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撮影20年の集大成! 大竹英洋、写真集『ノースウッズ 生命を与える大地』が必見なわけ

2020.04.14 Tue

北村 哲

北村 哲 アウトドアライター、プランナー

 2020年2月22日、写真集『ノースウッズ 生命を与える大地』は、リリースされた。この写真集は、北米の「ノースウッズ」と呼ばれている異国の土地を20年もの間、撮影し続けている写真家・大竹英洋の集大成とも言えるものだ。筆者は、大竹さんとは共通の友人の紹介で、だいぶ前に会って以来の友人だ。この写真集の発売と写真展のお知らせをもらい、とてもうれしく思っていた。

 大竹さんは、写真絵本などの著書も多い。近年の活躍はめざましく、2018年、第7回梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞したノンフィクション作品『そして、ぼくは旅に出た。―はじまりの森ノースウッズ』、同じく2018年には、「日経ナショナルジオグラフィック写真賞ネイチャー部門最優秀賞」を受賞している。

 この写真集の発売と同時に、2/21(金)から東京・六本木ミッドタウンにあるフジフイルムスクエア内、富士フイルムフォトサロン東京では、写真展「THE NORTH WOODS」が開催されていた。筆者は、オープン3日目に会場を訪れることができた。迫力満点の大判写真が、ところ狭しと展示されていた会場は、大竹さんが撮影してきたノースウッズの森の生命で溢れていた。

このカナダのマニトバ州で撮影したカラフトフクロウ(英名=Great Gray Owl)の写真「北の森に生きる」は、「日経ナショナルジオグラフィック写真賞2018・ネイチャー部門・最優秀賞」を受賞した。以前の記事は、こちら

 残念ながら、この時すでに新型コロナの影響が出始めており、オープニング記念のスライドトークショーや展示会場でのギャラリートークの中止が発表されていた。そして、スタートして1週間後の2/27(木)についに中止となってしまった。非常に残念ではあったが、止むをえない状況であったのも事実である。この不測の事態が終息し、来年また改めてこの写真展やスライドショーなどが、同じ場所で開催されることをせつに願うばかりだ。

来場者が写真の前で、じっと見入っている後ろ姿を多くみかけた撮影時期は、さまざまな作品たち。この写真集の中でいちばん古い写真はシマリスで、1999年にポジフィルムで撮影したものだそうだ。現在は、高感度に強いデジタルカメラを使用し、高速シャッターも切れるようになったとのこと。すばやい動物たちの動きや水しぶきなどは、まさにその瞬間をとらえている。

 さて、この写真集の私なりのオススメポイントを解説したいと思う。B4変形の比較的大きめの写真集は、全216ページ・183点の写真が収められており、撮影に費やした20年の重みを感じる。

ノースウッズとは、北米大陸の北緯45度から60度にかけて広がる森林地帯の呼称だ。カナダとアメリカにまたがり、見渡す限り高い山脈はなく、針葉樹を主とする原生林と無数の湖が点在している。

 そして、ひとたびページをめくると、初めて見る風景、動物や鳥の生き生きとした姿が次々に飛び込んでくる。心がおどり、次はどんな写真が待ち受けているかと期待をして、どんどんノースウッズの森の姿を追いかけて没頭してしまうだろう。

 さらに、ノースウッズ といえば、カナディアン・カヌー発祥の地。カヌーにキャンプ道具を積み込んで、気に入った湖畔でテントを張って眠る。そんな旅のフィールドが果てしなく広がっているのもこの土地の魅力だ。

写真集には、野生動物だけでなく、カヌーやキャンプ、焚き火など、アウトドア好きならワクワクするような旅の写真が随所に散りばめられている。

カヌーで、湖畔を並行移動しながら生活するという、山が多い日本では想像もしなかったスタイルにも驚かされる。

 ほとんどの写真には撮影した時の状況や、その瞬間の解説をする文集が添えられている。大竹さんに聞くと「ノースウッズ はこれまで日本でほとんど紹介されていない地域なので、キャプションでの追加情報を大切にした」とのこと。そういった、この森や写真のとらえた瞬間のことをより深く理解してもらうための気づかいも、この写真集に引き込まれる理由のひとつだと思う。

