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新型コロナで行動が縛られる昨今。この機会に、手軽にできる自然への貢献はいかが

2021.06.25 Fri

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

 新型コロナウイルスのため外出が減ったこの1年。浮いたお金でアウトドアウエアやギアの新調もいいけれど、自然保護活動への寄付、という手もある。豊かな自然なしには、アウトドアでの喜びもないわけで……。
 



 海山川で遊ぶものなら、大自然に貢献したくなるもの。私も、川に放置された釣り糸やルアーを拾い集めたりするが、まあ自己満足の範疇でしかない。叶うなら、「ダム建設を中止に追い込んだ!」なんていう大きな成果に関わりたい、しかし、日々の暮らしに追われてチャンスはなかなか巡ってこない。
自分のフィールドに関係あるぞと、この活動を選んだ。
 そんなわけで、先日、自然保護活動に寄付してみた。手間はいらず、感謝されるし、大きなプロジェクトに関われる。なにより、自分が遊ぶフィールドの保護活動なら、将来のアウトドアライフにプラスになるのだ。
寄付のお礼とともに、読み応えのある資料が。
 私は四国の剣山系によく登るので、「四国自然史科学研究センター・日本クマネットワーク・日本自然保護協会」の共同プロジェクトである「四国のツキノワグマ保護活動」を選んだ。寄付は思い切って1万円! 後日、お礼の手紙と、四国のツキノワグマ(正確な名称はニホンツキノワグマ)のいまを知らせる活動パンフレットや資料が届いた。
剣山系の道(春)。
 四国のニホンツキノワグマの最後の砦となっているのが、四国東部にある剣山系。剣山(1954.7m、西日本第2位の高峰)を頂点とし、バックパッキングという言葉がよく似合う雄大かつたおやかな山並みが広がっている。ここに生息するニホンツキノワグマはわずか16~24頭で、それが四国の個体のすべてだ。最悪で2036年までに絶滅する可能性が62%だという。
剣山系の峰々(秋)。左上奥は三嶺(1893.4m)。
 送られてきた活動パンフレットにはそんな現状や、なぜ四国のニホンツキノワグマが大切なのか、保護活動の内容などが、広げればA2サイズの誌面に詳しく、分かりやすくまとめられていた。読んだ人は、「剣山系のニホンツキノワグマが——」と家族や友人に語らずにはいられないだろう。
1万円以上寄付した人への返礼品。
 また、1万円以上の寄付には、「ニホンミツバチのはちみつ」または「五陵箸」の返礼もある。私は「その金を保護に使ってくれ」と辞退したのだが、少し後悔している。「はちみつ」はクマの保護に心を砕く山岳地の養蜂家の逸品だし、「五陵箸」は杉植林を有効利用したもので、杉の伐採後は自然林に戻す活動にもつながっているという。ありがたくいただいたほうがよかったのかもしれない。
剣山系の森(晩秋)。
 ニホンツキノワグマは、30~50万年前にアジア大陸から渡ってきたツキノワグマが先祖。それが遺伝的に分化して日本だけに生息する固有亜種になり、一部が四国という小さな島で暮らすようになった。

 その、遥かなる進化の歴史が、四国では終わろうとしている。それは理屈抜きに「あってはならぬこと」。察するに、これまでの四国では本気で「あってはならぬ」という熱い人が少数派だったようだが、そんなのはもうここまでだ。

 こういう、いいかげんにしようっていうコト、なんとかするぞという活動、あなたが遊ぶフィールドにもあるんじゃないか?

 
 

(文・写真=大村嘉正)

大村嘉正 アウトドアライター、フォトグラファー

四国の瀬戸内海暮らし。仕事は自然・旅系ライター&フォトグラファーで、生きかたはバックパッカーでリバーランナー。著書はラフティングガイドたちの1年を追った『彼らの激流』(築地書館)。

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