• 山と雪

<GNUさんの部屋特別編>日高・知床。北海道 マス釣り歩き 2018 前編

2018.09.27 Thu

国内外のロングトレイルやウィルダネスを
釣り竿を肩に歩くことおよそ9000km。
遅れて来たビートニク、長沼"GNU"商史さんが
今夏訪れたのは北海道の最奥地の日高と知床。
マスをめぐる冒険の前編です!

どうも、ヌーです。
町を歩く薄着の女子が減ってきたなぁ……
どうせオッサンだから、もう関係ないけどそういうの……
と諸々の寂しさ感じる冬の前。

ということでね去年に続いて今年も夏に北海道の日高山脈で遊んできたのでそのあたりの話を。

2017年の話、俺ははじめて日高山脈に突入した。
無謀にも幾つもの山を稜線で繋いで歩けたらな~、なんて思っていたんだけど、結果から言うと撤退、敗退、お腹痛い♪ アーハンっ♪

水場の無さをなめてた、藪の濃さをなめてた、自然の濃さをなめてた、真夏の外仕事で溜まってた疲れをなめてた……。

疲れの溜まった体は入る前から山に圧倒されてたし、仲間のハイカーがアメリカで亡くなったばかりでもあり、身体も心も状態が悪すぎた。

そんでも幾つかの山に登って歩いて、沢山釣ってきた。

結果、日高の自然の素晴らしさにやられた、いい意味で。
絶対これまた戻ってくるな日高に、と思った。
去年の詳細は「釣歩日記 日高篇」が本になっています、気になる方はご購入をwww。取扱い=book obscura

俺、子供の頃から釣りしたり野山で遊んできたけど、最近になって求めているものが変わってきた事に気がついた。憧れというか求めるものが、

サバイバルぽいのしてみたいなぁ
       ↓
キャンプしたいなぁ、いろんな道具も使ってみたいし
       ↓
獲物を獲って食ってキャンプしたいなぁ
       ↓
自然の多い所に行きたいなぁ
       ↓
長いこと自然に浸かりたいなぁ
       ↓
一つも尊敬してね〜ジジーにとやかく言われるの嫌だなぁ
       ↓
人のいない自然の濃い所にいきたい←いまこれ。

それで選んだ場所が北海道日高山脈と西表島だった。

人がいなくて魚が釣れる、ある程度の覚悟と経験がないと行けない所。俺は心が求めた場所へ自由を求めて遊んできたみたいなんだな、最近気がついた。

とある尊敬するアウトドアマンに言われた「ヌーさんの遊び方いいよね、カテゴライズされてないと言うか、例えば「登山』って言っちゃうと自然に興味があったのに『あれ? これなんか違うかも』って辞めちう人とかいるかもじゃない? そういう人達にこんな遊び方もあるんだなって思ってもらえそう」って。

俺がなんでこういう遊びするようになったかというと、自然はもともと大好きで釣りも好き、旅も好き、野営も好き。そんで面倒くさいルールが嫌い、それを押し付ける輩も嫌い。

俺は「ルールを守れ」と言う人達の「ルール」よりも、も少し深いところで人より自然への尊敬をもって己でルールを実践しているつもり。

例えば人気のルート。4時までにテン場に入れ、というのは自分の行動をコントロールできない人のためのルール。近すぎるテントの群れも面倒くさい。元々気を使いすぎるから逆に疲れちゃう、遊びに行くのに……。そういうのから解放されたくて遊ぶのにね。

でもここで一つ一番大事な事。「人の言うルールよりも1段階厳しいルールを自分に与えられない人は、自然を大事にできない人は、自己責任って言葉を知らない人は、沢山の人が行く所へどーぞ。」やべ……無駄に語っちまった……まだ語るけどw

そんで気がついたんだけど、景色の良いルートや山域は人気があって人も多い。それを避けた結果、有名な所、景色のいいところはほぼほぼ行っていない……と言うねw。

よくヌーさんならあそこ歩いたことあるんでしょ? と聞かずに歩いた前提知ってる前提で話される事あるけど、少し笑いながらうんうんと聞いてるだけの時は知らねーし、行ってねーw。

