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【イベントレポート】(re)generate! First ─ ゆったりとした空気感と刺激的なコンテンツ溢れる二日間

2022.06.29 Wed

渡辺信吾 アウトドア系野良ライター

 2年以上にもわたる新型コロナ感染症の影響も徐々に落ち着きを取り戻しつつある。まだまだ手放しではよろこべる状況ではないものの、屋外でのマスク着用に関する基準も緩和され、各地でアウトドア関連のイベントが開催されるようになってきた。どのイベントに参加しようか迷うほどだ。

 そんな中、筆者は筆者は5月21日(土)-22日(日)に静岡県沼津市の泊まれる公園「INN THE PARK」で開催されたイベント「(re)generete! First」にお邪魔した。

 開催前にこのイベントについて主催者インタビューの記事(地球と人の“再生”について考える二日間。(re)generate! First開催!)を書かせていただいたが、実際に参加してみると期待していた以上に刺激的なイベントだった。すべてを紹介することはむずかしいが、わたしが気になったコンテンツなどを中心にイベントの模様をレポートしたいと思う。

 会場は、INN THE PARKの宿泊棟が受付。その奥にあるサロンと呼ばれるスペースがトークショーの会場。そしてその下の階がギャラリーとなっていて、そのお隣にはオープンエアのカフェスペースがあり、そこから坂を下ったところにある広い芝生のエリアがメイン会場となる。こちらにはアクティビティ、ギアマーケット、フードのブースがぐるりと展開されている。

 さらに、メイン会場からは少し離れているが特別なキャンプエリア「MINIMUM CAMP VILLAGE」が設けられ、オートキャンプではなく、バックパックで背負えるだけの荷物でのソロスタイルという制限付きでキャンプできる。わたしは、こちらでのキャンプチケットを購入したので、キャンプインしながら二日間じっくり楽しむこととした。

 入場受付を済ませたあと、この日は午後から一時雨という予報だったので、まずは自分のテントを張りに行く。メイン会場からは少し離れてはいるが、広々とした芝生の公園。他の参加者のみなさんも各々ULスタイルでテントを設営している。設営を済ませたタイミングで雨がポツポツ降り始めてきたので、雨宿りがてら、INN THE PARKの宿泊棟の方へ。

 日本で初めてゼロ・ウェイストを宣言した町として知られる徳島県上勝町で醸造するクラフトビールブランド「RISE&WIN Brewing Co.」が出店していたので、上勝町特産の上勝阿波晩茶を使用したIPAの“KAMIKATZ IPA”をいただいた。かすかにお茶を感じるしっかりとした味わいのビールで美味い。

 同じエリアには、北アルプス雲ノ平から雲ノ平山荘が出店。こちらではアフリカ・ガボン共和国の料理ムアンバライスなるものが供されていた。

 ビールを飲んで気分が良くなったところで、Spectatorの青野利光さんと2-tacsの本間良二さんのトークショー「自然な暮らしって何だろうか?」を拝聴。お話を聞きながら今の自分にできる自然な暮らしってなんだろうと自問自答。ちょっとモヤモヤしてしまった。いい意味で。

 このトークショーが終わったあと、階下のギャラリーに立ち寄り、スキーヤーであり写真家でありスノーカルチャーマガジンStubenの発行者でもある渡辺洋一さんの写真展「雪 森 – The Essence of the Winter Forest」が開催されてた。渡辺さんともお話をし、Stubenの5号も購入。

 ようやく雨も止んだので、メイン会場である芝生広場の方へ移動。こちらにはアクティビティやフード、そしてギア系のマーケットのブースが並ぶ。

 二日目のトークショーでも登壇する「POW Japan」のブースがあった。こちらは500円以上の募金をすると、シルクスクリーンでPOWのロゴをプリントしてくれる。わたしはこの日着てきたジャケットにプリントをしてもらった。

