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【A&F ALL STORIES】座れば分かる! 世界中に中毒者をもつ、オリジナルチェア。「クレイジークリーク」の魅力とは。

(2018.08.20)

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旅のさなかに見つけた気持ちのいい場所……そこを世界一のバーに変えうる力をもつのが、クレイジークリークの魅力。

「最初はね、ものすごくユニークだけど、冗談かと思いましたよ。はたしてこれが商品になるのか……半信半疑で腰掛けた瞬間に、こりゃすごい、と! 彼らのコンセプトを表す言葉に“DON'T JUST DO SOMETHING... SIT THERE!”というものがあるのですが、その素晴らしさは、まさに座れば分かるんです!」

 折りたたみ式の座椅子として、世界中で愛されているクレイジークリーク(CRAZY CREEK)について、A&F会長の赤津孝夫さんは笑いながらこう話してくれた。

腰掛けたら、左右のストラップで座り心地を調整する―――これ以上ないシンプルな構造に、一度触れると逃れられない魔力を秘めている。

 クレイジークリークは1987年、パウダースノーを求めてモンタナ州レッドロッジにやってきたスキーバム、ロブ・ハートによって創業された。誰よりも速く滑ることに心血を注ぎ、「カウボーイスキーヤー」と呼ばれたロブは、同時に優れたクライマーでもあった。そんな彼がクレイジークリークを生みだしたきっかけは、雪山において快適な、乾いたチェアが必要だと考えたこと。ロブはその原型を、祖父のつくったカヌー用チェアに求めたという。

「ロブのおじいさんは、左右にチェーンを付けた、折りたたみのシートを自作していたそうです。彼はそれを元に、最新素材で試作品をつくっていったんです」

 試行錯誤するなかで光を与えてくれたのは、同じモンタナでものづくりを生業とし、スキーやクライミング仲間でもあったデイナ・グリーソン―――パックブランドであるデイナデザイン、のちのミステリーランチの創始者だった。

「折りたたむことができ、左右のストラップの締めこみかげんでフィット感を調節するという、シンプルで理に叶った基本構造は決まっていた。けれど、座面と背面をつなぐストラップの耐久強度に問題があった。そこでデイナが自身のバックパック、そのフレームに採用する"ウイング”を提案。堅牢な縫製技術とともに、ロブにアドバイスをしたそうです」

 そうして誕生したクレイジークリークは瞬く間にヒット。その一方で、特許を取らなかったこともあり、安価なコピー品も大量に出まわるようになった。

「そこで、生産拠点を中国に移さざるを得なくなった。それまで生産を支えてくれていた縫製職人やミシンの行方に胸を痛めていたところ、デイナがミステリーランチを創業することになり、彼らを引き継いでくれた―――ふたりにはそんな信頼関係があったそうです」

社長として支えるのは、創業者であるロブ・ハートのスキーバム時代からの盟友であり、ともにクレイジークリークを育ててきた、ジョン・エルスベリー。

 A&Fがクレイジークリークと手を組んだのは、そんな変遷を経た2000年頃。その後、ロブが不慮の事故で亡くなると、創業当時から同社を支える、スキーバム時代からの盟友、ジョン・エルスベリーが社業を引き継いだ。

「ジョンは非常ににこやかであると同時に、製品に並々ならぬ情熱を注いでいて、こちらの声を的確に反映してくれる。そんな姿がこちらも励みになったし、売るモチベーションにつながりました」

 2008年、より軽量な「ヘクサライト」が販売されると、従来のファンに加えて、その使い勝手のよさから登山者にも注目された。

「ところが、初期のヘクサライトには少し完成度が低かったんです。軽量コンパクトさを追求しながら、快適性と耐久性は損なわない……そんな矛盾するような命題のなかで、ジョンとさまざまなやりとりを重ねました。そうして生まれたのが現行モデルのヘックス2.0オリジナルチェアなんです」

 クレイジークリークは30年にわたり、その基本構造を変えず、つねに最新素材を導入しながら、座り心地のよさと軽さを追求してきた。前述のように、あまたのコピー品があふれるなか、その存在感を失うことがないのは、「オリジナル」であることの魅力と、他を寄せつけない快適性と耐久性による。

「最新モデルは、UL仕様のマットで知られるクライミットと共同制作したエアーチェアコンパクト。内蔵するマットを取り出して単体使用できるうえ、737gと軽量。座り心地のよさはもちろん、折り紙付きです」
(上左右)クライミットとのコラボレートから生まれた、エアーチェアコンパクト(税込12,960円)。(下左)610gと超軽量なうえに、丸めてコンパクトに収納できる、ヘックス2.0オリジナルチェア(税込8,424円)。(下右)いちばんシンプルで定番のオリジナルチェア(税込7,560円)。

 そんな折りたたみチェアひと筋のクレイジークリークが、新たな展開をみせるという。

「この秋から、クレイジークリークに腰掛けたときに手の届く範囲1mの便利なギアを発売しようと思っています!」

 カラーリングには鮮やかなタイダイカラーを中心に、クレイジークリークらしい色彩を採用するという。

 百聞は一座にしかず……そう言いたくなる、クレイジークリークに包まれたときのあの幸福感、それをどう説明すればいいだろう。

 世界一おいしいビールは、どこで飲めるのか……。

 その答えは、クレイジークリークに腰掛けた者だけが知る、特権なのかもしれない。

 

【写真=伊藤 郁、エイアンドエフ 】

 


 
 
ライター
麻生弘毅

1973年生まれ、フリーランスライター。カヤックやバックパッキングなどによる、長い旅が好き。著書に北極圏の泥酔紀行『マッケンジー彷徨』(枻出版社)がある。

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