「山好きならあそこは登っていないと!!」とか関係ね〜w。行きたいとこ行くよ俺は。見栄で遊んでるうちはまだまだかと思うんだなぁ、解放されようよっ! みんな!
なんつって。

そんで今年は去年登ったペテガリ岳、そこから続く果てしない稜線を歩きたい! と思ったから、歩いてきた。
日高山脈概念図。 

日高の東側から入り、コイカクシュサツナイを経てペテガリに登り、西側に下山する、つもり。今回は歩かないが、コイカクシュサツナイの北に続くのは二百名山のカムイエクウチカウシ山。過去には5人のパーティーのうち、3人がヒグマに襲われて亡くなる事故が起きている。この一帯のヒグマの気配は濃い。

羽田の駐車場に車を入れて、朝一の便で帯広空港へ。駐車場いくらになるのかなぁ……。

恐&怖。

今回も前回同様仕事でかなりの体力を奪われていたので、にんにく注射を打って出発。おかげで元気にスタートを切ることができた。にんにく注射ゴイスー。

去年は体力ゲージほぼなしで山に入ったら山に負けた、というよりも自分に負けたのね。でも今年は自分に負けず、コントロールできている気がした。

飛行機から見る日高山脈の東側は雲で覆われている。日高の山々が雲を止めている。稜線がくっきりと見える、あそこを歩くのかぁとしばし見とれる。

7月28日。帯広駅まで空港からバス。駅前の温度計は20℃を指していた。

途中で腕時計を忘れたのに気がついて、帯広の町まで買いに行かなくちゃいけなくなる。まあどうせそっちのクロネコヤマトに送っておいた熊スプレーを取りに行かなくちゃだからいいけども(飛行機に熊スプレーは乗せられないので前もって送るか、現地購入しなくてはならない)。

朝からデカイバックパック背負ったオッサンウロウロ。駅ビルで時計屋をみつけ、安物の時計購入。その後ダイソーで時計につけるコンパス購入。
スーパーで燃料兼寝付きの薬としてスピリタスを購入、などなど準備を済ましタクシーでクロネコヤマト経由のいざ登山口付近まで。タクシーのドライバーさんが釣りする人で、熊よけに「爆竹もってけ」というのでホームセンターへ寄り道して買う。

札内川ダムまでは車で行ける、そこでタクシーを降りる。
「気をつけてね!」とドライバーさんに言われる。そしてUターンしてタクシーは去り際にクラクションを鳴らす、これからいくつも通るトンネルにクラクションがこだまする。

やべー、始まってしまった、自分から勝手に来たのに、はじまっちまった。
暗くてこえートンネルを歩き始める。
このトンネルは「境界」だ。人が沢山いて、心の何処かで甘えて生きられる場所と、人は少く、常に緊張気味ですごし、甘えは許されない場所との。

ふだんは生物のトライアングルの頂点にいると思い込んでるが、大自然にほっぽりだされると人間は弱い。この境界の先は、自分より確実に「強い」動物のいる世界だ。「境界」て言ったら少し大げさかな? でも本心ではある。まぁ怖いんだな、クマが、自然が、俺は。

アメリカのトレイルPCTでは4回クマに会った、そのうち2回は一人の時で、そのうち1回は至近距離だった。それはブラックベアと呼ばれる日本のツキノワグマ程度のサイズのクマだ。体は俺より少し大きい。戦ったら負けると思ったけど、それを相手に悟られたら「やられる」と思った。

「来るならやられても殺す気で俺もいく」と視線をそらさず睨み合った。持っているハイキングポールを叩き音を出し、ジリッっと足を一歩前に出したら逃げてくれた。「逃げてくれた」んだよね、たまたま。安全にやりすごす方法なんて知らないし聞いたことない。たまたまなんだよねたまたま。

アメリカのとあるHPにあるクマに出会ったときの対処法は「目をそらすな」「背中をみせるな」「走って逃げるな」「金属音を出せ」とかとか書いてあるけど最終的には「戦え!」とあるんだよね……。

出会った時にどうなるかは運次第。絶対会いたくない、しかもここ北海道に棲むのはヒグマ……グリズリーの近縁種だ。でけーし強い。地元の人は慣れてるかもだけど俺は慣れることは一生ないと思うんだなぁ。

