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粉雪舞う初冬の立山へ。1000FPダウンを採用したマーモットの「1000レスターダウンパーカー」。

(2019.12.04)

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 アウトドアブランド「マーモット(Marmot)」から、驚くほど軽く、あたたかな「1000レスターダウンパーカー(1000 Rester Down Parka)」が誕生した。中綿には、最高品質を誇る1,000フィルパワー(以下FP)・マザーグースダウンを採用し、ダウンが持つ水濡れに弱いというウィークポイントを克服するための撥水加工ダウン・ディフェンダーを施した。その真価を見極めるべく、アウトドアライターの村石太郎が早冬の北アルプスへと向かった。


 僕たちスキーヤーには、1年に2度の春が訪れる。ひとつめは、いうまでもなく桜の開花とともに訪れる4月の、文字どおりの春である。そして、ふわふわと粉雪が舞いはじめる11月中旬、高峰が白く雪化粧するとともに心の春がやってくる。

 その頃、僕たちの心は桜の開花を待つように、そわそわとして落ち着きがなくなり、降雪のニュースを待ちわびている。本州に住むスキーヤーにとって、もっとも早い時期に天然雪でスキーシーズンをはじめることができるのは、3,000m級の山々に囲まれた北アルプス山中の立山室堂である。

 僕は2020年のスキーシーズンをスタートさせるべく、11月の立山室堂へと向かった。同時に、米国のアウトドアブランド「マーモット」から今季発売になったばかりの「1000レスターダウンパーカー」の真価を確かめようとやってきた。製品名にあるように、このジャケットには驚異的な品質を誇る1,000フィルパワーのマザーグースダウンを採用している。

 天然素材ダウンには、軽量ながら保温性にすぐれ、コンパクトに収納できるという利点があるけれど、汗や雨などで濡れてしまうと保温性をほとんど失ってしまうウィークポイントがあることでも知られている。だが、この1000レスターダウンパーカーには、独自の撥水加工ダウン・ディフェンダーを施し、この短所を克服しているのだ。

立山黒部アルペンルートの黒部ダム駅のトンネルを歩く。ここから標高2,400mの立山室堂までは、ダムのうえを歩いたのちにロープウェイとケーブルカー、最後にトローリーバスと乗り継いでいく。

 立山室堂までは、立山黒部アルペンルートの長野県側の玄関口、扇沢から電気バスやロープウェイ、ケーブルカーを乗り継いで、最後にトローリーバスに揺られて向かった。終点の室堂駅ターミナルに到着すると、周囲には白く雪化粧を始めた山々の景色が広がっていた。バックパックのなかから雪面を登高するためのクライミングスキンを取り出して、スキー板の底に貼り合わせる。比較的あたたかい日が続いていたので、山肌にはまだ岩や草木が見えている。けれど、雪山独特の凜とした空気感に久しぶりに触れられたことを喜んだ。

 滑走準備をはじめたのは、登りはじめてから30分ほど進んだほどよい斜面だった。風が強く吹き始めていたので、バックパックのなかから1000レスターダウンパーカーを取り出してハードシェルジャケットのうえに羽織った。そのまま岩陰に座ると、ちょっとした休憩をとった。

 冬期登山では、寒く感じたり、暑くなったりしたときは、すぐにうえに一枚羽織ったり、一枚脱いだりを繰り返すことで快適な衣服内環境を整えることが大切だ。寒くて体が冷え切ってしまってはいけないし、暑すぎて大量の汗をかくことも避けるべきだ。たくさん汗をかいてしまうとベースレイヤーが濡れてそのまま乾きにくくなり、体温を急激に奪う原因になる。また、すでにハードシェル・ジャケットを着ているときは、そのままうえから羽織るといいだろう。10分程度の休憩時間に、わざわざジャケットを脱いでから内側に着るのでは手間がかかる。冬山で無駄なく行動するための、ちょっとしたテクニックとして覚えておくといいだろう。ちなみに僕の場合は、通常はMサイズを選ぶが、今回はうえから羽織ることを考慮してLサイズを選んでいる。

適度な斜面をハイクアップしていき、冷たい風を岩陰で除けながら小休止とした。行動時間の短縮と、ウェア内から冷気を逃さないように、上からダウンジャケットを羽織ってしまう。

