いい山 南会津というところ
2013.05.02 Thu
幕府の直轄領
南山御蔵入
南会津郡といえば、福島県南西部の広大なエリアにまたがる自治体で「郡」としては本州において随一の広さを誇っています。その南会津の中心地が、南会津町にある会津田島の街。会津田島は北方の都市、会津若松から南へと繋がるかつての会津西街道の宿場街で、江戸のむかしからこのエリアの中心地となっています。
会津若松といえば、昨今人気のNHK大河ドラマ『八重の桜』でも注目される会津藩の藩都。いっぽう会津田島といえば、会津藩の南方一帯を占めた「南山御蔵入(みなみやまおくらいり)」といわれる幕府直轄領の田島代官所が置かれた場所です。まったく同じではありませんが、いまの南会津郡の版図に近い範囲が、この御蔵入とされてきたという話です。
これだけ広大なエリアだけに、当時は課せられた年貢の締め付けも相当にあったそうです。苦しんだ農民たちの一揆も一度や二度ではなかったようで、実際に1720年には、南山御蔵入騒動が勃発しています。田島代官所を取り囲んだ農民衆が、江戸表へと直訴に出たという記録も残っています。
たしかに、南会津は貧しかったのです。広いとはいえ山深い地だっただけに、たとえば、越後に広がるような平坦な土地は数少ないのです。穫れる米の量も無限大ではなく、谷筋の狭い場所で細々と稲作が行なわれてきたに過ぎず、人々はむしろ山に入り、日々の暮らしを支え続けてきました。山が人々の生活の中心にあったのです。
その姿は、むかしもいまも変わりません。
東北の名立たる
山が勢揃い
そう、南会津には山がたくさんあります。会津田島のすぐ近くには標高1,636mの七ヶ岳が、さらには南西方向には檜枝岐の村があり、ここは福島を代表する一大登山基地となっています。
会津駒ヶ岳(2,133m)に中門岳(2,060m)、帝釈山(2,060m)に田代山(1,926m)など、知る人ぞ知る花の名山も多いですよね。また、忘れてならないは、尾瀬ヶ原を見下ろす東北地方の最高峰、燧ヶ岳(2,356m)でしょう。どれもこれもみな、檜枝岐からアプローチできる山です。もちろん、日本を代表する景勝地、尾瀬への道もここが起点となっています。
春夏秋冬、フィールドで遊ぶにはとびきりに魅力的なエリアです。トレッキングルートは方々に敷かれ、花の名所は数知れず。秋は全山錦秋に染まり、そして冬には一大バックカントリーエリアにもなります。外から訪れる山好きには、願ってもない別天地でしょう。これが、きらびやかなる南会津のある一面です。
また、別の一面もあります。これだけ山深い地であるだけに、一度、登山道を外れれば、そこにはマタギたちの森がいまだに広がっています。斜面を埋め尽くすブナの原生林、人知れず山上の湿原に咲き乱れる花、花、花。雪融けと同時にやってくる花々の爆発的な競演も、いっせいに染まる新芽の緑も、クマやウサギ、シカが織りなす動物たちの営みも、それを追うマタギたちの姿も、そのすべてが南会津が持つ自然の奥深さの証左でしょう。これが、地に足の付いた南会津のある一面です。
これほどまでに色濃い自然が残されているのは、やはり山深いがゆえであり、厳しい冬があるからに他なりません。南会津は日本有数の豪雪地帯でもあり、山々は半年ほどは雪に埋もれたままとなります。その雪解けがもたらす水こそが、この自然の源なんでしょうね。
水は森の土に沁み入り、木々はそれを吸い上げ、花々はここぞとばかりに葉を広げ、花をつけます。そして、雪解けとともに滔々と流れ出す豊富な水は、土地土地を潤し、麓に暮らす人々の営みをも支え続けています。



























