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林業育ちのODジャケット。ハスクバーナのシェルジャケット Xプローラがいいぞ
2023.01.16 Mon
藤原祥弘 アウトドアライター、編集者
藪を漕ぎ、薪を運び、草地に寝そべったあと、家の洗濯機でざぶざぶ洗える。そんな、野良着のように扱えるジャケットを探していた。
それでいて街にも裏山にも馴染み(一着で行き来したい)、自然な風合いで(もうだいぶ大人だし)、動いても衣擦れの音がせず(動くたびに音が鳴ると生き物が逃げる)、雑作業に気兼ねなく使える強度があること……。
こんな条件でアウトドアメーカーからジャケットを探すと、ベンタイル(コットンを密に編み上げた布地)かポリエステルとコットンを織り合わせた布地を使ったジャケットが見つかるが、これらの素材を使ったジャケットはデザインまで古典的だった。
私がほしいのは天然繊維のよさを備えつつ現代的な技術とデザインでつくられたジャケットである。デザインまで数十年前に遡られては困る。望むようなジャケットはどこにもないのかと思いはじめたころ、意外な場所でぴったりのジャケットを見つけた。そのジャケットが並んでいたのはチェンソーの販売店。メーカーは林業機器とバイクで知られるハスクバーナだった。
ハスクバーナの「シェルジャケット Xプローラ」は冒頭で列挙した私の望みをすべて叶えていた。表地はポリエステル65%/コットン35%の帆布のような質感のファブリックで、耐水圧は10,000mmだという。
シルエットは細すぎず、太すぎない。左胸に胸ポケット、前身頃にハンドウォーマーポケットを備える。チンフラップはちょっと高めで、フードもほどよい大きさだ。つまり、とてもスタンダードな型のアウトドアジャケットである。
背面は4方向にストレッチするポリエステルのファブリックが使われている。そのためコットンを使ったジャケットにありがちな動きにくさはまるでない。ソフトシェルとまではいかないが、強度と動きやすさのバランスは取れている。
腰をしっかり覆うドロップテイル形状なので、前屈みになっても背中が出ない(これは寒い時期に嬉しい)。脇下にはベンチレーターを備え、運動量が大きいときは熱と湿気を効果的に排出できる。
袖口にはライクラのインナーゲイターがあり、手の甲を保温しつつ、袖のずり上がりを防いでくれる。
表地は落ち着いたオリーブ色だが裏地は鮮やかなオレンジ色で、この面が見えるように置いておけば、フィールドでもよく目立つ。林業機器メーカーらしい配色だ。
フードは取り外しできる。ワンタッチとはいかないが着脱はそれほど手間ではない。ボタンと面ファスナーで接続しているので望まないタイミングで外れて無くすようなことはなさそうだ。
関節部分の各所には立体裁断が施されているが、裁断のかたちがちょっとおもしろい。生地の形に合わせて突っ張らない姿勢をとると、写真のようになるのだ。ハスクバーナがつくるジャケットである。バイクやチェンソーを扱うときにいちばん無理がない形になっているのは偶然ではないだろう。
性能面以外にも特筆すべき点がある。このシェルジャケットXプローラ、競合するナチュラル系アウターと比べて格段に安い。定価はなんと¥21,175。他のアウトドアメーカーの同系統のアウターが5万円を超えていることを考えると、驚くほど手頃な設定だ。
ここまで書いたところで、数年前に書いたハスクバーナの手斧の紹介のことを思い出した。ハスクバーナ、手斧も競合他社と比べて格段に安いのである。実用品を作り、実用品として売る。そんな林業機器メーカーとしての矜持がウェアにおいても貫かれているのかもしれない。販路も当然アウトドアショップではなく林業機器の販売店なので、興味がある人はここから最寄りの販売店を探してほしい。
ウイメンズモデルは北欧っぽい落ち着いた燕脂色。こちらも素敵。