写真のキャプションは、「見ればわかることは省き、より写真の意味や背景への理解が深まるよう気をつけた」とのこと

 この写真の数々は、大竹さんが決して通うのには簡単ではないこの地に何度も足を運び、トライアンドエラーを繰り返してきた撮影と情熱の証だ。ナショナルジオグラフィックで活躍する憧れの写真家ジム・ブランデンバーグ氏に弟子入りするために、ほぼ何の手がかりも無く初めてこの地を訪れた時のことなど、自身のことを赤裸々に書いた著書『そして、ぼくは旅に出た。―はじまりの森ノースウッズ』を読んだことがあるならば、大竹さんが20年かけて歩んできた成果に目頭が熱くなるだろう。

特筆すべきは、この写真集の序文!ナントその憧れの写真家ジム・ブランデンバーグ氏がしたためている。それ自体が、この写真集のすばらしさを裏付けている。ジム・ブランデンバーグ氏が称賛していたカリブーの写真。たしかに、出会うのすら難しいと言われているこの動物と、この距離感での撮影は、すばらしい!

 新型コロナの影響で、外出の自粛、書店も閉まっているところが多いでしょう。しかし、この写真集はインターネットや通販で手に入れることができるはず。こんなときだからこそ、自宅でこの大竹さんの写真集や著書を読んで、自然のすばらしさや、あきらめないで取り組む姿勢など、多くのことを吸収していただきたいと思うのです。いつの日か、私もこの森と湖の平地を大竹さんのように、カナディアンカヌーやテントで探索してみたいと思うのでした。

写真家をめざし、20年前に初めて「ノースウッズ」に訪れたときの話 『そして、ぼくは旅に出た。―はじまりの森ノースウッズ』 こちらも写真集と合わせて、是非読んでほしい。大竹さんが、写真家になるべく扉を開くまでの話。ついに復刊された、大竹さんの写真絵本『春をさがして カヌーの旅』(「たくさんのふしぎ」2006年4月号)もオススメです

■プロフィール
大竹英洋(おおたけ ひでひろ)

1975年京都府舞鶴市生まれ。東京都世田谷区育ち。一橋大学社会学部卒業。1999年に北米国の湖水地方「ノースウッズ」をフィールドに野生動物、旅、人々の暮らしを撮影。人間と自然とのつながりを問う作品を制作し、国内外の新聞、雑誌、写真絵本で発表している。主な写真絵本に『ノースウッズの森で』(「たくさんのふしぎ傑作集」)、『春をさがして カヌーの旅』(「たくさんのふしぎ」2006年4月号)、『もりのどうぶつ』(「こどものとも 0.1.2.」2009年12月号)(以上、すべて福音館書店)などがある。また、2011年3月NHK BSの自然ドキュメンタリー番組「ワイルドライフ」に案内人として出演。写真家をめざした経緯とノースウッズへの初めての旅を綴ったノンフィクション『そして、ぼくは旅に出た。――はじまりの森ノースウッズ』で第7回梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。2018年「日経ナショナルジオグラフィック写真賞 ネイチャー部門最優秀賞」受賞。

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◼️大竹英洋写真集 『ノースウッズ 生命を与える大地』(クレヴィス)
価格:2,500円+税
サイズ:B4変形(238×240×17mm)
ページ数:216

< クレヴィスのHPより >
「自然の奥を旅して、その先に見えてくることを伝えたい──」
大竹英洋が20年に渡り取材するノースウッズ。それは北米の北方林、つまり、アメリカとカナダの国境付近から北極圏にかけて広がる地域のこと。世界最大の原生林の一つでもあるこの地には、カリブーやオオカミ、ホッキョクグマなど、様々な野生動物が生息しています。カナダ初の世界複合遺産「ピマチオウィン・アキ」を含む恵みの大地で、旅をつづける写真家の、眼と心に映ったもの……

「賞賛に値する視覚芸術家としてのみごとな成熟──まさしく情熱の一冊だ。」
──序文:ジム・ブランデンバーグ(写真家)

「彼のおかげで、わたしたちの物語にもうひとつの地平が、つけ加えられたのです。」
──寄稿:ソファイア・ラブロースカス(カナダ先住民アニシナベ)

北村 哲

北村 哲 アウトドアライター、プランナー

登山、スノーボード、キャンプ、フェス、旅好きのフリーライター。プランナー/ディレクターとして、アウトドアやスポーツ関連のカタログ、映像、イベント、アーティストコラボ商品などの企画制作も行う。富士山好きで、吉田口の歴史や登山道に詳しい。

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