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【A&F ALL STORIES】老舗アウトドアショップ「カーカムス」の本業はテントメーカー!

(2018.11.15)

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カーカムスのテントで過ごす特別なひととき。気の合う仲間たちと焚き火を囲んで過ごす静かな夜には、ナチュラルなコットンテントがよく似合う。
 アメリカのスキーリゾートとして有名なユタ州ソルトレイクシティ。2002年の冬季オリンピックの開催地として知っている人も多いのではないだろうか。そんなソルトレイクシティの中心部から少し車で走ったところに、カーカムス(Kirkham's)というアウトドアショップがある。そう、今回紹介するアメリカンテントメーカー・カーカムスが運営するアウトドアショップだ。

「ORショーがリノからソルトレイクに移ってすぐぐらいだから、20年ぐらい前かな。ウェイン(バックパックブランド「グレゴリー」の創立者)やイーグルクリークの社長、スティーブ・ベーカーからいい店だよって紹介されたのがカーカムスだった」

 A&F会長の赤津孝夫さんは、カーカムスに出会ったきっかけをそう振りかえった。REIやスポーツマンズウェアハウスなど大型量販店が台頭しはじめた当時のアメリカにおいて、地域密着型の専門個人店ながら広さ売上では全米No.1だったというから、その人気ぶりがうかがえる。

「店の2階に見たことがないクラシックなデザインのテントがずらっと並んでて、よく見るとカーカムスって書いてあるから、そのときはオリジナルのテントを作ってるんだなと思ったぐらいだった。キャンバステントは学生時代に使っていたからケアが大変なのは知っていた。あのころは生地の質がよくなかったから目が詰まっておらず、雨漏りしたんだよ。だからルーフに新聞紙を被せたりしてさ(笑)。触れると毛細血管現象で浸みてきたり……キャンバスはそういうイメージが強かったから日本ではむずかしいだろうとスルーしていたんです」

 折からのライト&ファストの流れもあり、コットンテントにあまり興味をもっていなかったという赤津会長。しかし10年ほど前にふと使ってみたいと思い、ひと張り購入してみた。
2本脚で本体を支え、ルーフをがっちりと確保する独特の構造。余計なポールが組み込まれることもなく、室内空間は広く快適。のんびりと1週間ぐらいの長期キャンプに使いたいテントだ。
「バックパッキングとは別に、コットを使い、焚き火を起こしてゆったりと快適にキャンプを楽しみたいときもあるじゃない。そんな気分にぴったりだと思ったんだよね。実際使ってみて、その居住性は抜群だったよ。コットンは通気してくれるから家のリビングのように快適でくつろげるし、なんといってもルーフを形作るスプリングバーのギミックがギアらしくて気に入ったよね」

 昔とは比べものにならない高品質なキャンバスにも感心した赤津会長は、さっそく日本での展開のオファーをもちかけるものの、断られてしまう。

「カーカムスは卸しをしていなかったから、輸出そのものを考えていなかったんだよ。でも、イベントや雑誌の取材でわたしが使っているうちに、本国へ直接問い合わせる人が多くなって、逆にA&Fでやって欲しい、ということになった。今の社長は2代目で年齢が近いのと、鉱石集めという同じ趣味があったことなどから話が盛り上がって、すぐ信頼関係が築けたよ。アウトドアズマンはさ、実際会うとすぐ仲良くなれる。メールだとこうはいかないよね」

 こだわりを持つ作り手とその思いとともに他国で商品を売る側、文字だけでは理解できなくてもひとたび会えば意気投合する。いまやスマホひとつで欲しいものが翌日に届くが、現在でもカーカムスのテントを買えるのはソルトレイクシティの店舗とA&Fだけだそうだ。

