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【短期集中連載 FUTURELIGHT】第1回 「フューチャーライトのユーザーメリットを考える」

(2019.09.17)

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THE NORTH FACEから新しい素材が登場する。「フューチャーライト(FUTURELIGHT)」はアウトドアウェアでもおなじみの「防水透湿性」に「通気性」を加えた新素材だ。

 

 アウトドアで活動量が上がると体温が上昇して汗をかき始める。あるいは天候や標高の変化によって周囲の気温が上がることで汗をかくこともある。

 ごぞんじの通り、汗はアウトドアアクティビティの大敵だ。汗がウェア内に留まって冷えてしまえば体温は奪われ、体力の消耗につながってしまう。レイヤリングはウェア内に汗を溜め込まないための手法だ。汗をかかないようにウェアの保温力を調整し、かいた汗を効率よく外気に放出することが目的なのだ。

 そのために、各レイヤーには明確な機能が与えられてきた。肌に直接触れるベースレイヤーは肌の汗を吸い上げ、ミッドレイヤーは吸い上げた汗を蒸散させ、アウターは外からの雨や風を遮りながら、蒸気になった汗を放出する。今回のフューチャーライトは、主にこのアウターに使用されるであろう素材だ。

 

■その登場で何が変わるのか?
 フューチャーライト最大の特徴は「通気性」を備えていることだ。

 従来のアウターは外からの雨や風を遮る「防水性」と同時に、蒸気になった汗を外気に放出する「透湿性」を備えていた。この、水は通さないが蒸気だけは通すという特性こそが、ウェア内の快適性を大きく向上させてきた。

 しかし、透湿性は環境に大きく左右されてしまう。たとえば外気の湿度も高い雨の日や、外気自体が多くの湿気を含むことができない極低温の日などでは、ウェア内の湿気が抜けにくくなってしまう。透湿性だけでは熱気や汗ムレを解消することができないケースもあるのだ。

 そうした場合、これまではウェアを脱ぎ着して保温力を調整したり、ベンチレーターをあけて汗ムレを放出することで体温を調整してきた。

 フューチャーライトは防水透湿性に加えて通気性を備えることで、汗のムレや熱気を含んだ空気を直接放出することができるのだ。つまり行動中に運動量が上がったとしても熱気のヌケが良いため、ウェアを脱いだりベンチレーターを開けたりする必要性が小さくなる。また蒸気になった汗は外気の湿度によらずに放出できるため、ヌケが始まるタイミングが早く、不快な暑さを感じにくくなる。

 結果としてフューチャーライトはウェアの脱ぎ着の手間を減らし、汗を抑えるためにゆっくり行動するといった制約を低減させ、一日じゅうずっと着たまま、思い通りのペースで行動することができるようになるというわけだ

 また、これまで以上の快適さを叶えることにもつながるだろう。レインウェアなら雨の中でも、よりムレ感の小さい着心地を実現することができる。バックカントリーウェアなら汗ムレのヌケが良いため、汗冷えのを効果的に防止することができる。フューチャーライトを使ったテントも企画されているが、適度な通気性は結露の防止につながるため、より軽く使い勝手の良いシングルウォールテントが登場することになるだろう。

 通気性によってムレ、という不快要因を大きく低減することができる素材。それがフューチャーライトなのだ。

フューチャーライトが防水透湿通気性を発揮する、メンブレンと呼ばれる中核部の拡大写真がこれだ。従来の防水透湿素材は、気体の水よりも大きいが液体の水よりは小さい穴を設けることで水蒸気だけを通過させたり、水が染み込むことができる素材を利用してウェア内部の水分を外に運び出す、という手法がとられていた。フューチャーライトはこれらとはまったく違っており、ミクロ単位の細い繊維を何層にも何層にも吹き重ねて作られる。これによって、水は圧力をかけなければメンブレンを通過できないので防水性が生まれ、比較的スムースに移動する空気に対しては通気性が発揮される

積み重なった極細繊維によって防水性を発揮する。この発想を叶えたのが、ポリウレタン繊維をごくごく細い状態で射出する「ナノスピニング」という技術。今回のフューチャーライトの中核となるテクノロジーなのだ

 

■フューチャーライトの通気性
 では、その通気性はどのくらいのものなのだろうか?

 それを一概に言うことはできない。というのもフューチャーライトは素材の厚みや密度を調整することで通気性を自由にコントロールすることができるのだ。たとえばトレイルランニング用のジャケットなら通気性を上げ、バックカントリー用のスキーウェアなら通気性を抑えて保温力を重視することができる。

 従来の防水透湿素材は一定の厚みとスペックであるがゆえに、透湿性については表地や裏地の素材によってコントロールしていた。そのことに比べれば、フューチャーライトのスペック設定は非常に動的であり、バリエーションに富んでいる。そのため、通気性を数値として表すことが難しいのだ。

こちらの動画では、フューチャーライトの通気性が非常に分かりやすく表現されている。2本のパイプをそれぞれフューチャーライトと他社製メンブレンで区切り、上半分に水を入れて下半分に空気を送り込む。通気性を備えているフューチャーライトでは細かな泡となって空気た通り抜けていくが、他社製メンブレンはほとんど空気を通していない。こうした通気性を持ちながらも防水性を確立させていることこそ、フューチャーライト最大の特徴だ

 が、目安になる感覚はある。防水透湿素材を使用していないウインドブレイカーを想像していただければ、ほぼ近い感覚だ。風が吹けば風上側は空気の流れを感じることができる。もしも熱気を含んでいれば、その熱気が抜けていくことを感じるだろう。また汗をかいていれば、その汗がスーッと冷やされていくことも体感できるはずだ。

 このように通気性と言っても、コットンの衣類を着ているようなものではない。適度に身体をまもりながら、不快な熱気や汗ムレを抜いていくことができるレベルだ。しかしこのくらいの通気性があれば身体を動かすことでウェア内の空気が動き、それによって適度な換気もおこなわれる。雨の日であっても歩くことで湿気が抜けていき、極低温のバックカントリーでもハイクアップによって汗ムレは外気に押し出される。

 フューチャーライトは新素材だが、従来の防水透湿性のスペックを高めたテクニカルなものではない。むしろごくわずかな通気性を備えることでアウトドアウェアの可能性を広げ、新たな用途を創造させる非常にクリエイティブな素材なのだ。

 だからこそAkimamaではフューチャーライトにスポットを当てていきたいと考えている。まずはこれから2ヶ月に渡って、新しい素材がどういったコンセプトで、どんなプロダクトに採用されるのか。そしてその使い心地はどういったものなのか。それらの動向を追いかけていきたい。

 

取材協力/株式会社ゴールドウイン

 
 
ライター
林 拓郎

スノーボード、スキー、アウトドアの雑誌を中心に活動するフリーライター&フォトグラファー。滑ることが好きすぎて、2014年には北海道に移住。旭岳の麓で爽やかな夏と、深いパウダーの冬を堪能中。

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