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【ミステリーランチ】Paul Poynter×Terraframe 3-ZIP 50 ──アーボリストとしての矜持と夢。そしてプロの道具

2020.07.22 Wed

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森山憲一 登山ライター

樹上が仕事場の ”アーボリスト”

 先端に重りの付いた細いひもを、慣れた手つきで振り子のように振る。

「シュパッ!」と放り投げられた重りは、10mほど上の木の枝の間に狙いどおりに吸い込まれていった。まるで手練れの釣り師のキャスティングを見ているようだ。

 ひもに太いロープを連結して引き上げると、いつの間にか準備が整っていた。特殊な器具をロープに取り付け、樹上めがけて登っていく。

 その姿はなんとも印象的なものだった。空中で自転車をこぐように脚を交互に上下させると、音もなく体がスーッと上昇していく。重力を感じさせない不思議な動きは、マイケル・ジャクソンのダンスを連想させた。

 瞬く間にはるか樹上にポジショニング。じつは彼にとって、これまでの作業は通勤にすぎない。いわば、オフィスワーカーがデスクに着席した状態。彼の仕事はここから始まるのだ。

 彼の名はポール・ポインター。日本ではまだ数少ないアーボリストのひとりである。
作業は4人チームで。10m以上にもなる樹上が彼らの仕事場だ。

ロンドンのファッションデザイナーから転身

 アーボリスト(Arborist)とは、日本語で「樹護士」などと訳される。ひとことで言えば、樹木のメンテナンスをする仕事である。その意味では庭師などと似ている部分もあるのだが、ちがいは巨木・大木を対象にしていること。そのため、高所作業員的な特殊な技術が必要とされるところが大きな特徴だ。

「初めてこの仕事を知ったときに、直感的に『カッコいい!』と感じたんです。自然のなかで、いろんな専門道具を使いこなして、ふつうの人にはできない仕事をしている。その職人的な姿にビビッときてしまったんですよね」

 ポインターさんがこの仕事(海外では「アーボリカルチャー」と称される)を始めたのは、故郷イギリスでのこと。それまではロンドンでファッションデザインの仕事をしていたが、子どもができたことをきっかけに、都市生活を離れて地方への移住を決意。地方でできる仕事を探しているときにアーボリカルチャーに出会った。

 イギリス南西部のウェールズ地方で7年間アーボリストとしての実務経験を積んだポインターさんは、2011年、今度は日本への移住を決める。

「妻が日本人なので、子どもたちには両親の故郷を両方知ってほしかったんです。しばらくイギリスで暮らしたから、今度は日本の番かなと」

大がかりな樹上作業を行なうわりに、道具は驚くほどコンパクトだ。ほとんどの場合、バックパックひとつに収まるため、どんな場所にも歩いてアプローチできる。
イギリス仕込みのワザが新たな可能性を開く

 再び職探しの日々が始まった。ところが日本では、アーボリカルチャーという仕事はほとんど認知されておらず、働き口も見つからない。そんなときに、マルイチという会社の社長・岩佐治樹氏と出会う。岩佐氏は、ポインターさんのアーボリストとしての技術に新たな可能性を見出した。

 マルイチは、鉄道沿線の環境修復やメンテナンスをおもな事業としている会社。列車の安全運行を守るために沿線樹木の剪定・伐採なども行なっているが、旧来の方法では、列車が通らない深夜の限られた時間に行なうほかなく、また、必要な機械や道具も大がかりになるため、作業ができる場所にも制限があった。

 いっぽう、ポインターさんの技術は、必要な道具はバックパックに入れて運べるほどコンパクトで、困難な現場にも容易にアプローチ可能だ。そしてロープを駆使することで、切った木を一切地上に落とすことなく、たとえ列車が通行している時間帯でさえ、伐採作業が可能になる。

 マルイチはポインターさんを社員として迎え、二人三脚でこの特殊伐採技術をつくり上げた。鉄道の沿線作業は、小さなミスが大事故につながる可能性もあるため、100%の安全性が要求される仕事だ。そのむずかしいミッションをこれまで無事故で完遂させてきた。そんなことができる会社は、国内にマルイチをのぞいてほとんどない。

 イギリスで身につけたアーボリストとしての技術が、日本で大きな価値をもつようになったのだ。

樹上で伐採作業を行なうポインターさん。幹にロープを結んであるところに注目。これによって、切った幹を地上に落とすことなく伐採が可能になる。ロープを張る本数や方向にも細かなノウハウがある。(写真提供:ポール・ポインター)

