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【A&F ALL STORIES】テントポールの技術を盛り込んだ、新感覚のアウドドアファニチャー「ヘリノックス」

2018.05.30 Wed

林 拓郎

林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

「今やネットで検索すると、とてもよく似たかたちの椅子がたくさん出てきますよね」

 A&Fの赤津孝夫会長は、現在の意匠を真似た製品の氾濫を嘆きながら、凛とした姿勢でこう続けた。

「しかし、そのルーツはヘリノックス(Helinox)です。あのかたちの椅子は、ヘリノックスがつくり上げました」

 ヘリノックスは2009年に産声をあげた。快適な座り心地の座面を支えるのは特製のアルミポールと、力学的なムダを徹底して削ぎ落とした樹脂製のジョイントだ。

A&Fで取り扱う「ホーム デコ & ビーチ(HOME DECO & BEACH)」と命名されたライン。従来と同じシルエットながら、座面の色をカラフルにしてパッチを革製にするなど、各所にリビングでの使用にもなじむ「家具」としてのデザインが施されている。

「じつはヘリノックスの母体は『DAC』っていうアルミ製テントポールの会社なんです。世界の多くのテントメーカーにさまざまなタイプのアルミポールを供給してきた、トップシェアのアルミポールメーカー。そのDACの社長・ジェイクさんの息子さんであるヤンさんがアイデアを出して、この椅子ができあがりました」

 今までにA&Fで取り扱ってきた商品は、赤津会長の目に留まったものがほとんどだ。展示会や知人の紹介などを通じ、これは! と思ったブランドには積極的に声をかけてきた。

「けれどヘリノックスに関しては逆でした。ヤンさんはDACから独立してヘリノックスを起ち上げたんですが、A&Fのことをとてもよく知っててくれたんです。どんな商品を扱っていて、どんな雰囲気の会社なのか。そうしたことをとてもよく理解したうえで声をかけてくれました。もちろんぼくもDACのことはよく知っていました。うちで扱ってるヒルバーグ(HILLEBERG)にもアルミポールの供給をしてくれています。その分野では、まちがいなく世界のトップブランドですからね」

ヘリノックスの若き社長・ヤン氏。彼のアウトドアセンスが製品づくりには大きな影響を与えている。写真はヘリノックスのメインオフィス。デザインと機能性のバランスがみごとにとれた、アイデアファクトリーだ。

 赤津会長は、DACについて話し始めたら、終わりがないくらいですよと楽しそうに笑う。

 一例を挙げるなら、DACが扱ってるアルミポールはすべて自社生産。なかでも「TH72M」と名付けられたアルミ合金は「グリーン・アノダイズド」と呼ばれる、アルミ酸化皮膜を施すうえで避けて通れなかった高い環境負荷を、限りなくゼロに抑える加工方法でつくり上げられている。

「パーツメーカーが環境に気を使って、ちゃんと実現している。彼らの熱意と技術は本物だと思いましたね」

 このDACの技術力を応用したのがヘリノックスだったのだ。


テントポールには耐久性を向上させるためには「アノダイズド処理」と呼ばれる酸化被膜を生成する工程が欠かせない。しかし、その加工途中において多くの酸性物質を発生させてしまい、環境に大きな負荷をかけていた。DACでは素材だけでなく、加工機械まで自社で独自に開発。酸性物質の発生を徹底して抑え込むことに成功している。世界中を探しても、これほど環境負荷を抑えた酸化皮膜処理はほかにない。故に、その製品は「グリーン・アノダイズド」として高く評価されている。ヘリノックスのアルミパーツは、すべてこの「グリーン・アノダイズド」処理でつくられている。

「それまでにヘリノックスには『アウトドア』というキャンプでの使用を見据えたシリーズがありました。が、2010年頃でしたか、新しいシリーズの展開を考えていたんです。その実現にあたって、A&Fにパートナーとしての申し入れをしてくれたんです」

 ヘリノックスがA&Fの力を借りたいとしたシリーズ。それが「ホームデコ&ビーチ」だった。

 従来の「アウトドア」シリーズは素材も構造も、持ち歩きを前提とした軽さ重視の設計。まさにアウトドア用だった。

「だけど彼らが新しく展開しようとしていたのは、家具としても使えるクォリティの椅子でした。家のなかでも違和感がないよう、素材感とお手入れのしやすさを生かしたコットン風のポリエステル生地を選び、カラーバリエーションも豊富に。ロゴ入りのパッチも革製。収納袋も帆布に真鍮コードロックを使った雰囲気のいいものにしました」

 こうして『アウトドア・ファニチャー』と呼ぶに相応しい、都会的なヘリノックスが誕生した。現在は定番のコンフォートチェアを中心に頭まで寄りかかれるロングバックタイプやロッキングチェアにするパーツ、テーブル、コットなどを展開。ホームデコ&ビーチはリビングに置いてもよくなじむだけでなく、高い質感はアウトドアでも特別の豊かさを演出するアイテムとして受け入れられた。

こうしたシックな色を基調にすることで、落ち着きのあるリビングにもしっくり馴染むものに仕上がった。しかもウッディーなログハウスからモノトーンなマンションまで、その適応幅は驚くほど広い。今や若い層を中心に、重くてかさばり処理に手間がかかるソファではなく、こうしたフットワークの軽いアウトドアファニチャーを選ぶというムーブメントも生まれつつある。

 じつはこの「ホームデコ&ビーチ」に大きな影響を与えたのが、日本のアウトドアカルチャーだ。

「ヘリノックスの社長のヤンさんはまだ34歳かな。若いし、日本にもよく遊びに来てるんです。そこで目にしたのが、街なかのおしゃれなセレクトショップでアウトドア用品を扱ってるっていうことだったんですね。で、ぼくらはそういうところにもお客さんを持っていましたし、A&Fも新宿っていう大きな街中にありながら、アウトドアの商材を扱ってる。街とアウトドアの融合っていうのは、日本のマーケットの大きな特徴なんです」

 まさにヘリノックスのめざす先に、A&Fがあったというわけだ。

「そんな彼らですから感性が鋭い。日本のマーケットにフィットする商品をどんどん提案してくるんです」

 DACという技術力の高いメーカーバックグラウンドに、新しいカルチャーのフレイバーをのせてくる。それがヘリノックスなのだ。

ヘリノックスがペンドルトン(PENDLETON)とコラボした作品。ふたつのブランドの橋渡しをしたのは、他でもないA&Fだった。

「なにしろ素材のアルミポールは自分のところで自由につくれるわけですからね。発想も豊かだし、その開発力は驚くべきものですよ。ですからね、次の展開もかなり刺激的なものになっています」
 
 そう言って、赤津会長は愉快げに笑う。

「何が出てくるかは、まぁお楽しみにしておいてください。来年の春くらいには、お店でご覧いただけるようにしようと思っています」

ミリタリーなカラーと機能を備えた「タクティカルサプライライン」もA&Fが扱っている。

 これまでチェア、テーブル、コットと展開してきたヘリノックスだが、はたして次の一手とは何なのか? 来春を楽しみにしつつも、詳細をつかみ次第Akimamaでお知らせしたい。

(文=林 拓郎 写真=A&F)


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