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世界に向けて、東京から地球環境を考えるイベント「THINK SOUTH FOR THE NEXT」をレポート!

2019.11.21 Thu

北村 哲 アウトドアライター、プランナー

 2019年11月10日(日)に、世界に向けて東京から地球環境を考えるイベント「THINK SOUTH FOR THE NEXT」 が、東京・有楽町にある「東京国際フォーラム」で開催されました。

南極犬ゾリ横断30周年記念 ドキュメンタリー映画「Trans-Antarctica」日本上陸&トークイベント「THINK SOUTH FOR THE NEXT」シンポジウム

 今から30年前の1989年7月27日、 地球上で唯一国境をもたない大陸である南極で、環境と平和を訴えるメッセージ「THINK SOUTH」を胸に、極地探検家のウィル・スティーガー(米国)、医者で冒険家のジャン・ルイ=エチエンヌ(フランス)の2人が発起人となり、米仏露中英日の世界6カ国6名による国際隊が編成されました。

 彼らは、犬ぞりによる初の南極大陸横断の冒険をスタート。12月11日の南極点到達を経て、1990年3月3日に222日間で約4,000マイル(約6,400キロメートル)を踏破し、無事全員がゴール。この偉大な挑戦を成功させました。

 当時は、多数のメディアがその偉業を取り上げると同時に、当時注目され始めた環境問題についても報道しました。

(上)会場には、当時使用されたテントなどが展示されていました。(下)舟津氏が着用していたウェアなど

 今回のイベントの目玉の一つであった、日本初上映にして、最後の上映となった、ドキュメンタリー映画「Trans-Antarctica」は、30年前のこの挑戦を生々しく伝える、すばらしい内容でした。フランスの映像製作チームによって製作されたこのドキュメンタリーは、7ヶ月半におよぶ冒険で、犬ぞり隊の食料補給や南極点通過などのタイミングで撮影班が合流して撮影・編集したものでした。

ドキュメンタリー映画「Trans-Antarctica Expedition」(90分) のトレーラー

 南極点に到着した際に、多国籍の基地のメンバーに歓迎されたものの、当時はまだ冷戦が終わっていなかった時代。基地の規則により(各自が、それぞれの国に対してスパイ行為の可能性がある)電話の使用や長時間の基地内の滞在ができないなどの様子が記録されていました。そして、この国際隊が結成できた特別さを、映像から改めて知ることとなりました。

 また映像中で、ジャン・ルイ氏が「北極点では基地に入れてもらえなかったが、南極点では基地の中に入れてもらえた!」と喜びと感謝の言葉を基地の責任者に言っていたのが、とても印象的でした。

南極大陸横断国際隊のメンバー6名。リーダーは、発起人で極地探検家のウィル・スティーガー(米国)、医者で冒険家のジャン・ルイ=エチエンヌ(フランス)の2人。学者のヴィクター・ボヤルスキー(ロシア)、チン・ダホ(中国)。極地研究家・ガイドのジェフ・サマーズ(英国)。チーム最年少で、当時33歳。憧れの初南極探検だった、舟津圭三(日本)。

1961年に、南極条約が締結された。地球上で唯一国境をもたない大陸である南極で、環境と平和を訴える発起人のウィル・スティーガーとジャン・ルイ=エチエンヌ

冷戦がまだ終わっていなかった時代に結成された国際隊。多国籍の人が協力をしあって、一つの難解なプロジェクトを成功させるという挑戦を成し遂げられることを証明した冒険でもあった。

 人類初の南極大陸横断で、環境保護と世界平和をアピールしてから30年。現在、南極の環境は地球温暖化の影響で彼らが当時犬ぞりで走ったルートのラーセンA棚氷, ラーセンB棚氷は溶けてしまい消滅し、続くラーセンC棚氷も崩壊の危機にあるそうです。つまり、現在は物理的に同じルートは走れないという、衝撃の事実をウィル・スティーガー氏が訴えていました。

ジャン・ルイ氏は、来日してメンバーと一緒に活動していたものの、イベント当日の朝、急な家族の用事で、残念ながら帰国せざるを得なく欠席となってしまいました。

 今回のプロジェクトは、こうした非常に深刻な状態現状をより多くの人に発信し、環境問題とそれを守るための平和について考えるために設立されたものであり、当日会場で「THINK SOUTH FOR THE NEXT 東京宣言2019」が、南極大陸横断国際隊の6名のメンバーと、当時、資金調達、広報など重要な役割を担当していた事務局長のキャシー・デ・モールさんが加わり7名で作成し、このイベントで宣言されました。

「THINK SOUTH FOR THE NEXT 東京宣言2019」の宣言にともない、全文を読み上げる舟津圭三氏

「THINK SOUTH FOR THE NEXT 東京宣言2019」全文

 今回のシンポジウムでは、登壇者のみなさんから、さまざまな印象的な言葉がありました。ウィル・スティーガー氏は、来場者から「今後、自分は目標に向かって、どのように行動して言ったら良いのか?」という質問に対して 「Put your boots on and start walking (ブーツを履いて歩き出せ)」 という、行動することで証明してきた当事者らしい、すばらしいアドバイスをしていました。

来場者との質疑応答に答えるウィル・スティーガー氏(左)。国際隊では、ムードメーカーだったという、ヴィクター・ボヤルスキー氏(右) 遠征時は、朝、目覚まし時計がわりに、1人づつ天気や気温を伝えながら仲間全員を起こしていたそうです。

 「THINK SOUTH FOR THE NEXT 東京宣言2019」を全員で行い、シンポジウムは終了しました。

来日した、南極大陸横断国際隊の5名と事務局長のキャシー氏の6名。

 今回のイベントは、インターネットでライブ配信されていたのですが、そのアーカイブ映像が、ザ・ノース・フェイスのYoutubeチャンネルで配信されています。今回の貴重なイベントの様子やメッセージを、よろしければ、ぜひコチラからご覧いただければと思います。

注)22:05から、イベントの映像がスタート / 25:20から、ウィル・スティガー氏が登壇。南極大陸横断国際隊のメンバーによるトークがスタート。

南極大陸横断国際隊6名のプロフィール(引用:南極犬ぞり横断から30年 環境問題を考える『THINK SOUTH FOR THE NEXT』プロジェクトがスタート

 30年経って、改めてメンバー全員が集結し、東京から宣言された今回のメッセージ。真摯に受け止めて、早急に各自ができることから環境問題に取り組んだり、世界平和について考え行動していきたいものですね。

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