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【北の漢の山道具】Vol.2 バックカントリーの強い味方。あたたかすぎず、寒すぎない、インサレーションパンツがちょうどいい!「モンベル/U.L.サーマラップ ニーロングパンツ」
2020.04.15 Wed
さとう アウトドアショップバイヤー
バックカントリースキーヤー、スノーボーダーのレイヤリング。ググってみると、トップスのレイヤリング情報はたくさんあるが、意外にでてこないのがパンツのレイヤリングだ。北のパウダージャンキーたちの間ではいつも、その話題がつきない。
雪山では、それぞれのスタイルがありレイヤリングもさまざまだ。気温や発汗量によって、なにをチョイスするか悩みどころでレイヤリングの選択肢は非常に広い。
おおまかに分けるとパンツのレイヤリングはふたつのスタイルに分かれる。
ひとつは男気全開のアスリートスタイル! タイツやフリースパンツにハードシェルパンツという2レイヤーのスタイル。大量発汗の登りではいちばん理にかなっているスタイルだ。
もうひとつは、オーソドックスなスタイルでタイツに化繊ダウンのパンツ、ハードシェルのパンツという3レイヤーのスタイルだ。
超絶なスピードでハイクアップし何回も登り返す滑りメインの人は、心拍数も高く、あつくなりやすいので2レイヤーのスタイルがいい。冬山登山を楽しみながらゆっくりと登り、下山の手段として滑るという、目的が冬山歩きという人は3レイヤーのスタイルが向いている。
2レイヤーは、ガシガシ登って体温が上がればパンツのベンチレーションを全開にできて快適だが、休憩をはさむとすぐに体を冷やされてしまう。動いているときはあつくても、冬山の気温は、標高1,500mほどになれば殺意あふれるマイナス20度近く。そのうえ森林限界を超えると風が強く、体感温度はさらに低くなり、ハードに動いていないと寒い。立ち止まるたびに下半身から冷気を感じてしまい、2レイヤーでは心もとないシーンも多々ある。
寒がりの僕はいつも、2レイヤーのときには精神的に「なんかもう一枚はきたい」というヘタレな衝動にかられてしまう。ペースが遅いからだ。食事等の長い休憩時も雪の上に座るとなるとインフレータブルのマットがないとお尻から冷やされ体は芯から凍えてしまう。
なので僕はタイツ、化繊ダウンの膝丈パンツ、ゴアテックス(GORE-TEX)のビブパンツという3レイヤーが多い。
ただ経験上、3レイヤーにした場合よほど気温が低くない限り、登りのシーンではあつさを感じることが多い。以前はCW-XやC3FIT等のサポートタイツを履いていたが、保温性のない高機能タイツであっても化繊ダウンパンツをはくとやはりあついのだ。
左側:ガシガシ登る、アスリート系ハイカーに多いのが高機能タイツ。保温性能はないにしろ、3レイヤーにすると暑いことが多い。
右側:大定番のメリノウールのタイツ。ライトウェイトや化繊のタイツにかえることで細かい温度調整ができる。
その理由として、各メーカーさまざまな化繊ダウンパンツを発売しているが、大抵は保温性能を重視するがゆえに中綿の量が多い。要するにほとんどのものがあたたかすぎる。
おまけに表地は、ベンチレーションを開けたときに水や風から守ることを想定して撥水、防風の素材を採用しているものが多く、意外と抜けが悪い。運動量が少ないアクティビティでは使えるが、ハイクアップの運動量ではオーバーヒートしてしまいがちだ。
化繊ダウンパンツは、バックカントリーのユーザーであればなにかしら必ず一枚は持っているであろうアイテムであり、その日の気温に合わせて2レイヤー、3レイヤーを使い分けている。両サイドがフルジップになっており、ブーツを履いたまま着脱することを前提につくられているものもある。
だが、標高が上がるにつれて気温の変化もあり、着続けていられるちょうどいいパンツはなかなか見つけられていないのが現状だ。化繊ダウンパンツは利点もあるが、体があたたまってからの温度調整がむずかしいのが難点である。