出口の明かりが見えてくるとなんかほっとする、けど途中にある非常地帯? みたいに10m位のへっこみがあるところに来るたび「熊いるなよ!」とビビる。トンネル入るたびに大声出してるからいないと思いつつも、ね。

コイカクシュサツナイ登山口の看板を見つけ「よーし、ここからか」と気合を入れ直す。川を遡上していく。日高の山々のほとんどは長い林道歩き、沢を遡上し尾根にとりつき登るパターンが多い。アクセスの大変さとヒグマの恐怖が人の少なさに繋がっているのかもと思う。

今回はコイカクシュサツナイ岳〜ペテガリ岳を縦走、ペテガリ山荘で仲間と合流、その後釣りまくる。予定。

順調に川をトレランシューズでザバザバ遡上。
上二俣と呼ばれるところに3時前に到着。今日はここでキャンプ、無理はしない。

目の前の川で早速竿を振りオショロコマを狙うが大きいのはいない雰囲気。一匹釣ってすぐやめる。魚に触れることのできた喜びだけでOK。
飯食って、爆竹鳴らしツェルトに潜る。
雨降ってきたし・・・

翌朝、日の出前に起床、ゆっくりとコーヒー。水を7.5リットル汲んで歩き始める。

が、尾根への取り付きまでが背丈の笹薮。足元の踏み跡を追って歩くのが基本だが途中で鹿道にシフトしてたらしくロスト。日高あるある。

ピンクテープを遠くに見つけてどうにか復帰。
途中、稜線の藪で撤退してきた人とすれ違う。「ここ1000mを2000mで登るんだぜ、大変だよっ!」と言われる……それを、登る。

ヒーヒー言いながらどうにか夏尾根の頭まで。コイカクシュサツナイ岳はここから稜線を歩きあと少し。ここで大休憩。
一人稜線をこちらへ向かってくる人を発見。こちらへ到着後しばしおしゃべり。

ヤオロマップにある水場はチェックしていないとのこと。大雨の後ここしばらく雨の降っていなかった状態だったので俺自身はこの水場はあてにせず多めの水を積んできた。

「昨日さー、夜中に鼻息がふーふー言うから、怖くて、これは幻想、嘘だと自分に言い聞かせて寝袋に潜って耳塞いで寝たんだよね。そしたら朝、テント脇に熊のうんこがあってさー……脅かすわけじゃないけど……いるからね」

……ですよね。

この日すれ違ったのはソロ2人、ガイドさんとおねぇさま2人の5人にしか合わなかった、週末なのに。日高あるある。

コイカクシュサツナイを越えヤオロマップへ。一応水場をチェックしに、飲んでしまったプラティパス一つだけ持って沢の源頭へ降りる。
生命の泉と呼ばれているらしい。数ミリの流れが3本……。
ありがたくいただく。ここの水は本当に美味しかった。冷たいしピュアだ。登り返しで喉乾いて稜線復帰後早速飲むw下で飲んで、上でも飲むw。まだ日はあるからもう少し進んでおこう。
戻るならここから、進んだらもう進むしかない地点、最後のビビリ心を捨てる。

1839峰をめざす人達がここヤオロマップまでは来るが、ヤオロマップから先の稜線はほぼ人は通らない=藪やばい。

たった1km進むのに何時間もかかり、体力も太陽の明かりも奪われていく。「だめだ、キャンプしよう」と見つけた所に無理やりキャンプ。

狭いスペース、傾斜。
今まで数え切れない位ツェルト張ってきたけど、ワースト1決定(笑)ヨレヨレ……。

ポールも使えず、上にある死んだ木を使って張る……。地面真ん中にある太めの根っこがケツにくる位置に張ったのでこれにケツ引っ掛けてどうにか寝る。

大好きな仲間に電話をかけ、折れた心を声で修復、テクノロジーってすごい。人の力ってすごい、色んな意味で。電波アリ、だもん。

スピリタス飲みたいけどお酒は喉乾いて水を飲まなくちゃいけなくなるので我慢、水を無駄に使えない。疲れていれば寝られるもんだ。ツェルトの外は深いガス。8〜10m位の風。

