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【A&F ALL STORIES】北国の海で育った、 質実剛健なプロ仕様の道具たち「シアトルスポーツ」

(2018.08.07)

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 古くはボーイング社が、近年はマイクロソフトやアマゾン、コストコやスターバックスなど、いまをときめく企業が本拠地を置く、ワシントン州シアトル。感度の高いビジネス街という顔をもつ一方で、アラスカ・ベーリング海で操業される漁業の一大拠点にもなっている。

 そんな土地柄からだろうか、シアトルはアウトドアリサーチやMSRなどのメーカーが本拠地を、北米最大規模のチェーンストアであるREI、フェザードフレンズが本店を置くなど、アウトドアが深く浸透している(同じくシアトルに本拠地をもつカブーの社長、ベイリー・バーは腕利きの漁師でもある)。

「そんな当地を代表するアウトドアブランドのひとつがシアトルスポーツ(SEATTLE SPORTS)。彼らに出会ったのは2000年のOR、当時はフェザークラフト、ニンバス(ともにカヤックブランド)を扱っていたこともあり、保温力と防水機能に優れるFROSTPAKソフトクーラー(以下、フロストパック)は、カヤックの旅にうってつけだと思ったんです」

 翌年からフロストパックを扱うことになったA&F会長の赤津孝夫さんは、当時をそう振り返った。

 シアトルスポーツは1983年、パドラーであるデニス・ヒルとマイク・ヒル兄弟によって創業、当初の商品はドライバッグで、REIやL.L.Beanに納入していたという。その後、世界に先駆けて高周波によるシーム溶着技術を開発し、その防水力の高さで一世を風靡した。

「当時のシアトルスポーツは、世界初となる製品を次々と生みだし、市場を驚かせていました。ラウンドボトムを溶接したしたドライバッグ、内部の空気を自動的に排出するオートパージドライバッグ――― そのうえで、強度に優れるターポリンを使っていたため、シアトルスポーツの名はドライバッグの代名詞みたいなものでした」

 ところが2010年代に入り、燃やすとダイオキシンを発生させるターポリンは、各メーカーから敬遠されるようになった。そうした流れを受け、シアトルスポーツでもPVCフリーのドライバッグをつくっているのだが、主力はいまも、頑強なターポリンモデルだ。
フロストパックは、カヤック旅やキャンプはもちろん、海水浴や散歩でも重宝する。
「アメリカ人は、道具はタフであること、に重きを置いているのだと思います。これは現在の社長であるマイク・ムーアに聞いたのですが、ハードに使っても壊れない道具を、わざわざ燃やす必要はないだろう、って」

 2年前、現地を訪れたという赤津会長はそう笑う。そして、軽量コンパクト化が進むアウトドア界において異彩を放つシアトルスポーツの魅力、その原点について、こう話してくれた。

「彼らは漁業の町であるシアトルにおいて、プロユースであることにプライドを持っているのだと思います」

 そんな誇りの一端が垣間見えるのが、ウェビングテープの素材選び。多くのメーカーはより軽量で、伸縮性に優れるため、デザインの自由度が広いナイロン素材を使用している。

「ところが、彼らはよりハードなポリエステル素材を選ぶのです。ナイロンは水を吸い、紫外線を浴び続けることで硬化してしまう……非常に伝わりにくい部分ですが、シアトルスポーツが長年、真摯に海と向き合って来た歴史、プロ仕様の道具をつくるんだ、という心意気が現れていると思うんです」

 そしてまた、シアトルスポーツはMade in USAにこだわる、数少ないブランドのひとつでもある。

「製品を軍に収めているためという理由もあるのでしょうが、シアトルという町がもつ、ものづくり精神の表れだとも思っています。アウトドアリサーチやカブーとともに、アメリカ生産ブランドの最後の牙城として、がんばってほしいと思っています」

 シアトルスポーツの日本国内における売れ筋商品は、断トツでフロストパック。世界中にコピー製品をもつベストセラーの誕生は、親交のあるリバーラフティング会社からの声がきっかけだったという。

「激流を下るラフトにハードクーラーを載せるわけにはいかないが、当時のソフトクーラーはハードな使用に耐えるものではなかった。そこで、彼らがドライバッグに採用しているヘビーデューティーなターポリン素材を使い、強度と機密性、保温性に優れ、数日のツアーでも余裕をもって食材を運ぶことができるソフトークーラーをつくったのがはじまりだそうです」

 フロストパックの長所は、保温性はもちろんのこと、水濡れや衝撃から内部を守るギアケースとしても、抜群の使い勝手を発揮するということ。元プロカメラマンであり、いまも一眼レフカメラを携えることの多い会長の目に留まったのは、そんな部分も大きいという。

「そのあたりを踏まえて、フロストパックを十二分に活用しているのが、沖縄の伝説的なカヤックガイドである仲村忠明さん(沖縄カヤックセンター)ですよね。鍋や食材、焚き火台などを、色違いのフロストパックに整理して、みごとに収納しています。日本のシーカヤッカーにフロストパックが認知されているのは、仲村さんの影響も大きいと思っています」
海や自然とシンプルに、深く触れ合う術を伝えてくれる、沖縄カヤックセンターの仲村忠明さん(撮影=山田真人)。
 そんなフロストパックには、日本リクエストのモデルが存在する。それが、「ソフトクーラー23QT」だ。

「2ℓのペットボトルを6本入れられる、使い勝手のよいサイズです」

 もうひとつが、日本別注であるサンドカラーの導入。風景に馴染むアーシーなカラーリングが、キャンプサイトにそっと色を添えてくれる。

「このあたりのレスポンスの早さは抜群です。そうした日本でのヒットを経て、今期、向こうから提案されたのが、インスレーションを2倍にし、保温性をさらに高めたアークティックダブルウォールシリーズです」

 通常モデルに使用するアルミ製特殊断熱層を二重に採用し、保温力をさらに高めたもの。0℃をキープする時間を比べると、断熱層が一枚の従来モデルに比べ、およそ1.5倍の保冷時間を誇っている。

「アメリカらしいまじめなものづくり、というんですかね。決しておしゃれではないけれど、長きにわたって信頼できる。そんな質実剛健さがシアトルスポーツの魅力だと思います」
日本別注カラー(サンド)を採用した「ソフトクーラー23QT」(9,300円+税)と、1.5倍の保冷力がある「アークティックダブルウォール フロストパック30QT」(19,000円+税)。


 
 
ライター
麻生弘毅

1973年生まれ、フリーランスライター。カヤックやバックパッキングなどによる、長い旅が好き。著書に北極圏の泥酔紀行『マッケンジー彷徨』(枻出版社)がある。

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