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濃いめのコーヒーに甘いスイーツ。スウェーデンのコーヒータイム“Fika”から学ぶ、自分らしい働き方

2018.03.14 Wed

HAL パティシエスケーター

スウェーデンの街、ヨックモックにある“Jokkmokks Kyrka”という教会。真っ白で凛としている風景に、かわいらしいカラーリングの建物が映える。
 スウェーデンなど北欧の国々は、世界で有数のコーヒー消費大国だということをご存知ですか? コーヒーの原産国とはほど遠い国々ですが、それはそれはコーヒーをよく飲むそうです。

 ところで、“Fika”という言葉を聞いたことはありますか?

“Fika“ 日本風に表記すれば、「フィーカ」となります。その意味は……お茶をする。彼の国でお茶といえば、コーヒーです。つまりは、コーヒーブレイクのこと。

 濃いコーヒーに甘いスイーツ。これがスウェーデンでの定番らしく、季節や時期によってはいろいろなお菓子が登場するとか。フィーカのスタイルは、基本的には友だちやファミリー、または同僚たちといっしょにのんびりとした時間を過ごし、会話を楽しむというもの。どこかの国のように、デスクでコーヒーを片手にひたすら仕事を続けるというのではなく、たとえ仕事中であってもONとOFFをしっかりと切り替えましょう、というメッセージも含まれています。

 なんで突然、フィーカなの!? と思いますよね。じつはこのフィーカから北欧の人たちの生き方を学んでみよう、という動きがあるのです。せかせかと働き続けるわれら日本人にとって、リラックスする時間をつくることで「余裕」という豊かさをプラスしたい、と。そのフィーカがいいヒントになれば、と語っているのは……こちらの御仁。
UPI OUTDOOR鎌倉の店先にて。寒川ハジメさんです。
 UPIアドバイザーの寒川(さんがわ)ハジメさんです。UPIといえば、Akimamaでもおなじみのモーラナイフを扱っている輸入代理店アンプラージュインターナショナルのこと。その鎌倉の直営店にて手伝いをしているのがこの寒川さんで、お仕事柄、スウェーデンへの渡航歴もたくさん。実際に現地スタッフの自宅でリアルフィーカを体験。その魅力に取り憑かれているそう。

 さて、寒川さん、フィーカの魅力ってなんでしょう!?

「フィーカは、文化です。コーヒー消費大国でもあるスウェーデンでは、ただ単にコーヒーを飲むなんてことはしません。コーヒーを飲む時間を大切にするのです。そこで生まれる会話やゆったりとした時間。この、人と時間の関係性のなかに生まれてくる雰囲気こそが、フィーカなのです。たぶん、ゴリゴリに仕事をして競争心を煽られるような生き方とは無縁なんじゃないかな。人として豊かでいい時間を過ごそう、そんな意識がしぜんに生まれてくる。フィーカが培っているのは、競争よりも協調。たぶん、フッと息を抜いたほうが、結果的にはいい仕事につながると思うんですよね」
左上 実際のスウェーデンの家庭でのフィーカの様子。スウェーデンの伝統菓子が並ぶ。右上 日本でもおなじみのヨックモック風クッキー“RULLRÅN”(ルールロン)。左下 レンメルコーヒーのカップもなんとも言えない風合いを出している。右下 焚き火を囲んでのアウトドアフィーカ。
「ぼくはこの仕事に就く前からじつは『サボり』という言葉を生き方のテーマに掲げているんです。東京から三浦に生活の場を変えた理由もそのひとつ。平日でもカヤックもできるし、浜で寝っ転がっていることもできる。仕事と遊びが簡単に切り替えられるんです。そして、この『サボり』の感覚をたくさんの人たちを共有したいなぁと思って、焚き火カフェを始めたんですよね」

「焚き火の脇にハンモックを吊るせば、これはもうサボれるアウトドアなんです。じ〜っと動かないアウトドア。自分が動かないと、周りが動いているのがよくわかるんですよね。雲が流れていたり、木が揺れていたり、風が吹いているなぁとか。それで、お、動かないアウトドアというのもアリだなと思いました。『サボり』という感覚にぴったりだったんです」

「サボるというと、なんだかネガティブな感覚にも取られがちですが、もっと肯定的な意味もあるはずです。日常を楽しくするためには、そういうブレイクが絶対的に必要であると。だから、ちゃんとサボれない人は、ちゃんとした仕事もできないのかなぁと。極論かもしれませんけどね。でも、ここにつながるんです、フィーカの考え方が。北欧の人たちは本当に豊かに暮らしています。それは、風土気候からなる自然の豊かさゆえかもしれないし、そこに生まれ根付いてきた生活文化がつくりあげたものです。その豊かさの表現のひとつが、フィーカなのかなと思っています」

「でも、日本人は勤勉な人種ですから。だれかが働いているときにサボるってことがなかなかできない。そのサボるってことがおおやけにできるようになれば、なんの気兼ねもいりません。いろいろなことを抱えているこの国のひとつの突破口というか、日に何回か自分を解放してやれることが『自分で』できたら、日々のつらさというのは乗り越えられたりするわけで。処世術ですよね。生きるための方法みたいな」

「号令みたいに『フィーカタイム!』って言ったら、ハイ、仕事ヤメ!! この言葉、ぼくの耳には『ハイ、サボり!』みたいに聞こえるんです。まったくおんなじですよ。世の中でなにか後ろめたいことって、裏を返せばすごく魅力的なことだったりもして。フィーカを生活のなかに組み入れて、休むところは休む。それを日常で実践しているのが北欧の人たちだとすれば、ぼくはそのライフスタイルに惹かれてしまいます。そして、やっぱり日本人なりの消化の仕方ができると思うのです」
左上 UPI店内の壁には、モーラナイフをはじめとしたさまざまなアウトドアギアがぎっしりと飾られている。右上 北欧といえば、トナカイ。左下 レンメルコーヒーはやかんに直接粉を入れて煮出して飲む。焚き火コーヒーという別名もある。右下 UPI OUTDOOR鎌倉は鎌倉駅のホームが見える立地なのだが、それを感じさせない秘密基地感のある外観になっている。

「うちのお店でスウェーデンのごはんを囲みながら、こんな話をする機会をつくりたいと考えました。3月23日の金曜日に『北欧野外文化倶楽部』を開催しますので、興味があれば、ぜひお越しください」
 
(写真=横倉雅大/UPI OUTDOOR鎌倉)
 

スウェーデン料理が楽しめる!「北欧野外文化倶楽部」
日時:2018年3月23日(金)18:00〜19:30
会場:UPI OUTDOOR 鎌倉店内(JR鎌倉駅西口徒歩2分)
参加費:1,000円(定員20名)
申込み方法:店頭、もしくは電話にて。TEL:0467-53-7845

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