翌朝、水でインスタントコーヒー作って、チョコで糖分どーん。

さて、藪りますか。

この日は朝から小雨、ガス。視界が悪い。一歩一歩と言い聞かせながら進むが普段の歩く感覚が捨てきれない、スムーズに次の一歩が踏み出せるあの感覚が。次の一歩が続けて出せるのはラッキーなんだな。

手でかき分け、獣の踏み跡を探しながら歩くが、それすら簡単に踏み外し、笹、ハイマツ、もう一種類の知らない木に妨げられる。休憩したいがそのスペースすらない、キャンプも自分の好きなところにはできない。日高あるある。

途中「ん?なんか違うかも」とGPSチェック(アンドロイドのGeographica)。

稜線歩きで迷うわけねーだろ!と思っていたけど、獣道さえよくわからんのと、ガスの為簡単にロスト。100mほど登り返すはめに……藪を。笹を掴みながら滑るように楽に降りたのが悔やまれる。

急斜面の為登るのが大変だが登らにゃいかん。藪の下のほうを潜るように掻き分けながらそれを掴みながら進む。たまにある木が斜面に対していい感じなのでそれに座り休憩。

歩いているというか這っている時は水筒出すのすらめんどくさいので笹に付いた雨露を舐めながら登る。ほぼ熊。4足歩行の、体毛の意味がわかる。頭を挿せば藪は後ろへ流れる。歩きやすい、てか歩ける。あぁ熊になりたい。

稜線に復帰。

「くそがーーーーーーーーーっ!」と叫ぶ。自分がクソなのにね。
そこからも藪の猛攻♪もう結構♪あはーあはー♪

八時間歩いたが全然進まない、あとで計算したら1時間に300mほど……ウケる。昼過ぎだが天候も悪く次どこでキャンプできるのかもわからないのでちゃんとツェルトを張れそうな所でもうキャンプ決定。木々に付いた露と小雨でカッパも意味なく全身ビチョビチョ。ロストで心も折れた。

暖かいわかめスープとコンビーフにマヨが美味いのなんの。なるべく水を使わないようにする。ベアカントリーでは食べる所と寝る場所は別にするのが鉄則だがこの稜線でそれは無理そうだ……。スペースがない。爆竹で存在だけでも熊に伝える。

ツェルトの中で携帯いじるww日高の稜線は電波が入る。SNSで「山と道北海道支部」こと岳さんからのコメントに勇気づけられる。

「そこプロでも死ねるからね。そこ深すぎて助けには行けないからね。なんかあったら位置だけでも送ってね、捜索省けるから。」

と、言われたことはおっかねーけど気にかけてくれているその心遣いに感謝、折れた心が修復されていく。2日続けて寝る前に人に修復してもらう。

孤独を求めて来てるんじゃないの?!?自由と孤独は同じなようで少し違う、と言い訳w。 そう、俺は弱いw。

風が強いがどうにか耐えられると判断、しっかり張ったツエルトは意外と強い。

気温が低く、雨は止まない。翌日のことも考えると明日の行動着をできるだけ乾かしたい。そして乾いているものは濡らせない。

キャプリーンとフリースとパンツは無理だが、アイベックスのTシャツとモンベルのウールのボクサーパンツは着ていれば乾く。そして、濡れていても保温力がある。ウール強し。バタバタと一晩中雨と風にやられたけど熟睡。

翌朝。
雨、止む。風強し。
西に月と雲海からの東に太陽。やっべ、これ。最高。独り占め、だってこの付近は多分人は俺だけ、熊の方が多い。己と自然。

歩き始めたいが、太陽がも少し上がるまで待つことにする。気温も高くはない、濡れたの着て強風、低体温は避けたい所。朝の段階で水は4リットル弱、最悪次のキャンプもできる。

出発まで寝袋につつまりながら湿ったフリースを股にはさみ少しでも乾かす。寝袋が撥水ダウンで助かる。今回はハイランドデザインズのSub-Sキルトを持ってきた。これが全てにおいて今回ジャストフィットした。

さてと、歩きますかっ! と宿の撤収をしてあるき始めると、40cm四方よりも大きい熊のクソを発見、稜線ではたっくさん熊のクソ見てきたけど今まで見た中で一番でかい……200kgオーバーの個体だろうか。

