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人間本来の走りを目覚めさせるワラーチラン。遺伝子レベルで記憶している裸足走法を覚醒させて、登りに強く、ケガのしにくい足を手に入れよう!

2020.04.22 Wed

さとう

さとう アウトドアショップバイヤー

 巷で噂の “ワラーチ” ラン。トレイルはもちろん、街中でもよくみかけるようになった。トレーニングとして効果があり、ワラーチで走る人が増えてきている。

 ワラーチとはメキシコの先住民、タラウマラ族(ララムリ)が履いている「ワラチェ」というサンダルを参考につくられたものの総称だ。このワラチェ、廃棄されたタイヤを底にして、革紐を通し足に巻いただけのシンプルなサンダルなのだが、タラウマラ族はこれを履いて日常的に160kmという長距離を走るという。そんなワラーチは、走れるサンダルとして、いまランナーの間で注目されている。

 最初に見たときは、あのサンダルのようなワラーチを履いて走る姿に違和感を覚えたが、いまではすっかりワラーチにはまり、トレイルもロードもこれで走っている。

 勝手に呼んでいるのだが、ぼくもいまではすっかり「ワラーチ族」の一員だ。

自作 ワラーチ自作ワラーチ。最初の一足は自作がおすすめだ。愛着がわくし、普段履きとしても個性的でかっこいい。

 実際にワラーチで走るまでは痛そうだし、機能的ではない印象で、ワラーチで走る意味を理解できなかった。ナチュラルなマインドの人が好むランニングスタイルと一歩引いて見ていたところがあり、あまり興味を持てなかった。そういった先入観をもっているのはぼくだけではないはずだ。

 ところが一度ワラーチで走ってみると、途端に180度考えが変わってしまった。

 その理由は意外にも機能的で理にかなっているからだ。

 全身を使って走れる印象で、シューズを履いて走るときには感じたことのない感覚でいっぱいになる。走ることにおいて不便は感じないし、逆に高性能のシューズを履いているかのように快適でとても走りやすい。

 足のつくりは非常に複雑で、26の骨、33の関節、108の靭帯でつくられている。レオナルド・ダ・ヴィンチが「足は人間工学上の傑作であり、最高の芸術作品である」と表現しているとおり、非常に緻密で高い機能性を持っている。

 われわれの祖先はとても長い間、裸足で野をかけ、獲物を追いかける狩猟生活を長く続けてきた。いわば裸足ランのエキスパートだ。ぼくらも遺伝子レベルで、裸足での走り方を記憶しているのだと思う。靴を履いて走るよりも裸足の方が高いパフォーマンスを出せるのは必然的なのかもしれない。

 ぼくがワラーチで走る理由は、単純に、足の持つ機能を最大限に引き出せる感じが好きだからだ。「プリミティブ」そんな言葉がぴったりなランニングそれがワラーチランである。すべてのランナーにぜひ、おすすめしたい。

公園いきなりアスファルトの舗装路を走ると最初はやはり痛い。河川敷や公園のやわらかくフラットな土の上で3㎞くらいの短い距離からはじめるといいだろう。

 ワラーチで走るために特別なトレーニングは必要がない。裸足での走り方は体が覚えていて、体が勝手に動き、意外とうまく走れる。まさに “Don’t think,feel !!” 。自分の体が最高の裸足ランのコーチなのだ。自分の体と対話をしながら走れるところもおもしろい。

 足の裏には超優秀なセンサーがあり、着地した瞬間に路面状況を判断し、痛くないよう足裏全部を使って着地の態勢を補正している。力んでいると足は痛いが、脱力して足裏を使えばスムーズに走れる。そんなすごい機能に気づかされる。そのため、3、4回も走れば舗装路を走っても痛くない走り方ができるようになる。足に痛みを感じなくなったころには無意識的に体は脱力し、走りが変わってくる。そうなってくると人間本来の走り方を体が思い出したといえるだろう。

ビブラムシート#8338 自作 ワラーチ パラコードワラーチはビブラムソールとパラコードがあれば、かんたんに自作ができる。使用したのは厚さ7㎜の「ビブラムシート#8338」。パラコードは好みの太さ、色を選ぼう。どちらもネットで安く手に入るので、いちどつくってみよう。

