• アクティビティ

縦・横断サイクリングならこの回り道── Route 3「しまなみサイクリングで回り道/その1」

2025.06.29 Sun

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

 その地域ならではを体感し、ロングサイクリングに達成感以上をもたらす「回り道」をご紹介。しまなみ海道からの寄り道で、瀬戸内に来たなら訪れるべき町並みと景観へ、そして船旅も楽しみます。


■「海が玄関」の伝統的港町と神社へ(広島県福山市・尾道市)


本州と四国を結ぶ「しまなみ海道」にないものとは?

 多島美、海の幸、柑橘類やスイーツ……しまなみ海道のサイクリングではいろんな「瀬戸内ならでは」にめぐり会うが、欠けているものがひとつ。古くからの景観を残す港町である。
亀老山展望台からのしまなみ海道。

 現在のように鉄道や高速道路など陸上運送が主役になる前、おそらく千年以上、瀬戸内地方の流通は海路が主役だった。島々の港町にはさまざまな物・人・文化が交錯し、船宿に飯屋、貴人をもてなす邸宅、遊郭、造船所などでじつに賑やかだった。
鞆の浦。

 そんな、日本人が「海の子」だった時代を伝える港町のひとつが鞆の浦。しまなみ海道の本州側玄関・JR尾道駅の南東約25㎞に位置している。少しの回り道の先に、しまなみ海道にはない旅が待っているのだ。
鞆の浦。波止場には、江戸時代の船乗りが目印にした石の常夜灯が。

瀬戸内海の原風景「渡し」も体験、江戸時代からの潮待ち港へ

 鞆の浦へは本州の海岸沿いに行けるのだが、尾道市街は交通量が多く自転車乗りには辛い。おすすめは昔ながらの瀬戸内旅のスタイル「渡し船」だ。
尾道駅近くの渡船。瀬戸内海では渡船が日常の足だ。

 JR尾道駅からのスタートなら、しまなみ海道サイクリングでも利用される駅前渡船で向島に渡り、県道377号を東方面に進んで歌港へ。ここから対岸の戸崎港へフェリー(大人170円、自転車30円/おのみち渡し船株式会社 )に乗るのだが、運行時間は不定。もし港にフェリーがいなければ、めったにない体験ができる。フェリーを呼べるのだ。方法は桟橋入口のボタンを押すだけ。港の赤色回転灯がまわり、対岸にいるフェリーがグオーンと動き始める。
歌港~戸崎港間のフェリー。

 戸崎港(本州)に渡ったら、海沿いに好みの道で鞆の浦へ。途中、阿伏兎観音(8~17時、入場料300円)にはぜひ立ち寄りたい。岬の突端に建つ観音堂で、強い潮流で知られる阿伏兎之瀬戸を見渡している。航海の安全を祈願して985年に創建され、現在の観音堂は1570年に長州藩の藩祖・毛利輝元による建立だとか。歌川広重の浮世絵などにも描かれた景勝地だ。
阿伏兎観音。

 阿伏兎観音から約5㎞で鞆の浦へ。
天然の良港・鞆の浦。

 航海が風と潮と人力が頼りの時代、鞆の浦はよい風と潮の流れを待つ港として栄え、平清盛など幾多の歴史の偉人が訪れている。足利尊氏は一時ここに幕府を移し、毛利元就は城を築いた。現在も鞆の浦に残る、豪商の館や蔵や町屋にいざなう路地を、平賀源内やシーボルト、坂本龍馬も歩いたという。
江戸時代の邸宅がある鞆の浦の目抜き通り。 鞆の浦名物、小魚の干物。「デビラ」などこの地域ならではの干物も。 石灯籠や雁木など、江戸時代からの港湾施設が残る貴重な港だ。

 鞆の浦からしまなみ海道へは、鞆の浦から西へ約10㎞の常石港から歌港または尾道港行フェリー(備後商船 http://bingoshosen.co.jp/)を利用できる(自転車3台までなら高速艇も可)。「旅とは、波にゆられて」だった古の瀬戸内に思いを馳せながら、島々のあいだを行く約1時間の船旅だ。

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

四国の瀬戸内海暮らし。仕事は自然・旅系ライター&フォトグラファーで、生きかたはバックパッカーでリバーランナー。著書はラフティングガイドたちの1年を追った『彼らの激流』(築地書館)。

Keyword

Latest Posts

Pickup Writer

ホーボージュン 全天候型アウトドアライター

菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん ライター、編集者、DJ

森山憲一 登山ライター

高橋庄太郎 山岳/アウトドアライター

森山伸也 アウトドアライター

村石太郎 アウトドアライター/フォトグラファー

森 勝 低山小道具研究家

A-suke BASE CAMP 店長

中島英摩 アウトドアライター

麻生弘毅 ライター

小雀陣二 アウトドアコーディネーター

滝沢守生(タキザー) よろず編集制作請負

宮川 哲 編集者

林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

藤原祥弘 アウトドアライター、編集者

ふくたきともこ アウトドアライター、編集者

北村 哲 アウトドアライター、プランナー

渡辺信吾 アウトドア系野良ライター

Keyword

Ranking

Recommended Posts

# キーワードタグ一覧

Akimama公式ソーシャルアカウント