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サーモ ローグのここがいい! MERRELLの新型ウィンターシューズの、雪上性能を北海道でチェック!

2018.12.25 Tue

林 拓郎 アウトドアライター、フォトグラファー、編集者

 2018年9月に発表された、MERRELLの新しいウィンターブーツ「サーモ ローグ ミッド ゴアテックス(THERMO ROGUE MID GORE-TEX 以下、サーモ ローグ)」。この製品にはヴィブラム社の新型コンパウンド「アークティック グリップ デュラ」が採用されています。ならば、その冬季性能を実踏調査するしかない!というわけで、いざAkimama北海道班の出動です!!

 なんせ、アークティック グリップの新型ですよ。思い起こせば衝撃的なデビューを飾って丸3年。その性能は多くの北海道人に感動を与えてきました。なにしろコンビニでクルマを降りた時も、忘年会帰りの酔っ払って渡る交差点も大丈夫。凍った路面で発揮される安定したグリップ力は、これまでにない安心感を与えてくれたからです。

 そのアークティック グリップの新型ですからね。これは期待をするなという方が無理です。というわけで、Akimama北海道支局では本格的な冬の日を待ち焦がれておりました。

 が、ご存知の通り、今年は雪の訪れが遅くなっています。北海道でもなかなか雪が降らず、その雪上性能を試すまでにひたすら、待ちの日々を重ねてきました。本来なら11月の半ばには雪の降った低山ハイキングや雪板といった雪上アクティビティでその性能を試したかったところですが、カレンダーはもう12月。これ以上レポートを先送りにするわけにはいくまいと踏んで、数日に渡る雪道お散歩テストを実行!したところ、このシューズの良い点がぐぐっと顔を出しました。

 というわけで「サーモ ローグのここがいい TOP 3 + 氷上インプレッション」です。

 

例年なら道の両側は除雪した雪の山、のはずが、今年はすっきりと見通しの良い景色。少ないながらも積もった雪を活かして、アークティック グリップ デュラのお手並み拝見

 

1) 足が勝手にくるくる進む。フラットな道で歩きやすい

 サーモ ローグのアウトソールは、つま先がぐいっと反り上がった形状になっています。その反り上がりがはじまるのは、ちょうど母子球のあたり。すると歩こうとして体重を前にかけただけで、母子球を支点につま先が下がります。その勢いが足の踏み出しをアシストして、くるくると車輪のように足が勝手に前に出ていくという感覚を味わうことになりました。この時点で、サーモ ローグのハイキングシューズとしての性能を匂わせてくれます。

 この反り上がったアウトソールのおかげで、蹴り出しまで雪とソールとは面で接することができます。つまり足運びの最後まで、広い面積で雪面とコンタクト可能というわけです。

  • つま先が反り上がったアウトソールが、足運びにも雪道のグリップにも大きく貢献。この発見は、フラットな路面を長く歩いてこそ気づくものでした
  • こうした圧雪路こそ、サーモ ローグの得意とするところ。アークティック グリップ デュラとアイストレックのコンビネーションで、抜群のグリップ力を発揮してくれます

 歩行中は、かかと→母子球→つま先と、つねに雪面を感じながらしっかりと足を踏み込んでいくことができます。これが功を奏して、雪上の歩行フィーリングは上々。前述のくるくる進む歩行感覚に加えて、スタッドレスタイヤが「キュキュキュッ」と鳴くようなしまった雪では、心地よいグリップ感を楽しみながら歩くことができるほどです。

 履き心地としてアウトソールのコンパウンドの硬さも感じますが、この硬さがラグの雪への突き刺さりの良さも演出しているようです。それなのにソール全体がしなやかに曲がって歩き心地は快適。柔と剛とが適材適所で使い分けられたこのアウトソールこそ、まずはサーモ ローグの一番の魅力といったところでしょうか。

 考えてみれば、雪道を歩くといった時、その雪道とは除雪して踏み固めた圧雪路です。その意味では、圧雪での安定したグリップ感を第一に押し出している点は非常に実用に沿った製品と言えるのではないでしょうか。

 

2)これぞ北国性能「雪ばなれがいい」

 アッパーだけでなく、ソール周りに雪がつきにくい。実はこれ、北国では大切な性能です。雪ばなれの悪い靴は家やお店にたくさんの雪を運んできてしまうため、何かと面倒です。歩いている時も雪ばなれが悪いと冷えや濡れに繋がってしまいます。

 というわけで、新雪の中もぐいぐい歩いてきました。が、ご覧の通りアッパーにはほとんど雪は残っていません。そのまま家に入っても、玄関マットはご覧の通り。ほとんど家の中に雪を連れてこない、おりこうさんです。

  • せっかくですから新雪の中も歩いてみました。ミッドカットなので、パンツの裾さえきちんとかぶせておけば、そうそう雪が入ってくることもありません
  • 雪の中を歩いてもこの通り。アッパーに着いた雪もサラッと落ちてしまうほど。パンツはコットン製なので、雪がつくのは仕方ないですね

 実はこの雪ばなれの良さは、歩行時のグリップの確保にもつながっているようです。圧雪の上を歩いても歩いた跡がしっかり残る状況は、一歩ごとにアウトソールがリフレッシュされていると思っていいくらい。家に入る前に、クルマに乗る前に、ちょっとシューズを叩くだけで雪を落とすことができる。雪ばなれの良さは、スノーアクティビティでの冷えの防止にもつながるはずです。

