- 旅
縦・横断サイクリングならこの回り道── Route 6 「廃線跡でノスタルジック」
2026.02.09 Mon
大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー
「その地域ならでは」を体感し、ロングサイクリングに達成感以上をもたらす「回り道」をご紹介。日本海から瀬戸内をめざすなら、この区間は外せない!
■鉄道遺構もたくさん。片上鉄道の廃線跡を行く
(岡山県美咲町・和気町・備前市)
保存された駅舎も魅力の自転車専用道。
鳥取県の日本海から岡山県の瀬戸内海へは直線距離で約100キロ。中国山地の峠越えはあるものの、週末1泊2日のサイクリングでもなんとか走破できそうだ。あいだには奥津や湯郷など温泉地もある。
吉井川沿いの里山を快走。
その日本海と瀬戸内海をつなぐ自転車旅でおすすめしたいのが片上鉄道の廃線跡。片上鉄道は、岡山県中部にある柵原(やなはら)鉱山から瀬戸内海の片上湾まで硫化鉄鉱石の輸送と旅客営業のために敷設された路線で、1991年7月に廃線。その廃線跡を含めた全長約34キロが「片鉄ロマン街道」という自転車・歩行者専用道になっている。レトロな鉄道遺構と里山を満喫できるルートだ。
旧吉ヶ原駅。車両のなかも見学可。
日本海から瀬戸内海をめざす場合(※この記事の画像は瀬戸内海→日本海方面へ走行時のもの)、片上ロマン街道の起点は吉ヶ原駅跡。「柵原ふれあい公園」として整備され、当時の鉄道車両や駅舎を見学できる。手動式の踏切小屋など、平成以降生まれ世代は見たことがないものも保存されている。
昭和感ある吉ヶ原駅舎は国の登録有形文化財。
手動式の遮断機を操作する踏切小屋。
鉄道路線はアップダウンが少なくなるように敷設されるため、廃線路はじつにサイクリング向きだ。吉ヶ原駅跡からの約10キロは県道や土手沿いの一般的な自転車・歩行者専用道だが、備前塩田駅跡の「塩田の桜並木」あたりからいよいよ廃線路に入る。
戦国時代の城跡がある山並みを流れる吉井川。
ところどころに鉄道時代からの桜並木が残る。春が楽しみ。
風が心地よい樹林を抜けていく。
廃線路は岡山県三大河川の吉井川が刻む谷に沿って進み、トンネルや鉄道信号、踏切跡などの鉄道遺構が次々と現れていく。山裾の並木道にある苦木駅跡や、里山にとけこむ天瀬駅跡などは、ホームも駅舎も良好に保存されていて、休憩スポットにうってつけだ。
天瀬駅跡近くのトンネル。
鉄道信号。
天瀬駅跡も保存状態がいい。
寄り道する余裕があるなら、河本駅跡あたりから田土集落へ向かうヒルクライムがおすすめ。棚田の景観が素晴らしい。河本駅跡から棚田の見晴らしがいい場所まで約3.3キロ、標高差約100メートル。
田土の棚田。
吉井川の渓谷部をぬけると和気町市街。清水駅跡の先で小さな峠を越え、新幹線橋脚下で片鉄ロマン街道は終わる。そのまま南へ道なりに進み、国道旧2号に出たら西へ向かうと旧片上鉄道の起点・片上駅跡だ。輪行派には、近くにJR赤穂線西片上駅がある。すぐ南は瀬戸内海の片上湾。カキ養殖が盛んな海域で、ご当地グルメのカキ入りお好み焼き「カキオコ」がうまいし疲労回復にもうってつけだ。
和気市街、旧片上鉄道の鉄橋が自転車・歩行者専用道に。
旧片上駅跡。ゼロポストと車輪が残るのみ。
カキオコ。カキにしっかり火が入るよう、お店の人が焼く。
もっと瀬戸内海を求めるならさらに約10キロペダルを踏んで日生町をめざし、橋を渡って鹿久居島や頭島へ。鹿久居島はその名の通り鹿が多く人はほとんどいない。大型テーマパークぐらいの面積の頭島には約140世帯が暮らし、傾斜地が多い島のそこかしこで集落が密集している。どちらも瀬戸内らしい風情が残る島だ。