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Teton Bros.の女性用の秋冬シェル「WS レディバグジャケット」を1年間使ってみたその感想

2023.01.09 Mon

ふくたきともこ アウトドアライター、編集者



冬をメインに丸1年間!
話題のブランドの「WS レディバグジャケット」を使ってみたその感想

 スキーやスノーボード好きが待ちわびるスノーシーズンが始まりました。今年は降り始めこそ例年より遅かったですが、初滑りでよい雪を滑った人も多いのではないでしょうか。
 
 今回は、昨シーズンを通してあちこちの雪山で使ってみた「WS レディバグジャケット」の着用感を忖度ナシでレポートしたいと思います。かなり詳しいので長いですよー。

 さて、そもそも「WS レディバグジャケット」とはなんでしょうか。
 これが「WS レディバグジャケット」なんですが、ふたり揃って滑りがプロ級にうますぎるご夫婦が14年前に創業した日本のアウトドアブランド「ティートンブロス」の1着です。

 おふたりの雪山を始めとしたフィールド活動からのアイデアと、活動を通じて出会ってきた山岳ガイドやアスリートたちのリアルな声を最大限活かす実践派ブランド「ティートンブロス」。こだわりの物づくりについては改めて語るまでもありませんが、その同社を代表する秋冬用の軽量シェル「ツルギジャケット」の機能をそのままに、女性専用パターンを用いたウィメンズモデルがこのWS レディバグジャケットです。

 細かい機能はのちほど解説していくとして、まずは使用した環境をレポート。カッティングは違えど素材や機能はツルギジャケットと同様ですので、男性も参考になるかもしれません。

 初回は2022年のお正月休みで訪れた南魚沼市の舞子スノーリゾートで着用。視界不良、暴風&大雪というコンディションでした。
立って埋まってるわけではありません。腿パウライディング。風を遮る林間はいい雪がたまっていました。

 この日は風が強かったものの、そこまで気温が下がり切ることなく、新潟らしい踏み応えある軽めの湿雪という感じ。リフト回しで深雪おかわりを連続していくにしたがって少し汗ばんでくる天候でしたが、シェルが風雪をがっちりガードしながらも生地を通じて湿気がしっかり抜けているという印象でした。

(単にドパウ具合を見せたいだけの動画です。あ〜今みてもタマラン!) 

 2度目が1月下旬に仲間と訪れた栂池の天狗原バックカントリー。
BCエリアへの入山準備中(右端)

 晴天・微風・雪よしという、絵に描いたような理想的コンディション。しっかり滑ってしっかり登り返すバックカントリーツアーでしたが、確かに感じたのがやはり通気のよさ。アクティブインサレーションと合わせていたこともありますが、シェル内側に湿気が篭るという感覚が本当に少なく、ドロップ間際の尾根では風の強さによっては抜けすぎると感じこともあるほど。一方で冬季用シェルに感じがちな「ヨロイを着ている」というものものしい着用感はなく、とにかく軽いと感じたことを覚えています。
面ツル! いい雪のロングラン、最高でした。

 3度目が2月中旬に訪れた北海道。ニセコを中心に後志エリアをめぐった5日間の滞在でしたが、西高東低がバッチリ決まって地元ローカルが太鼓判を押すほど毎日雪がリセットされるコンディション。ただしその分気温も相当低く、スキー場ボトムでもマイナス10℃を下まわるなど、滞在中はかなり冷え込みました。
滞在中はニセコアンヌプリのピークからゲートを利用してBCエリアに出ただけでなく、イワオヌプリや赤井川周辺などハイクをともなうツアーにも参加。

 低温下での活動となる北海道ではハイクをともなう日もシェルの脱ぎ着をすることなく、ほぼ着用したまま。リフトが長いスキー場だけで滑る日は、下にアクティブインサレーションではなくダウンを着ていないと寒いほどで、日によっては生地が薄いと感じることも。そういうときは持参していた同社の昔のTBジャケットに切り替えました。
イワオヌプリをハイクアップ中(3番目)。 相当冷え込んだ山頂。

 そして少し間があいて、4度目が3月中旬に訪れた残雪の岐阜・大日ヶ岳。この日は中間着も不要と感じる陽気。ハイクアップ開始時からベースレイヤー1枚の行動でしたが、山の上部は南風が強く、ドロップ時はベース+シェルという組み合わせで行動。
 このとき重宝したのが、このジャケットの最大の特徴でもある斜めジッパーでした。首元から左脇腹まで大きく開くため、短時間で一気に換気が進みました。また縫い目やパーツを抑えたシンプルな構造のためたたんでもかさばらず、パック内の携行性も申し分なし。素材がかなりしなやかで、硬いシェル特有の耳元でゴワゴワいう音もなく、体感以上に軽いウェアを着用しているという実感もありました。

(ほか、もう数回雪山に入山しましたが、コンディションが似通っているため割愛します)


