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テントやステージ、そしてオブジェまで。遊んでよし、食べてよし! 笑いが止まらない素材「竹」のハナシ

2017.10.23 Mon

Miyake Gaku 写真家

神奈川県北部の小さな山々に囲まれた、「フジノマチ」に暮らす由なし事を、山岳写真家の三宅岳さんが、つらつらと書き綴る都市近郊田舎暮らし系定点観測型連載「自然暮らし時々方々山(仮)」の第4回目。前回も紹介したように、ここ藤野ではさまざまなイベントが多く開催されています。しかも、そのほとんどは、地域の人たちによる手作りのオーガニックなイベントです。そこで大活躍するのが「竹」。短期間で再生産可能なこの素材は、使い方によっては、とっても便利な素材なのです。

 10月上旬に、前回紹介した主催イベント「ぐるっとお散歩篠原展」が無事終了。まあ、天候にも恵まれ、ホット一息。

 さてさて、もう20年以上も、毎年毎年、地元である旧藤野町内であれやこれや数多くのイベントを楽しんでいますが、そのイベントを開催するときに、なくてはならない大事な物があるのです。それも、地産地消。使って喜ばれるのだから、とてもありがたい。しかも全部、タダで頂戴しています。思わず、ケケケケと笑いが込み上がる。それが竹であります。

 イベントをやる際に、どういった場所でやるのか、ということは、イベントの成否を決めてしまうぐらい大事なこと。で、規模の大きなものになると、どうしても屋内だけでは収まらなくなってくるのは、よくある話。現在、全国のあっちこっちでやっているフェスも、やっぱり屋外だから楽しいというものでしょう。

 しかし、ただ外でやります、だけでは面白くもなんともない。そこで、テントやステージが欲しくなってくるわけです。そういった時、多くの場合、足場用単管パイプとクランプを利用して、工事現場よろしく組み立ててしまっているようです。でもねえ、なんだか味気ないじゃないですか。そこで登場するのが竹です。

*     *

 ところで、竹の繁殖力は凄まじいもの。竹害という言葉があるほどなのですよ。もともとは外来植物である孟宗竹。タケノコなどのために集落近くに植えられてきましたが、その市場価値が低くなり、放置されることが多いのです。すると、その繁殖力の強さで、あっという間に竹林が広がり、気がつくと手に負えなくなるのです。真竹も破竹も同じようにパワフルに拡大中。なんと、全国の多くの自治体で、この広がりすぎた竹に頭を悩ませているところ。例えば、大分県の臼杵市で行なわれている「竹宵」という大規模で洒落たお祭りも、元はと言えば、竹対策がスタート地点。とにかく、アチラコチラの自治体が頭をひねって予算をつけているところなのですよ。

 そして、僕らの藤野でも、間違いなく竹林は増えてきているのです。一方、それなら、筍を味わおうと思っていると、収穫直前にイノシシどもに食われてしまうこともしばしば。いったい誰のための竹なのかと絶句してしまうというわけです。

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 そんな厄介者の竹を、とても有効に使えるのが、野外イベントなのです。

 素人でも手軽に伐り出し。運搬も容易。番線とシノ(番線を固定するための手軽な道具)があれば、ちょっと慣れれば誰でも大きな建造物ができてしまうのです。しかも、竹のおもしろいところは、しなること。力を加え、弓なりのカーブを描かせれば、なんとも美しい曲線を簡単に作れるのです。そこにホワイトシートでもかければ、なんとも楽しい空間のできあがり。

 記憶の中で、僕らがつくった最大の竹テントは、「炎舞響刻」というイベントを行なったとき。このときは当時の町営グランドに、全長70メートルほどのテントをつくったのです。最も高い部分は二階建て以上の高さとなり、そこに巨大な岩をヤジロベエのようにバランスよくぶら下げるという、カッコよいものでした。

 そして、最近の「ぐるっとお散歩篠原展」では 、シンボリックなタワーと、舞台用テントに竹を利用。他にも、スリットを刻んで照明にしたり、半割にして皿にしたり、輪切りにしてコップにしたりと、変幻自在。

 さらには、枝などで叩けば軽い音の即席太鼓のできあがり。そして、大きく太い孟宗竹の節を鉄筋で突き破り、その片側をスリッパの底で叩けば、腹の底に染み入る超低音。ぶっとい音の打楽器にも早変わりするので、イベントでも大盛り上がり。

 そして、事後の始末も楽しいもの。使い切ったら竹炭にするもよし、あるいは、そのまま乾燥させると、今度はしなることのない堅い材料として、またまた翌年に出番登場となるのです。

 まだまだ、あれやこれや、さまざまに使える便利な存在の竹。こいつが無尽蔵にあると思うだけで、ケケケケとにやけてしまうわけであります。

Miyake Gaku 写真家

(みやけ・がく)写真家。1964年生まれ。東京農工大学環境保護学科卒業。自然と芸術の町・藤野町牧野(現在は相模原市)に暮らし、山や自然を中心に撮影を続ける。これまでに多くのガイドブックなどを執筆撮影するいっぽう『山と溪谷』や『岳人』をはじめ山岳雑誌などで活躍中。

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