鳥肌たった、新しいそのうんこは同じフィールドに剥き出し同士で存在する証。
ま、ビビってもしゃーない、歩くだけだ。
たまにひらける名も無きピークで休んでは見渡す。
カムイエクウチカウシや1839峰などが見える、これから向かうルベツネも。
濃い、なんせ濃い。自然が。

これを感じたくてここを歩いているんだな。
藪がヤバイのも、三点支持が必要なナイフリッジがあるのもわかっていた。
クライマーでもない俺がそれを知りつつここを選んだ。

「本物の自然」を感じたかったんだよね。最近は自然好きを語りながら、リスク低め、人の手の沢山入った自然しか触れていなかった。やっぱり濃いのに触れたいと。

でもねその代償はとても、とっても高い。相変わらずの濃い藪、いくらか踏み跡というか獣道を探すのがうまくなったけど、大変なもんは大変。
何回も「はぁ、俺何してんだろう・・・」と、ほぼ修行w。
時折藪を掴んだその手についてくる毛は熊のものだろう。
その手も松ヤニで汚れている、いい匂いだけど。これでも雨露でだいぶ落ちた。
ルベツネ山周辺の稜線では時折左右がスッパリと切れたナイフリッジに出くわす。少しガスっているのが幸いして恐怖感は薄れるし、この天気のおかげで消費する水も少くて済んだ。そう、山の神様は微笑んでいる。

しかし、怖いもんは怖い。
だって高いの苦手。
落ちたら死ぬし。
写真なんて撮ってる余裕ないw。

岩は乾いているが、靴底が濡れているから慎重に、慎重に。そういう所は深呼吸してから登ったり降りたり。大体の場所でハイマツや草やなんかしらの枝を掴めるが一箇所だけ岩しかない所があった。怖っ!

でもここ熊歩けるんだろ? ザイル使う人間しか通れないと言うような場所ではないだろ?

じゃあ歩けよ !と自分に喝。野生動物は崇高だし、身体の仕組みも違うけど、少し近づけた感じがした、少し嬉しい。

けど、ここ二度と歩きたくないwけど、今は歩かないと死ぬw。藪歩きに慣れたのか、少し踏み跡を探すのがうまくなったのか、藪の薄い所も出てきたのか、高度が少し上がったのだろうか、想定よりも早く進む。

次のキャンプ予定地ペテガリCカールの下降点に着く。

「うーん、ここで泊まりたかったけど、天候も良くないしなぁ……」

よしペテガリ岳へ向かって下山だな。それが一番安全な道だ。山荘まで4時間か5時間、水もまだあるし。

ペテガリ山頂に着く。
もう、細いハイマツの枝や草に命を預けることはないな、ヒリヒリ、ピリピリする山を終えた。ガスでよくみえないけど歩いてきた稜線を見返す。ここからは電波が入らなくなるので、下にあるペテガリ山荘で合流する仲間にメッセージを打つ。

「山荘へ向かいます、明日までに合流できなければ明後日山荘出て下山します」と。

そして下る。
ペテガリの下りは大嫌いだ、下りなのに何回もしっかり登る。標高を下げると晴れてきて暑い、スズメバチの「お前は敵か?」パトロールも増えてきた。

途中、胃酸過多ぽい気持ち悪さ。ワンゲロ出そうだけど何も出てこなかった、食べすぎたビーフジャーキーのせいだろうかw

はぁ、修行がなげーな。

休み休みゆっくりと歩く。もう終わりだろ? からの最後の登りがヤバくてうける。
本当の最後の下りの沢で冷たい水を飲む、胃の不快感はゲップとともに去る。

そんで山荘へ。
山荘には3人先客が。
バックパックをおろすと全身が痛い、一回座ってしまうと立つのが辛い。窓際の特等席をいただく、網戸がついている、水道(沢水)、トイレ、家だ。