アーボリストとしての矜恃と夢

「この仕事は本当におもしろいです。ツリークライミングの技術や道具はいま、世界中で開発されていて、最新のものをキャッチアップしながら、できることを増やしていくことは追求のしがいがあります。それに、ただ樹上にいるだけで気持ちがいいんです。爽快な気分になれるんですよね」

 冒頭に書いたように、その仕事ぶりはまさに手練れの職人のものだ。さまざまな器具を自在に扱い、複雑なロープシステムをあっという間に構築していく。道具は、ツリークライミング専門ブランドのものが多いが、それに納得がいかなければカスタムしたり自作したりもする。

 技術と道具にこだわり、その研究に余念がないところは、消防士や山岳救助隊などにも似ている。プロの技、プロの道具という感じで、実際、そうした職人的な部分にこの仕事の魅力を感じている部分もあるらしい。「ヘビーデューティな道具が好きなんです。いかにもプロって感じがするでしょ」とポインターさんは笑う。

1977年、イギリス・ヨークシャー生まれ。現在は長野県松本市に居を構え、妻と娘ふたりの4人で暮らす。会社では役員を務め、作業現場でも指揮をとる立場。日本語が堪能なうえに明るい性格で、チームワークも抜群だ。
 ポインターさんには夢がある。それは、この日本で、アーボリストという存在を根付かせること。

 日本では、樹木のメンテナンスというと、人々がイメージするものは林業としての伐採。そしてレクリエーションとしてのツリークライミングも徐々に認知されてきている。いっぽう、イギリスやアメリカでは、そうしたものすべてを含む概念として、アーボリカルチャーという仕事が成り立っているのだという。

 その専門家たるアーボリストには、ロープワークや伐採の技術だけでなく、樹木の種類や生態にも通じていて、トータルで樹のケアができるノウハウが求められる。イギリスでは “Tree Surgery”(樹木医)という言葉でも知られているのだという。

「樹木のことだったら、この人に頼めばなんとかしてくれる」——アーボリストが日本でもそんな存在になることがポインターさんの夢だ。

「ミステリーランチはプロの道具」
ポインターさんのバックパックの中身。ロープやハーネス、登降器やノコギリなど。このほかに、作業の内容によってウインチやチェーンソーなどが加わる。
 ポインターさんが現場までのアプローチに使っているのが《テラフレーム 3-ジップ50》。もともとポインターさんは森林消防隊用にデザインされた《ホット3》というモデルを使っていたが、樹上作業には、バックパックに入れにくいチェーンソーやウインチなどの道具も必要とする。そこでテラフレームのオーバーロード機能が役立つというわけだ。

「まるで背負子。こんなパッキングができるバックパックはほかにありませんからね。これこそプロ向きだと思うんです」

 もうひとつ、3ジップシステムもお気に入りのポイントだという。

「大きく開いて、中に入れた道具がすぐ取り出せるでしょう。これがいいんです。ふつうのパックだと、中をガサガサあさって荷物を探すことになるんですが、けっこうストレスなんですよね。ぼくらみたいにいろいろな道具を持ち歩いて、必要なときにすぐに取り出したい人には、3ジップはうってつけのアイデアです」

 がっしりとつくられていて丈夫なところも、ミステリーランチを選ぶ理由のひとつだ。重荷を入れ、毎日のように使い、手荒に扱うため、「壊れにくい」というところはもっとも重要なポイントかもしれない。

「ミステリーランチが好きなのはそこです。まさにヘビーデューティ。”プロの道具” って感じがします」
ガバッと大きく開く「3ジップシステム」もお気に入り。作業現場で、道具の出し入れがノーストレスになるのだとか。

  

Paul Poynter使用モデル/テラフレーム 3-ZIP 50

テラフレーム 3-ジップ 50
本体価格:46,000円(税抜) サイズ:S、M、L 容量:50ℓ 重量:2.3kg 素材:330D Lite Plus CORDURA® カラー:Loden、Black




Paul Poynter
1977年、イギリスはヨークシャーの生まれ。現在は長野県松本市に居を構え、妻と娘ふたりの4人暮らし。特殊伐採をおもな事業とする株式会社マルイチでは役員を務め、作業現場でも指揮をとる立場。アーボリストとして一流の腕を振る。日本語も堪能。

https://www.instagram.com/woodenhand/?hl=ja

■アーボリスト・Paul Poynter ミステリーランチの魅力を語る


(構成・文=森山憲一 写真=岡野朋之 取材協力=株式会社マルイチ)

ミステリーランチの特設サイトで詳しく見る


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