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太田真三 写真展「飛べないヒコーキ」を心で見ると、見えてくるものとは?

(2019.02.06)

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空を飛ぶ喜びを一度でも味わったものは、
地上に戻っても、眼差しを空に向けたままにしてしまう。
かつて自分がいたあの空に、
いずれは戻りたいと願うのだ。

(レオナルド・ダヴィンチ)

 2月28日から3月20日にかけて、東京と名古屋の2カ所で、写真家・太田真三さんの「飛べないヒコーキ」と題された写真展が開催される。

 写真家の太田真三さんは、長らく小学館写真部に在籍し、週刊誌や月刊誌などを舞台に、アートからランドスケープ、スポーツ、国際紛争など、世界各国を取材撮影してきた写真家だ。また、人物撮影にも定評があり、政治家からアスリートまで、各界の著名人からカメラマンとして指名されることも多く、作家・伊集院静氏とは、20年以上にわたり世界各地を同行取材してきた。

 そんな太田さんが、30年ほど前からカメラを手に日本各地を旅することが多くなった。そこで眼にしたのが「飛べないヒコーキ」たちだった。

 かつて大空を自在に飛び回っていたヒコーキたち。その使命が終わった時からヒコーキの余生が始まる。

 ある者は体中に派手なペンキを塗りたくられ、中古車屋の看板となり、なかには今にも地上に激突するかのように垂直に食堂の屋根に置かれた。またある者は公園の片隅にひっそりと置かれ、最初こそ子どもたちのヒーローとなったが、飛べないそれはすぐに飽きられてしまい、忘れ去られた。

 多くのヒコーキたちを眼にし、考えさせられたのは、なんだか人の余生に似ているのでは・・・という思いだったという。

 空を飛んでみたいという欲求は、ここではないどこかへ行ってみたい、あの高みへと登りたい、という衝動にくらべても、かなり原初的な欲求に違いない。冒険やアウトドアという行為が、知的好奇心の肉体的な発露だとすると、レオナルド・ダヴィンチやライト兄弟は、パイオニアであるとともに偉大なる冒険者であろう。


 また、サン・テグジュペリの『星の王子さま』をはじめ、零戦の開発にあたった堀越二郎をモデルにした映画『風立ちぬ』や豚のパイロットが主人公となった『紅の豚』など、ヒコーキにまつわる文学や映画の名作も数知れない。

 かのライト兄弟は、飛行機に絶対的な安定は求めない、という発想にいたったことで、ヒコーキの発明に成功する。空という広大無辺な不安定のなかで、パイロットが勇気と意志を持って操縦桿を握り、操り、制御することで、初めて安定が生まれ、飛行が可能になる、というのは、まさに人生の歩みそのものではないだろうか。

 私たちがヒコーキに感じるロマンやドラマ、そして、太田さんが感じた「人生にも似たヒコーキ」とは、そんな理由からなのかもしれない。

 日本各地にあるという「飛べないヒコーキ」はあなたの家の近くで、ひっそりと翼を休め、今も再び飛ぶことを夢見ながら、空を見上げているにちがいない。
(写真=太田真三)

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太田真三写真展
飛べないヒコーキ

場所:キャノンギャラリー

銀座:2月28日(木)〜3月6日(水)10:30〜18:30日・祝休
東京都中央区銀座3-9-7(地図) 
03・3524・1860

名古屋:3月14日(木)〜20日(水) 10:00〜18:00日・祝休
名古屋市中区錦 1-11-11 名古屋インターシティ 1F(地図)
052・209・6180

 
 
ライター
滝沢守生(タキザー)

本サイト『Akimama』の配信をはじめ、野外イベントの運営制作を行なう「キャンプよろず相談所」を主宰する株式会社ヨンロクニ代表。学生時代より長年にわたり、国内外で登山活動を展開し、その後、専門出版社である山と溪谷社に入社。『山と溪谷』『Outdoor』『Rock & Snow』などの雑誌編集に携わった後、独立し、現在に至る。

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