よかったと感じた具体的な機能と、
個人的に考える使用最適フィールド

 厳冬期から残雪期まで、北海道から岐阜まで。ウィンタースポーツに限定した使用でしたが、よかった点をザッとまとめます。

1、シェル内の蒸れが本当にない
2021年の秋冬モデルからティートンブロスの全シェル製品に採用されたのが、同社オリジナルの通気防水素材「タズマ」です。
 タズマは大量の発汗をともなうような冬山の活動でも、シェル内の結露を防ぐために汗抜けのよさ、通気性に重きをおいて開発したという素材。しかも吹雪や雨でも体を濡らさない耐水圧もしっかりと備え、東レとの共同開発に妥協がない感じは、「あれだけガチで動ける人たちが作ってるんだから、そうなるよな」と何度も山で実感したほどでした。しかも防水素材にありがちなゴワつきがなく非常に柔らかく、残雪期はソフトシェル的な使い方もできると感じました。

2、がばっと開く斜めジッパーが便利(ただし着用は慣れが必要)
 素材自体の汗抜けはよいですが、換気が追いつかないときに重宝したのが大きく開口するジッパー。立ち休憩などでサッと開けてシェル内を冷やし、閉じて行動に復帰するというイメージ。Wジッパーなので、下側から開けると通常のベンチレーションとしても機能し、別途ベンチレーションを設ける必要がないので、結果的にパーツ減につながり軽さにも貢献しています。また、ヘルメットを装着しているデカ頭でも何なく着用可。使い始めのころはどっち方向に手を入れればいいか戸惑いましたが、これは慣れですね。

3、フードの調整が簡単でよい。
 フードはヘルメット対応。フィット感はアゴの両サイドにあるドローコードを引いて調整します。便利なのは、ロックをかけるパーツが別途付いているのではなく、コードを上に引き上げるだけで留まるシステム。ただでさえ分厚い雪山用グローブをして、細かいものをつまみたくない心境としては、この気軽さはかなり重宝しました。

4、外からも中からもアクセスできるドラえもん(?)ポケットがよい
 メインジッパーの反対側には、斜めにジッパーを配した大型のフロントポケットが付いています。大容量で、スキーシールや濡れたゴーグルを布にくるんでこのポケットに入れて乾かすこともできそう。私は行動中はスマホのほか、ランチパックなど行動食を入れ、ちょっとしたモグモグタイムに備えていました。内部からも同じポケットにアクセスできます。

5、グローブ装着時も扱いやすい大きな袖ベルクロ
 TBジャケット同様にグローブをしたままでも操作しやすい大型ベルクロ付き。袖口は愛用のテムレスやスキーグローブがスムーズに収まる広さ。

 しかも! じつはこのベルクロの締め込みの確実さが重宝した別の場面がありました。

 それが、寒い時期のシーカヤックです。
夏場は水濡れはいとわないシーカヤックですが、涼しい春先や秋口ともなると話は別(ちなみに冬は滑りにいくので海はやらない)。パドリングでつねに海水に濡れたパドルを左右動かしていると袖口から内部に水が入ってきますが、このジャケットはベルクロでしっかり締め込むことで水の浸入をがっちりとガード。ウェア内のドライさが保たれます。

 しかも、WS レディバグジャケットはアイスクライミング用に作られただけあり、腕を動かしても生地が引っ張られることなく、パドリングがスムーズなんですよね! さらに雨天のツーリング時、向かい風が強まって長時間パドルから手を離したくないときに、かぶっているフード調整がコードひと引きで決まる。これもとても便利でした。
シーカヤック撮影:ともに亀田正人

 縫い目が少なく、防水性にも優れ、内部の蒸れも効率的に排出。しかも動きやすい。女性向けのカッティングなので、なおのこと体を動かすすべての動作でどこにも窮屈さがなく、なにも不都合を感じることがなかったのだと思います。

 涼しい時期のカヤックツーリングでアノラック代わりに使えるとひそかにほくそ笑んでいたら、知人のシーカヤックガイドさんもこのシェルの元である「ツルギジャケット」を普段から海で使っているそうでした。やはり!
秋山でも使用。とにかく抜けるので脱ぎ着の回数が減り、濡れず蒸れないウィンドシェルみたいな使い方もできる。

 1年間の使用を通じて個人的に気になったのは、マイナス10℃を下回るような極寒の環境下では素材がかすかに硬くなると感じた点。これはあくまで個人の感想なので、思い過ごしかもしれません。緊張とつねに隣り合わせの雪山では、なんにでもセンシティブになりますしね。このあたりは機会があればティートンブロスに聞いてみたいと思っています。

 さて、総括。

 1年を通じて使ってみて、個人的に「こういうシチュエーションで使っていきたい」と思ったのは下記のとおりです。

■厳冬期の栂池や小谷、野沢温泉、湯沢・南魚沼周辺など標高や北緯が高すぎないエリアで行なうハイクアップ多めのバックカントリー
■エリア問わず気温の下がり切らない残雪期のバックカントリー
■秋・冬山の登山
■春先や秋口の肌寒い時期のシーカヤッキング(夏用の雨具としてのバックアップにも◎)

 ちなみに、冷たい雨が降るこの季節の保育園の送り迎えでも使っています。アウトドア好きの父兄から「その斜めのファスナー、かっこいいですね!」とたびたび言われますが、その実力はジッパーの見た目だけちゃうねんぞ。と内心思いながら暮らしています。

 今シーズンもこのジャケットを着て、スキあらば雪山に通いたいと思います(希望)。

Teton Bros.のサイトで詳しく見る

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