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「自然享受権」ってナンだ? 楽しんでなんぼのノルウェーのアウトドア哲学

2016.11.14 Mon

小宮華寿子

小宮華寿子 ライター、編集者

「Akimama×NORWAY」の小特集、先日の第1回「ノルウェー人はなにを着る?」に続いての第2回目は「ノルウェー人のアウトドア哲学」。「自然享受権」に「フリルフツリヴ政策」など、ノルウェーでは国を挙げて国民みんなのアウトドアライフを後押ししているとか。なんとも、羨ましい話です。

ニッカポッカにサスペンダー姿のおじ様が渋すぎッ。「自然とともに生きる」そんな人生を醸し出していました。ちなみにここは極々ふつうの駅です。これが日常なんですね  
 ノルウェーに住む人々ってホントのところ、アウトドアが好きなんでしょうか? だってまわりにこんな友だちいませんか? 

「私は田舎の自然のなかで育ったから、キャンプも登山も興味ない」っていう人。

 しかも日照時間が短く暗く寒い冬が何ヶ月も続くノルウェー。もしかしたら、自然と戦うって感じなのかな……。そんなことを想像しながら、ノルウェー人に聞いてきました。
グロさんはフロイエン山ケーブルカーを運営する会社のイベントマネージャー。現在はシングルマザーですが、間もなく結婚予定。婚約者の方ともアウトドアなデートを楽しんでいるそう 
 グロさんは、8歳の男の子の母親でもある36歳。ノルウェートレッキング協会に勤めた後、現在はベルゲンのフロイエン山でネイチャーガイドをしています。

 長い冬はどんなことをしているの? という質問に、「ランドネスキーに、クロスカントリー。アルパインにテレマーク!」とわくわくした笑顔。

 スキーって答えるだけじゃないのね……さすがスキーの本場。ノルウェー人は本当に「スキーを履いて生まれてくる」のかも。

 首都オスロでさえ、冬にはスキーを持って地下鉄や路面電車に乗り、帰りは滑って家まで帰ってくる人々の姿は一般的な光景だといいます。

「自然が近いっていうのがすごくいいでしょう」とグロさんは誇らしげ。

 今回の旅ではベルゲンで半日しか滞在時間がないなかで、彼女の案内のもと自然遊びを体験できました。

 グロさんのいるフロイエン山の山頂(標高320m)はベルゲン中心地からケーブルカーでわずか6分。もちろん、歩いて登ることもでき、さらに山頂からは10ものハイキング(トレッキング)コースが整備されています。また、山頂から15分ほど歩いたところには小さな湖があり、マウンテンバイクやカヌーをレンタルして気軽に遊べるようになっていました。
(左)リフレクションが美しい山頂付近の小さな湖“Skomakerdiket”は、カヌーがよく似合う。(右)マウンテンバイクで見つけた眺望ポイント。ベルゲンには7つの山があり、年に1回すべての山を縦走する登山イベントが開かれているそう  
 ノルウェー人は子どものころから親と山に出かけ、冬はスキーをして育つのだそう。成長して恋人ができて、デートに向かうのはやっぱり自然。ハイキングやサイクリング、キャンプなどしながら愛を深めます。そうして大人になった人々が結婚して家庭を持てば、やはり子どもと山に出かけ、スキーを教えながら育てるのでしょうね。
 
 娯楽施設がほとんどないという事情もあって、ノルウェー人は大のアウトドア好き。長い冬だって心から楽しんでいるようです。
親子で自然散策を楽しむ人がたくさん。ベビーカーで湖畔の散歩をしている人もいました

自然と生きることを楽しんでこそ

 ノルウェーには「フリルフツリヴ(Friluftsliv)」という言葉があります。

 Friは「自由」、luftsは「空気の」、livは「生活」で、「自然との共存。自然のなかでのアクティビティ」という意味。

 日本語としては「アウトドアライフ」が対訳にはなるのですが、そう訳すとなにかちがう……。

 日本に住む私たちが「アウトドア」と言うとき、そこには「非日常」感がありますよね。いっぽう、ノルウェーの「フリルフツリヴ」は「日常」なのかなと。

 自然とともに生きる毎日であり、それを楽しもうという意思も含んでいる言葉のようなのです。そして、自然のなかでの時間を共有しながら親から子へと伝えられてきた哲学だと受け取りました。
(左)フィヨルドエリアの断崖と海面との間の細い土地にもポツポツと佇む家々。ここで生きているんだものなあと、彼らの自然感に思いがめぐります。(右)夏はベリー摘みのシーズン。森に入ってベリーを摘むことはノルウェー人にとって特別なことではありません。ジャムにして冬の間のビタミン源に
 自然と共存するだけじゃない、楽しんでなんぼというノルウェー人らしさが表れているものに、「自然享受権」という法律があります。

 自然はみんなのものという権利。このおかげでノルウェーでは私有地だろうが国有地だろうが、山に生えているベリーもキノコも誰もが自由に採ってよかったり、山から住宅街までスキーで滑り降りてくることが当然だったりするわけです。

 さらには「フリルフツリヴ政策」という国を挙げての政策にも。国民の健康増進のために、政府は国民全員がアウトドアライフに参加することを目標にしているのだといいます。

 日本にも「アウトドア政策」なんてあったらおもしろいのに!
ノルウェーの昔話『三匹のやぎのがらがらどん』にも出てくる森の妖精トロル。森の妖精がとってもポピュラーなのは自然への畏敬と親しみの証。写真のヤギはフロイエン山の草刈りという大切な任務中
 

[取材・文・写真=小宮華寿子 取材協力=ノルウェー政府観光局

小宮華寿子

小宮華寿子 ライター、編集者

旅行・アウトドア関連の出版社勤務を経て、フリーランスの編集者に。育ち盛りの2男1女の肝っ玉かあさん。ひとりでも子連れでも世界を歩き、オーストラリアとブラジルを含む引っ越し歴はなんと16回。次はどこの国に暮らすか考え中。著書に『ブラジルの手しごと』(メイツ出版)がある。

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