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テントは張った状態で自然に乾燥! アライテントにテントの正しい乾燥方法を聞いてみた。

2022.06.24 Fri

林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

 久しぶりにキャンプに出かけたら、けっこう勘が狂っていた。雨は降らなくてもテントは夜露で濡れるものだとか、草地に張ったテントは本体が結構湿気ってしまうものだとか、そういう細かいところがヌケてしまっていたのだ。オマケに出発を目前にしながらも空は曇っており、空気は湿度を含んで重い。結局、ちょっと湿った状態のテントを撤収してきてしまった。

 そのまましまっておくとどんな匂いになるのかは、過去に経験済みだ。アレだけは避けたいとの思いから、ここは完全乾燥を目指すでしょ!とばかりに思いついたのが布団乾燥機の応用だ。テントのベンチレーターにあのホースを突っ込んで稼働させれせば、パリッとキレイに乾くんじゃね? おお、これはまさにグッドアイデアではないかと思ったが、思いつきは往々にして素人の浅知恵とニア・イコールであることも過去に経験済みなのだ。

 そこで裏を取りましょう、ということで使用テントの製造元であるアライテントに取材して、正しいテントの乾燥方法を教えていただいた。

乾燥の前に、テントの汚れを固く絞った雑巾で拭き取る。特に地面に接する底部分の泥汚れはていねいに。テント内のゴミなどは、フレームを入れる前にテント本体をクルッと裏返してバサバサと叩いてしまうのが手っ取り早い。

ペグにかけるループの結び目が緩んでいることがある。こうした手入れの際に、細かい部分までチェックしておくことも重要。

出入り口のファスナーはスムースに動くか、歯の欠けがないか、なども確かめておく。ネット部分に穴が空いていないか、なども忘れずに。

 

1)乾燥は設営状態で
「まずテントは張った状態で、最も適切な力がかかるように設計されています。張っていない状態で乾燥させると部分的に縮んだり、シワが寄ったりすることがあります。乾燥の際は正しく張った状態で、各部への張力を保持していただくのがよいと思います」

2)自然乾燥が大原則
「テントにはさまざまな部品が使われています。テント本体だけでなくグラウンドシート、スリーブやバイアステープ、シームテープなどです。これらのパーツは乾いていく過程で収縮率が違っていますが、温風乾燥はこうした部材の収縮率の差を顕著にしてしまいます。また温風による温度上昇が、接着部分の剥がれや部材の劣化につながってしまう可能性があります。
 テントのアッパー生地は速乾性を備えたナイロンでできていることが多く、しばらく風に当てておくだけでじゅうぶんに乾いてくれます。温風ではなく、温度にムラの出にくい自然乾燥をお願いしています」

3)脱水乾燥は避ける
「ドラム式の乾燥機などに入れるのはぜひとも避けていただきたいです。先程申し上げました、正しいテンションが掛かっていないこと、部材に想定以上の熱が加わることなどがその理由です。回転している時点で、不規則な力もかかってしまいますのでやめていただいた方がいいですね」

4)濡れたまま物干しにかけるのは厳禁
「もうひとつ、防水透湿メンブレンを使ったテントを、びしょびしょに濡れた状態で物干しにかけるのはやめたほうが良いですね。ごく稀にですが、乾いていく過程で生地とメンブレンとの収縮率の違いから、メンブレンがミミズ腫れのような形で部分的に剥離してしまうことがあります。メンブレンを使っていないテントでも、濡れて重くなったテントを物干しにかけると、伸びが生じることがあります。やはりテントは張った状態が本来の形。びしょびしょになっていたとしても、乾かす時には張っていただくのが間違いはないと思います」

 

 というわけで、温風乾燥は避けるべきだったのだ。一瞬でも機械の力に惹かれたオレのバカ。そして、正しく教えてくださったアライテントの福永さん、ありがとうございます。おかげでお気に入りのテントを傷めずにすみました。

危なく布団乾燥機で、愛用の「トレックライズ2DXフライ」をメタメタにしてしまうところだった。教わったお話を元に、フレームを入れた状態で自然乾燥中。実は前回、ちょっと湿気った状態で収納していたので、テント内にあの匂いがこもっていたのだ。が、それもスッキリとれてサッパリ。乾いてるってスバラシイ!!

 その日、薄日の射すスッキリしない天気ながらも、30分ほど風に当てることでテントはキレイに乾燥。やっぱり道具の扱い方は、その道のプロに聞くべきなのだ。気持ちよくパリッと仕上がったテントを畳みながら、次の旅はどこに行こうかと、すでに心ははやるのだった。

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