  • 普通に雪道を歩いても、玄関マットで靴底を拭ってみるとこのくらい。ちなみにスタンダードな長靴だと、このマットが一撃で真っ白になります
  • 雪道を歩いても、トレッドがしっかり残る。それだけ雪づかみがよく、雪ばなれが良いということです

 

3)水濡れに安心、保温性に自信

 北海道には珍しく、12月に入って日最高気温がプラスになる日がありました。クルマに踏み固められていた雪はとけ、タイヤでこね回されて道路はぐっちゃぐちゃ。あちこちで雪解け水が溜まるコンディションはスニーカー厳禁。長靴でないとどうしようもない、という事態を招きました。

  • この日は町じゅう、あらゆるところが水たまり&シャーベット。防水性のない靴ではまったく歩けないくらいでした
  • 横断歩道もこのとおり。とけた雪に轍が残るので、どうにも足元は不安定です

 ですが、サーモ ローグなら平気です。水たまりだろうが、シャーベット状の雪だろうが、ガシガシ踏み越えて進んでいくことができます。気分的にはブルドーザー。そもそもGORE-TEX®で防水性を確保している上、ベロとアッパーがつながっていることで、くるぶしあたりまで水に浸かってもまったく平気。つまりこのシューズは、ちょっとした長靴並みの防水性を備えているというわけです。

 こうした濡れた雪では、ソールだけでなくアッパーからも冷えが伝わってくるものですが、「プリマロフト エアロジェル」が寒さを遮断。以前のアークティック グリップを採用したモアブもそうでしたが、かなり冷え込んだ中でも底冷えしない強力な断熱性を発揮してくれます。

  • プリマロフトのロゴが、強力な保温性と断熱性をアピール。採用されているプリマロフト エアロジェルは、薄いながらもその95%が空気で構成されるという高断熱軽量素材

 雪の上で歩きやすく、温かくてドライ。そして見た目もウィンターブーツ然としていないスマートなフォルム。北国の足元を守るウィンターブーツとしては、かなりハイレベルと言っていいでしょう。

 

■氷上性能はどうだ!?

 日中の最高気温がプラス3℃まで上がって雪がとけた夜。最低気温はマイナス5℃まで下がりました。裏道はクルマの轍がコンクリートのように固まり、主要道路は水分が凍ってツルッツルのブラックアイスバーン。テストにはもってこいの路面状況です。

 とは言え、比較するものがないとよく分からないじゃんね〜〜。というわけで、初期型のモアブ(MOAB FST ICE+)を片足ずつの同時使用。

  • 氷の上に雪が乗ったミックス状態では、両者の実力はほぼ互角。とは言え、アウトソールのラグが路面の凸凹を掴んでいる印象のサーモ ローグに大して、モアブはソール全体がぬめっと追従している印象。タイヤに例えるなら、アークティック グリップ デュラのグリップ感はゴツいオフロードタイヤ、アークティック グリップのフィーリングはスタッドレスタイヤ、といったところでしょうか
  • もっともヤラレやすい、コンビニの傾斜のついた駐車場。クルマから降りた瞬間に足元をすくわれることは珍しくありません。が、こうしたフラットで滑らかな氷については、従来のアークティック グリップの方が安定している印象です

 なにしろモアブに関しては3シーズンに渡ってきっちり履き込み、その氷上性能には絶対の信頼感を置いています。つまりベテラン選手に若手のスパーリングの相手をお願いするようなもの。モアブのアークティック グリップを基準に、アークティック グリップ デュラの氷上性能を計ろうという意地悪なトライです。

 こうして意識的に雪が積もったところを歩いたり、ツルツルに凍ったところを歩いたり。2時間ほど散歩した中で感じたのはサーモ ローグのオールマイティーぶりです。よく締まった圧雪を歩いている限り、サーモ ローグのほうが明らかに雪のつかみがよく、しっかりグリップしてくれます。しかも足運びもラクで軽快。

 雪と氷が混じった路面状況で言えば両者のグリップ力に大きな差は感じられませんでした。が、完全にブラックアイスバーンになったまっ平らな氷の路面では、モアブの方がやや滑りにくい印象です。

 というわけで「アークティック グリップ デュラ」の雪上性能は抜群。氷上性能もかなりハイレベル。プリマロフト エアジェルの保温力とGORE-TEX®の防水性・透湿性、そして深い雪でも気にせず歩けるミッドカットデザインは、厳冬期の北海道を易々と乗り切ることができるでしょう。が、もしも氷の上での使用がメインになるのなら「アークティック グリップ」をオススメします。

 あえて言うなら、「アークティック グリップ デュラ」は雪上向きで氷もイケるタイプ、「アークティック グリップ」は氷が得意な雪もこなせるタイプ。それぞれよく似ているけれど、得意技が微妙に違う。だからこそ、履き分ける楽しみもある、ということなんだと思います。

 あとはこのサーモ ローグで、厳冬期のハイキングと雪板をこなすのみ。サーモ ローグが雪のオールマイティーシューズという実感を、確信に変えることができる日を心待ちにしていたいと思います。

 

サーモ ローグ ミッド ゴアテックスについての詳細はこちらへ
MERRELL
https://www.merrell.jp

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