 魔法瓶に入れたあたたかな茶を口にして、行動食のクッキーを頬張る。1,000FPダウンがあたたかな空気をたっぷりと含み、どんどん膨らんでいく。僕は、かねてからマーモットがつくるダウン製品に高い信頼を置いてきた。これまでにも彼らがつくるダウンジャケットなどを着てきたのだが、なかでも同社自慢の1,000FPダウンを使った製品は、とても軽量なのに高い保温性を発揮してくれることに、いつも驚かされてきた。

 1974年創業のマーモットは、創業地の米国や日本だけでなく、伝統的に地元メーカーが強い欧州においても、つねにトップブランドとして君臨し続けてきた。僕は、さまざまなブランドが創業時に手がけてきた製品の品質に信頼を置いているのだが、同社の処女作がダウン製品であり、いまでも高品質なモデルに限ってカリフォルニア州にある同社の本社建物に併設された工場でつくられているのだ。日本国内で企画されているこのダウンパーカにも、その血筋が継承されているといえる。

 僕ぐらいの年代のスキーヤーにとって、特別な響きがあるのもマーモットだ。1990〜2000年代に活躍した伝説的スキーヤーのダグ・クームス、テレマーカーのポール・パーカーといったレジェンドたちが身につけていたため、憧れの対象であったのだ。

 この1000レスターダウンパーカーが採用するシェル素材は、極薄の7デニール・リップストップナイロンであり、Lサイズで280gと驚くほど軽量に仕上げられている。同様の保温性を備えたダウンジャケットと比べると、ひとまわりも、ふたまわりも軽く、小さく収納できるのではないだろうか。これだけ保温性が高いダウンパーカーだと持っていこうか躊躇して、薄手のダウンセーターなどを選んでしまうことが多い。だが、この大きさであれば迷わず装備に加えられるだろう。

 その着心地は驚くほどに軽く、パンパンに膨らんだ袖に腕を通す感覚がなんとも心地よい。ジャケットを羽織っているというよりも、あたたかな空気層にだけ包まれているかのような感覚にさえなってくるのだ。そのつくりは非常にシンプルで、無駄な機能を排除したデザインも軽さを実現するために一役買っている。さまざまな機能を盛り込んだ製品が多いけれど、僕はこのシンプルさも気に入った。

休憩後、滑走準備を終えて2020年シーズンはじめての一本へと滑り出す。まだ降雪量が充分でないうえ、体もまだ準備が整っていない。そのような状況で、緊張しながらの滑走であった。

 さぁ、滑りだそう。魔法瓶をバックパックのなかに収納して、ヘルメットとゴーグルを取り出して滑走準備を整える。斜面にスキー板を滑り込ませると、少し体を強張らせながら雪面にスキーエッジを噛ませていった。ところどころに岩が出ているので、注意深く観察しながら標高を下げていく。滑走距離は、わずか200〜300m程度だろうか。それでも、僕の心は満足感で満たされていた。半年ぶりに感じる雪山の空気感、滑走後の爽快感だけで充分だった。

 最初の斜面を滑り終えた僕は、いったんスキー板を外して1000レスターダウンパーカーを羽織った。そして、ふたたび魔法瓶を取り出してあたたかな茶を飲むと、いま滑ってきた斜面を見返した。そして、今季のスキーシーズンが始まったことを実感していた。そして、また次の斜面を目指して歩きはじめるのであった。

あたたかな空気をたっぷりと含んだ1000レスターダウンパーカーの豊かな膨みは、驚異的な品質を誇る1000FPのマザーグースダウンだからこそ。余裕がある収納袋は、取っ手がついていてサコッシュになっているなど気が利いている。


 

マーモット
1000レスターダウンパーカー
¥69,000+税
サイズ:S〜XL
重さ:280g(Lサイズ)
カラー:サンセット、ブラック、シンダー

冬のマーモットを象徴する1,000フィルパワーダウンを採用した高品質ダウンパーカー。良質なマザーグースダウンに、撥水加工ダウン・ディフェンダーを施して、水に弱いというダウンの弱点を克服。デザインは非常にシンプルで、「ダウンそのものを着る」というコンセプトに基づいてつくられている。重量のほとんどを、ダウンの重さとなるように設計している。

マーモットのHPで詳しく見る

【photo:太田 孝則】

 
 
ライター
Taro Muraishi

アウトドアや登山専門誌を賑わすアウトドアライター。精力的に世界各地のアウトドア・ブランドへの取材へと出掛け、そこで得た登山装備と登山道具史についての知識は国内随一。過去20年にわたって、アラスカ北部に広がる原生自然帯での遠征活動を続ける冒険旅行家としての顔も持つ。

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