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THE FIELD OF HEAVEN 第2回『アウトドアガイド 中川伸也』

2013.05.10 UP

インタビューされる人:中川伸也 インタビューする人:林 拓郎

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夏の大雪は高山植物のパラダイス
お手軽アクセスで、お花畑へ

 さて、もちろんこれからの季節、中川さんのガイドは夏山へとシフトしていく。フィールドはもちろん大雪山だ。

「夏の案内は大雪がほとんどなんですけど、やっぱり景色がいい。まずはこれに尽きますよね。北海道って夏でも空気が澄んでるから、目で見ても写真撮ってもホントにクリアでキレイなんです。

 あと、このエリアは高山植物がすごいです。たとえば旭岳のロープウェイ沿いに1.7kmの散策路があるんですけど、そこなんかはたぶん日本でいちばんお手軽に高山植物を見れるルートじゃないですかね。それこそ本州から来たお客さんなんか、白馬の雪渓越えて苦労して見に行ったのより、こっちの方がキレイだ、って言う人がほとんどですね。何しろロープウェイでアクセスした先の、花の面積がすごいです。見渡す限り、高山植物のお花畑。もうそれだけで行く価値アリ、みたいなところですよ」

エゾオヤマノリンドウ

エゾオヤマノリンドウ・夏の終わりから秋にかけて北海道の高山帯でよく見られる。photo:Natures photo gallery

 景色が良くて、簡単に行けくことができて、行った先にすごいものがある。となれば、夏の大雪が人気を呼ぶのも納得。ガイドも大忙し確定だ。

「そうですね、忙しくはなります。でもその散策路だけじゃなくて、片道5時間くらいの日帰りも行くし、1泊とか2泊で大雪の縦走も行くし。そういう手応えのあるものも案内してます。

 そのへん冬と同じで、コースを決めて募集するようなツアーってほとんどやってないんですよ。たいていはお客さんがクチコミで僕の存在を知って連絡をくれて、この日にここに連れて行ってくださいっていうオーダーガイドがほとんどなんで。うまい具合にいろんなスタイルのお客さんに会って、いろんな山歩きができてます」

 つまり、小グループでフットワーク良く、やりたいことを伝えてオリジナルなツアーを組んでもらうのが『Natures』では得策、っていうことらしい。

「あとは本州からいらっしゃるお客さんは、けっこうクマのこと心配してるんですけど。大雪ではあまり出会わないんですよね。危ないのは見通しのきかないところでの、出会い頭なんです。何もない草原なんかはクマも人も、お互いに姿が見えますから事故は起こりにくい。そういうところでは、熊鈴なんかもしまってもらったりします。ここは大丈夫ですから、風の音や鳥の声を聞きましょうって。せっかく静かで気持ちのいいところに来てるんで、その場をめいっぱい楽しんでほしいんですよね。でも、見通しの悪いところは注意してます。手を叩いたりしますし、何か音を出しながら歩くようにしてます」

 こうしたことひとつ取っても、やっぱり『Natures』のやり方は臨機応変で理にかなってる。何事も考えて、先を見越して、やり方を整えるのが、中川さんのスタイルなのだ。

トムラウシ

雪渓の残る登山道をたどり、いちばん奥に見えるトムラウシへ(2,141m)。photo:Natures photo gallery

道案内人ではなく、
ガイドでいたい

 実は中川さん、一度札幌で夏山のガイドを始めようとしたことが過去にあった。

「だけど、そのときは思いとどまったんです。まだ自分は準備ができてないんじゃないか。今ガイドを始めても、お客さんを満足させられない。それじゃあ自分も満足できない、って思ったんですよね」

 それは例えるなら、メニューの決まってない居酒屋をオープンさせるようなもの?

「そうそう、まさにその感じでした。目的は店を開けることじゃなくて、お客さんに喜んでもらうことなんで。

 だからもっと知識を身につけて、経験を積んで、自分の準備を整えるためにNPO法人に飛び込んで勉強を始めたんです。

 いちばん思ってたのは、自分が今まで接してきたヨコノリっていうかスノーボードの世界の人とは違う、一般の登山やハイキングを楽しんでるお客さんとどう接したらいいのか。小学生や中学生と一緒に山を楽しむには、どうしたらいいのか。そういう基本的な人への接し方を学びたくて」

 必要なものがあればストイックに学ぶ。そして吸収する。その原動力は中川さんの中にあった、おもてなし体質だ。

「最初にネイチャーガイドやりたいなって思ったときも、今までスノーボードのバックカントリーで経験したこととか、そういうものをみんなに知ってほしい。すごくいいところがあるから連れて行ってあげたい、ってところだったんですよ」

 お客さんに喜んでもらうにはどうすればいいのか。アタマの中には、常にそれがある。

「言い方は悪いかも知れないですけど、お客さんを連れて行ってお金もらうだけだったら簡単なんですよね。でもそれって、気持ちよくないんです。何時間もずーっと一緒にいるのに、そんな雑な対応してるとお互いにツライじゃないですか。だったらなるべく楽しく和気あいあいと。最後に仲良くなってハイタッチするような。そういう接し方の方が自分としても気持ちがラクだし、お客さんもまた来てくれて仕事も継続できると思うんですよ

 ガイドと道案内人とは全然違いますよね。道案内はその場所を知ってれば極端な話、誰でもできるけど、ガイド業っていうのはもっとそれ以上のもの……たとえば安全管理や、もてなし、楽しんでもらうということとか。そういう山のサービス業なんだと思います。自分はどっちでやっていくんだ?って言われたら、やっぱりガイドでやっていきたい」

ニペソツ山

夏山の緑が眩しいニペソツ山(2,013m)と登山道。photo:Natures photo gallery

 基本は喜んでほしい。楽しんでほしい。やっぱりキモチの燃料は、お客さんの笑顔だ。

「だから今はこの仕事やってて、すごくやり甲斐もあるし楽しいんですよね」

 そう、僕らが求めているのはただの道案内人ではない。中川さんの言うような、とびきり素敵なフィールドへと導いてくれるアウトドアのホストこそ、巡り会いたいガイドさんなのだ。

>>アウトドアガイド中川さんに7つに質問!
(3/4)

インタビューされる人:中川伸也 インタビューする人:林 拓郎

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