 このイベントのメイン協賛のひとつである「VIVOBEARFOOT」のブースへ。イベント紹介の記事で主催者の千代田さんが言及されていたように、このイベントのきっかけとなったブランドであり、足の本来の力を再生させることをコンセプトとした靴づくりが特徴。試履きをしながらスタッフの方のお話を聞いたり、足指のヨガ「トーガ(toega)」を教えていただくうちに、すっかり感化されてしまった。それだけでなくVIVOのシューズの履き心地にも惚れ込んでしまい、一足購入してしまった。

 この日は、知り合いと話し込んでいるうちに時間が過ぎ、そそくさと自分のテントに戻ることにした。

 翌朝は、8時から会場内でmoonlight gearによるフリーマーケットが開催された。スタッフ私物のULギアが大放出され、朝からたくさんの人たちが集まっていた。

 会場内のフードブースも朝からオープン。わたしは、「蜜香屋」さんの芋蜜をかけたバタートーストとコーヒーで朝食。芋から抽出したという芋蜜は初めて食したが、蜂蜜ともメープルシロップとも違うやさしい甘さがスーッとカラダにしみわたる。

 個人的に一番気になったのがこちらのブース「スターオーバーオール」。沼津で代々制服の縫製などをされている山本被服さんのブースだ。こちら実は大正時代に渡米した創業者(現在の代表の高祖父)がロサンゼルスでデニムのオーバーオール作業服のメーカーとして創業し、その後日本に帰国し起業された会社なのだそうだ。第二次世界大戦の戦禍によりデニム作業服の製造は途絶えてしまったらしいが、つい昨年クラウドファンディングを使って約100年前の自社製品を現代に復刻させたとのこと。当時の商標登録やカタログの写真なども見せていただいたのだが、そのブランドストーリーや背景が非常に面白い。そして製品自体も魅力的だ。現在も少量生産でクラウドファンディングのみで展開されているらしいので、興味のある方はこちらのリンクをご覧いただきたい。

「海千山千會」のブースでは、GENTEM STICKの25周年モデルとして話題の藍染和紙を使ったTT168が展示されていた。現物を見たのはこれが初めて。藍染和紙をスノーボードに落とし込むという発想もすごいが、完成品の美しさにと見惚れてしまった。

 スタイリストの石川顯さん、アートディレクターのジェリー鵜飼さん、アーティストの神山隆二さんの3人からなる「ULTRA HEAVY」のブースではフリーマケットを開催。モデルのKIKIさんも一緒に出店していた。

 販売や展示だけでなく、ワークショップも多数開催されていて、こちら「STATIC」のブースでは裁断ゴミのアップサイクルをテーマに、裁断ゴミを中綿にしたクッションづくりのワークショップが開催されていた。

 五明淳さん率いる「芽育“MAKE”雪板研究所」からは雪板SNOW TOY制作のワークショップ。できあがった自分だけのSNOW TOYをまるで子どものようにニコニコしながら満足げに持ち帰る参加者の顔が印象的だった。

 トークショーにはAkimamaでもお馴染みのPOW JAPANのみなさんが登壇。たくさんの方々が興味があるようで客席は満席だった。

 すべては紹介しきれないがトークショーもマーケットもワークショップも、どのコンテンツも楽しい。登山、トレラン、スノー、スケート、サーフ、自転車などなど、いろんなカルチャーが交差していてゆったりとした空気感もいい。それにここに集まっている方々(出店者も参加者も)がアウトドア愛好家というだけでなく、アウトドアを通して自然との接し方、遊び方、そしてその再生など、感度が非常に高いことがわかる。それはいちメディアの人間としても、いち個人としても大いに刺激を受けた。イベントが掲げている「リジェネラティブ(再生)」「ウェルビーイング(心身ともに健康な状態)」といったコンセプトが、単なる言葉だけでなく実感として腑に落ちたのだ。

 イベントからひと月以上経つが、今もときどきトーガ(足指ヨガ)をしながら「リジェラティブ」「ウェルビーイング」について考えている今日この頃だ。

(文・写真=渡辺信吾)

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