最高。

痛いからだに鞭をうち外にある水道で頭、上半身を洗う。下半身もと思ったらアブの猛攻……拭くにとどまる。明日、洗濯しよう。

この行程で足はずーっと濡れていた、足から上が乾いていたのは初日のみw。特に足がいてーなーと思って見てみたら
ハイマツにやられたぽい
すね当てというか甲あて必要だな。ブーツ履けって話だけどねw。
飯食って明日早出でペテガリ登ると言う三人も早く寝たし、俺も寝る。
こんな短時間ですでにハイカー体内時計に変わっていた自分にびっくり。

早朝3時前に起き出した皆さん、俺はなんか脳内物質出てたのか熟睡はできなかった。腹が異様に減っている。3人の朝ごはんにあわせて俺も飯。そしてうつらうつら、寝てしまう。

起きたら誰もいなかった、独り占め。ここペテガリ山荘、大好き。
急に便意、考えたらここ4日一度もクソしていないことに気がついた。すべてが栄養に回ったのか? 極度の緊張のためか? わからん。

3人組のラジオが入ってたので俺も試すが俺のは小型だしどうも電波の入りが悪いので諦める。重い腰を上げて洗濯。

キャプ1は死亡。でも衣服としての機能は維持されているので町に降りても捨てないでとっておこう。さすがパタゴニア。
洗濯後一服。自撮りすると顔つきがいつもと少し違う感じがした。
野生戻りしたのかな、文明戻りはもっと短時間でなるんだよなぁ。

バックパックは今回も前回同様HMGのポーターを選んだ、これが正解だった。
藪が濃すぎる、サイドのポケットあったらもっと歩くの遅かっただろう。それは持ち運ぶべき水の量に直結する。外付けは後ろだけはOK、上や下やサイドには付けられないだろう。切りすぎたかと思われるベルトも正解、引っかかるものは要らない。
足の傷は濡らすとすぐ復活しちゃいそうだから目の前に川があるが釣りは我慢、この日合流する予定の仲間と沢山すればいい。

足が脈打ってる。
窓全開で薄手のダウンでちょうどいい、山頂は寒いだろう。
小屋にある90年代の山と渓谷を読む。広告が沢山のっていた、このころはブームもあっただろうし、雑誌に力もあった。今は雑誌の力を感じることは少ない。

しかも今も昔も同じような特集が組まれていた、温泉ハイク、紅葉、軽量、奥多摩、北ア。なんか飽きたのでスマホでオフラインでも読める用にしていたキングダムを読む。スマホ万歳。

夕方には仲間と合流できるだろう。
コーヒーが残り少ないので白湯で我慢。
午後になり女性ソロ60代の方が現れる。明日ペテガリに登るとのこと。

たくさん話した。地元が日高なので日高の山々は登りたいと数年前から山をやり始めたらしい。海の人で魚のことも沢山知っていた。

遡上して産卵し終えた鮭は「ほっちゃれ」と呼ぶらしい、食べるならフライしかない位味が落ちるらしい。捨てとけっ!って意味なのかな??あいつはホッチャレだ!と人に使うと悪口になるんだってw。

オススメは北戸蔦別岳だってさ、こんど行ってみっかなぁ。
ドリップのコーヒーをいただく。ヤバイ……うまい……。あざす。

時間がアリすぎて色々なことを考える。

子供の頃から愛してきた自然はあくまで自然の一部だったんだなぁ、シエラネバダも一部、日高も一部なんだよなぁ、インターネットにより世界は狭くなったけど、知らない自然がまだまだ沢山あるんだよなぁ、一生かけても全部は難しいだろう。大好きなあの子も知っているのは一部分、女も男も自然の一部、こちらはこちらで素晴らしいが、こちらはこちらで難しいもんだw とか。

夜7時をすぎるが仲間も来ないし、3人組も戻ってこない。
心配し始める。
皆付けてる鈴の音を耳で探すが鳥らしき声が鈴に聞こえる位心配になってきた。
8時を過ぎて3人組がライトを点けながら無事下山してきた。

仲間が心配だ。飛行機の時間やらから計算すると山にはいっているはず、問題なければいいが。ゴロンと横になり寝袋に入ると星が一つだけ見えた、大丈夫、生きてる。

神威山荘の駐車スペースからペテガリ山荘まで3〜4時間、沢登って沢降りるがそんなヤバイところでもない、考えられるのはロストかな。でも彼なら大丈夫なはず、ロストしてても多分どこかでビバークしているはず。うん、そんなやわでないし、スキルもあるし。うん、大丈夫。明日昼までには来るだろう。