そこでおすすめなのがモンベルの「U.L.サーマラップ ニーロングパンツ」だ。最大の特徴はその薄さである。
心配になるほどの少ない量の中綿を、薄い透湿性に優れたフィルムでサンドしていてとても軽い。この3層構造こそが履いたとき、快適に保温ができる秘密なのだ。
いつもだと、あつくなってパンツのベンチレーションを開けても、中のダウンパンツの防風性能が邪魔をして風が抜ける感覚、涼しくなる感覚はさほどない。だが、このパンツはスーッと風が抜けて内部の温度がみるみる下がるのを実感できる。このパンツを履いているときはいつもよりベンチレーションの開閉が多い気がする。それくらい温度調整を細かく行なえるのだ。
汗の処理も得意であり、急登でイッキに体温が上がって汗が吹き出しても、中綿が濡れたなと感じたことはない。汗はいつの間にかベンチレーションから抜けていきパンツ内はドライ。化繊綿自体にもそれほどあつさは感じず、快適なハイクアップであり、気がつけば「そういえば今日はあつくないな」という感じ。
さすがは日本が誇るアウトドアの雄、モンベル。無骨さの中にキラリと光る機能美。まったく無駄のないまさに質実剛健の渋い一品だ。バックカントリーのハイクアップ専用につくられたのかと思ってしまうほどハイクアップにマッチしたスペック。僕の中でどストライクな一品! もはや定番。気づけばまわりの仲間は全員おそろいという、恥ずかしいけど最高のアイテムだ!!
それでいて、立ち止まったり休憩のシーンでは熱を逃がさずに保温をしてくれる。不思議と静的保温時には中綿にあたたまった空気をため込んでいるのを体感できる。雪面に座り込んでも雪の冷たさは感じず、あたたかい。
中綿はモンベルの化繊綿「エクセロフト」という素材。職業柄、プリマロフトや各メーカーオリジナルの化繊綿のウェアもたくさん着てきたが、高い保温力のものが多い。それらに比べるとエクセロフトは保温力がやわらかく、運動時には「ほのかにあたたかい」「じんわりあたたかい」というイメージだ。2レイヤーより少しあたたかく、いつもの3レイヤーほどはあつくならない、という感じであろうか。運動量があがってもヒートアップしにくい。
気がきいているのはスキーヤー、スノーボーダーにはうれしいヒザ丈であり、ブーツやタイツに干渉しない長さということ。フルレングスも販売されているが結局ハイソックスを履くのでヒザ丈で充分だろう。
トイレのときに便利な前面ジッパーで、さらに両サイドのポケットもしっかりとジッパーになっており貴重品の携帯にも安心だ。
もちろん、ストップアンドゴーのはげしいゲレンデでも大活躍でしっかりと保温が可能。キーンと冷えたナイターでのリフトもあたたかく快適。一本滑ってきて体があたたまった状態でリフトへ乗ると、通常であれば乗っている最中に風に吹かれ体が冷えてしまうが、次のランディングまでそのまま体を保温してくれる。低気温のゲレンデではその保温性能を存分に発揮してくれるだろう。
価格は税込みで9,350円という安めの価格設定。アウトドアブランドは高額なものが多く、買うのを躊躇してしまうことも多いが、この価格であれば試しで手を出してみてもいい価格だ。
僕は気に入ってしまって家でも履いている。意外と、素肌に直接はいても、内側の素材はべとつかず蒸れずにじんわりとあたたかい。通気性能が優秀な証拠だ。寒い北国の家には最適な家着でもある。
すでに定番の貫禄があり愛用している人も多い、U.L.サーマラップ ニーロングパンツ。過酷な状況のフィールドを遊ぶバックカントリーでは、堅実な機能性にはいつも助けられ、いまとなっては頼もしい相棒となった。
北海道の冬山には絶対におすすめだ!
モンベル/U.L.サーマラップ ニーロングパンツ
平均重量:165g
サイズ:XS、S、M、L、XL(男女兼用)
カラー:ブラック(BK)、トープ(TAUPE)
素材:表地/15デニール・バリスティック®エアライトナイロン・リップストップ[超耐久撥水加工] 中綿/ストレッチ エクセロフト®[ポリエステル]
収納サイズ:∅12×19㎝
価格:9,350円(税込)