「いちばんのキモは“スプリングバー”。テコの原理を使って、ものすごいテンションで生地を張り、ルーフを作る。普通、ロッジ型のテントって4本脚だけど、カーカムスはルーフをびっちり張って2本の脚で支える。この2本脚というのが理に適っているんだよ。この手のテントは風に弱いけど、2本脚のお陰で壊れないんだ。四隅が生地だから受け流しくれる。本国のサイトに台風のなか撮影された動画があるんだけど、すごいんだよ! 壊れない!! 普通の4本脚なら間違いなく折れる」

■Springbor Tent in High Winds

 風速30~40mの風のなかで撮影されたという動画は、テント自体はグニャグニャ揺れるものの決して壊れず、みごとに強風を受け流しているさまが映し出されていた。じつはエベレストのキャンプ2のベーステントにも採用されたことがあるというから驚きだ。

「生地へのこだわりも深く、Sunforgerという処理がされているんだけど、生地へのコーディングではなく、糸の段階で溶剤を浸透させてるから通気を損なうことがなく、高い撥水性が持続する。そしてキャンバスの大敵でもあるカビも防いでくれるんです」

 カーカムスの前身は店舗などのオーニングを作っていた会社だった。常設となるオーニングは雨風、カビや汚れに対しても強いことが求められ、そこから生み出されたのがスプリングバーとSunforgerを施した生地であった。それをキャンピングテントに落とし込むことで、カーカムスが生まれた。そう、本業はテント屋でそのテントを使ったキャンプシーンにおススメのものを集めたのが、カーカムスという店舗なのだ。
店舗の裏にある自社工場でミシンを踏む縫子役のおばあちゃん。先代の社長時代から勤めている人も少なくない。カーカムスのテントが受注生産なのは、こうやってひとつずつをていねいに仕上げているから。
「お店の裏に工場があり、昔から働いているおじいちゃん、おばあちゃんの縫子さんが4、5人いるんだけど、ひとりでも体調が悪くなると生産ラインが遅れちゃうし、最悪、止まってしまうんだよ」

 生産が安定しない状況で、カーカムスのテントは受注生産となっており、昨年はA&Fでも納期が遅れたことがあったそうだ。

「これを危惧したショップスタッフが機転を利かせ、生み出されたのが、この8月から日本でも展開が始まった“ハイラインシリーズ”。じつはこのショップスタッフは同じソルトレイクのブランド“キャンプシェフ”のオーナーの娘さんで、カーカムスでアルバイトしてたんだ」

 キャンプシェフも以前A&Fが取り扱っていたソルトレイクのブランドというのも、何かの縁を感じさせる。

「本国では2015年にハイラインシリーズは展開が始まっているんだけど、中国製という部分が引っ掛かっていて、しばらく日本での展開を見送っていた。去年、実際に会って話をしたら、単純に安定供給できる廉価版を作ったわけではなく、しっかりとしたモノづくりをしているのがわかったので、日本での展開を始めたんだ」
2本脚がシンボルスタイルのカーカムステント。左が「スプリングバーテント アウトフィッター3(税込102,600円)、右が中国で生産されている「ハイライン6 スプリングバーテント(税込149,040円)
 中国にある既存の生地を使うのではなく、「ハーディーダック」というオリジナルの生地を現地工場に作ってもらっている。独自の撥水加工もされており、クオリティーは保たれている。

「来年はハイラインシリーズのテント展開が広がり、アクセサリーも追加される。これからますます楽しみなブランドだね」

 高齢化した縫子さんに無理強いするのでなく、知恵を出し合い確かなクオリティーを保ちながら、安定した供給を実現したカーカムス。クラシカルなデザインとカラーリングが特徴的ではあるが、目には見えないこだわり抜いたクオリティーと裏付けされた機能性を併せ持つアメリカンキャンピングテント、1泊2日などではなく、ゆったりとした時間を楽しむキャンプに連れ出したいテントだ。
 
 
  


 
 
ライター
koichi ushida

某アウトドア企業のPRを経てフリーランスに転身。アウトドア専門のアタッシュドプレスを行なう傍らコーディネートや執筆、イベントもこなす“アウトドアの何でも屋さん”。

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