翌朝、早出の女性に合わせて皆起きてくる。
女性が出発したあと3人組と沢山話す。
ほぼ7サミッター、アコンカグアとか何回か登ったよ、ユーコン下ったよ、南極登ったよ、アラスカいいよ……ガチやべーw。

ふくらはぎと手がデカイ。かっこいいわぁ
その筋では有名な方たちぽかった。翌日からとある沢を詰めるらしいし、すげーな。
3人とお別れすべく小屋前で写真とかとってたら鈴の音が!!

仲間無事到着。安堵、早朝6時に。
3人と別れ仲間と小屋へ。
小屋前にミヤマクワガタ発見。どうやら違う沢筋に入り尾根に出て藪漕いで、道に出た!!!!!!!
……と思ったらスタート地点に戻っていたらしいww。
そこからめげずに歩いて正規ルート上でビバークしたとのこと。
無事で何より。

初日からロストで疲労のある仲間、疲労蓄積の俺、すぐ出るはずもなく小屋でダラダラ。昼ごろまでダラダラしていたら新しく3人組到着。釣り用のバカ長履いて着た感じ、釣り竿。どう見ても釣りする人。ペテガリついでに釣りしに来たらしい。

ここから8日間後の飛行機で帰る予定だが、予定は真っ白だ。釣りの話を沢山聞きたいと話すと、知床付近、斜里でカラフトマスが釣れ始めたらしい。行っちまうか??

パッキングを済ませたあと、いざ釣りに。
このためにあの藪の中バカみて〜に釣り道具を運んできたw。

川を釣り下り、貯水湖のインレット(流入口)へ。このインレットでの釣りが目的、前回来たときから目をつけてた、デカイのがいるはず。60cm位のレインボートラウトが釣りたい。

川では予想通り30cm以下がバンバン釣れる。ルアーはスピナー。
インレットにつくと流木で溢れ釣りができない……。
3つあるインレットの二つ目へ移動。
土砂が流れて浅瀬が広すぎる……。
どうにか釣った小型を刺し身に。

そう、レインボートラウト(ニジマス)の刺し身。これが目的の一つ。
相変わらず美味い!!まちがいない。
状況は悪いがここでキャンプすることに決定。
晩の刺し身を釣る。



仲間が作ってくれたフライパン系料理がうまい! 小麦粉、高級オリーブオイルで!
塩焼きは予想を越えてきた、刺し身はまちがいない。
空には天の川が見える、なんて最高な。

翌朝、一人竿を振るが大きいのはかからない。だめだな、と竿を仕舞い、総天然木のmyラグジュアリーコットで焚き火、ご飯。
贅沢というかシンプルな朝。
釣り場はこんな状況で天気も気になる。今回はこれ以上深追いするのはやめて、川を釣り登りペテガリ山荘へ。山荘で飯して、最高な別荘とおさらばして仲間の車へ。

さて、どうしたもんか、ととりあえず自販機で炭酸。

ぷっはぁーーーーーーーーー!

さて、どうしたもんかw。

とりあえず帯広に宿とって、いつも世話になっている岳さんと飯したいね。
そうしよう。
岳さんも快く承諾してくれて、さらに旨い店まで予約してくれていて……。
感謝しかないm(_ _)m

釣りの情報きくとやはり川は数週間前、石狩川が氾濫した豪雨で相当やられたらしい。昭和初期から頑張っていた頑丈な橋が流されたとか、インレットはほぼ全滅とか、とか。

決まったな、知床で、カラフトマスやろう。

後編はこちら!


長沼”GNU”商史
パシフィック・クレスト・トレイルをスルーハイク、コンチネンタル・ディバイド・トレイルをセクションハイク、テ・アラロアをスルーハイクするなどなど、国内外の長大なトレイルを歩き、その模様を『釣歩日記』にまとめる。近年取り組むのは、子供の頃から楽しむ釣りとハイキングの融合。ブログ=「釣歩大全 ロングトレイルと釣り」

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