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ゴカイ、ハリネズミ、ベニテングダケ……野生食材調理サイトの金字塔「ざざむし。」が復活!

2016.01.12 Tue

藤原祥弘

藤原祥弘 アウトドアライター、編集者

 近年の狩猟ブームとともに、数も内容も充実してきた「獲って食べる」系サイト。銃猟、罠猟、山菜、漁り、釣り、魚突き……と、対象とする獲物や使う道具ごとに、多くの遊猟・遊漁者が情報を発信しています。

 そんな野生食材捕獲サイトの系譜のなかでも、インターネットが普及し始めたころにいち早く展開されていたサイトが「ざざむし」。

 ザザムシとは長野県で食される水生昆虫の幼虫の総称ですが、そのザザムシの名を冠した「ざざむし」が扱っていたのは、昆虫も含むあらゆる野生食材でした。

 アカエイやウツボ、ゴンズイといった「外道とされるがうまい魚」に始まり、ヒトデやフジツボなど「ごく限られた地域で食べる食材」をも調理。さらには、ミミズやフナムシ、オタマジャクシといった一般には食べ物とされない動物までも調理してレビュー!

 次々と驚きの食材へ挑み、軽妙なタッチで調理法とその味を紹介するその姿に、同時代を生きた食材採集家は畏れと尊敬を抱いたものでした。

 ミミズやフナムシを食べると聞くと、ゲテモノ食い自慢のサイトのように思えますが、さにあらず。

 読み込んでいくうちに気づくのは、著者が生物に対して深い知識と愛情を持っていること。一見ゲテモノ食いに思える食材を扱う場合も、安全性(毒・寄生虫etc)に注意を払い、その食材に最も適していると思われる方法で調理して、きれいに盛り付けて賞味。たとえ不味かった場合も最後まで「食材」として遇します。

 そして、いくつかの記事を読み進むうちに、読者は自分のなかの「食材」と「それ以外」の線引きが非常に曖昧なもので、それが簡単に揺らぐことを感じ始めます。

 エビとカニは「美味しそう」と思うのに、それにそっくりなフナムシはなぜ「気持ち悪い」と思うのか? イナゴの佃煮は受け入れられるのにそのほかの虫は食材とは思えないのか?

 それらへの思索を深めるうちに、自身のなかで「食材とそれ以外」を規定するものが「文化」でしかなかったことに読者は気付きます。「食べ物」として与えられたから「食べ物」として認識してきたこと、そしてその「食べ物」の味も、先入観なしに評価したことはなかったこと−−−。

 目の前のものが「食べられるかどうか」は人間をのぞく多くの生き物にとって最大の関心事で、かつては人間にとっても最大の関心事でした。そして「美味しい」「まずい」の評価の前には「食べても大丈夫」「食べたらヤバイ」というジャッジがあったはずだ、と「ざざむし」は実践を通じて問いかけます。
 
 現代人が日々その判断をせずに済むのは、先人たちが積み上げた知識の集積のおかげなのに、その恩恵に与りながらなぜ自分たちはさらに新しい知見を積み上げていかないのか? 人間はいま「食べられるかどうか」という、生命としていちばん根源的な行為さえ、他人に委ねてはいないか?

 このほかにも「ざざむし」にはいろんな「食への問い」が散りばめられていました。食材と非食材を隔てるものとは何か? 食肉とは? 殺生とは? 最近話題になっている昆虫食の可能性や、狩猟と肉食の是非へもつながる問いかけも15年以上前にすでに提示していました。

 開設から5年ほどしてサイトは突然閉じられてしまうのですが、10年近い沈黙を経て、昨年秋に「ざざむし。」(←注 マルがついた)として新規にオープン! 溜め込んだ熱量を発散するように、精力的にあらゆる食材の実食レポートが展開されています。

 ときに偽悪的にも思えた旧サイトに比して、新しい「ざざむし。」は軽妙な文体はそのままにより紳士的な構成へと変化。多くの記事が食材の背景、採集方法、喫食する際の注意点を丁寧に解説してから調理、レビューへと展開します。

 食材に対するうんちくは、科学的な視点から伝統食文化までを網羅し、休眠中にも多くの資料を渉猟してきたことをうかがわせます。各記事は食エッセイ、科学読み物としての質も高いので、狩猟採集や野生食材に興味がある人はもちろん、一般読者も楽しめるでしょう。

「野生食材の調理」というテーマだけにはとても収まらない「ざざむし。」さらなる展開から目が離せません。

ざざむし。

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