですね。紅葉はホントにヤバイですよ。めちゃくちゃキレイですから」

 大雪の紅葉って、あのでっかい山が真っ赤になるってこと?

「いや、そうじゃないんですよ。本州の紅葉って山全体が真っ赤になる印象ですけど。北海道ってそうはならないんですよ。紅葉するもの、しないもの。紅葉の時期が違うもの。いろんな植物が混ざり合ってるから、色のモザイクみたいになるんですよね」

 そう言って見せてくれた写真にビックリ! 赤と緑、その間に橙色と黄色、薄緑が混ざり合っている。そのコントラストの見事なこと!

「大雪の紅葉ってこういう感じなんですよ。それがどんどん表情を変えます。紅葉の時期になると、今週と来週でもう様子が違いますから。紅葉は一度見たからいい、って言えないですね。何度見ても、そのたびに色のバランスも、濃さも、配置も、全部が違うんです。で、秋が深くなってくると、ここに雪がかぶり始める。そのキレイさは、何度か見てる僕らでも足を止めちゃいますね。絶景ですよ」

>>大雪山の夏と、ガイドとしてのあり方
(2/4)

インタビューされる人:中川伸也 インタビューする人:林 拓郎

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