 ぼくは世界でひとつだけで愛着もわく自作ワラーチが好きだ。既製品として市販もされている。市販のものはルナサンダル(LUNA SANDALS)の「ベナード 2.0」が定番でおすすめ。ソールは9㎜と厚めで、ストラップも太くホールド感がいいので、自作ワラーチよりも初心者には向いている。

 なにを買うにしても、ソールは薄いものがいい。足裏感がはっきりしているため、太古の記憶を呼び覚ます刺激をあたえやすいと個人的に思っている。

ビブラム vibram ファイブフィンガーズ Five fingers V-Trail 2.0ワラーチとシューズの中間といった感じのビブラム(vibram)「ファイブフィンガーズ(Five fingers)」。ベアフット(*1)シューズと呼ばれ人気があり、愛好家も多い。
(*1) 裸足という意味。

 ビブラムから発売されているファイブフィンガーズも足裏への刺激が強くワラーチと同等の効果が期待できる。保護機能が高く、ケガをしにくいので最初はファイブフィンガーを履き、なれてからワラーチというのもいいかもしれない。いくつものモデルがあるが、ロードだけであれば「V-Run」、トレイルも走るのであれば今年アップデートされたばかりの「V-Trail 2.0」を試してみよう。

 はじめのうちは足裏の皮膚がやわらかく、裸足だと靴ずれのトラブルが起きやすいので、五本指ソックスを履くのがいい。おすすめは、道産子ランナーの間ではもはやデフォルトのヤマチューン(YAMAtune)のスパイダーアーチシリーズだ。シューズのときにも履いているが、足底にたくさんの滑り止めのゴムがついていて、足とワラーチの一体感が抜群で気に入っている。アーチサポートもついており、生地も厚手でケガの防止にも効果的である。

ヤマチューン YAMAtune スパイダーアーチ Spider Arch 5toe Non Slip Dots / Short Lengthこれはショート丈の「Spider Arch 5toe Non Slip Dots / Short Length」。ほかにミドル丈もあるし、色は最大6色と豊富。あえてシューズ内で靴下を滑らせたい人用に滑り止めなしもあり。

 ワラーチにすると何がいいのか?

 ぼくの経験ではなんといっても着地がやわらかくなる点だろう。ランニングにおいて何万回も衝撃が加わる着地はやわらかいにこしたことはない。

 シューズを履いていると着地の衝撃をミッドソールが吸収してくれるが、ワラーチランでは衝撃がダイレクトに足に伝わる。なので、自然と足首、ヒザ、腰と全身を柔軟に使ってショックを吸収する走り方になる。最初はおそるおそる母指球当たりでの着地となりうまく衝撃を吸収できないが、走りこむうちに五本の足指の緩衝能力の高さに気づくはずだ。足の指は開くと衝撃を吸収する構造となっており、シューズのときよりも高いパフォーマンスを発揮するのだ。猫のようにしなやかな着地となり自分でもおどろいたほどだ。

 そのため、走り終わったあとの体へのダメージも少ない。シューズを履いて走ったときはいつも肩、腰にハリを感じていた。当然、ふくらはぎや大腿筋、股関節、ヒザにも強い疲労感を感じるのだが、ワラーチランの時には、ほとんどハリはないし疲労感もかなり少ない。体へのダメージが少なくなるため、ケガも減る。ランナー膝や足底筋膜炎など、走ることで起こりやすいトラブルとも無縁になる。 

自作 ワラーチ足の指が開き衝撃を吸収しやすくなると、下りのシーンでは足の指を使えるようになり、意外にもグリップ力を生みスムーズな着地となる。

 また、ワラーチでかかとから着地するとかなり痛い。強制的にフォアフット(*2)となるので、日本人に多いヒールストライク(*3)のくせはすぐに矯正できるのもいいところだ。
(*2) 前足部での着地のこと。
(*3) かかとでの着地のこと。

 よく聞かれるのは、走り方にどのような影響があるのかという部分だ。

 ワラーチランをはじめて、ぼく自身がいちばん体感したこと、それは、圧倒的に登りが強くなることだ。個人差はあるだろうが、これは走りこむほどに体感でき、どんどんと強くなる。シューズで走っているときは、登りのシーンになるとすぐに歩いてしまっていたが、いまではゆっくりとだが登りで走り続けることができる。トレイルランナーにおいて登りが強くなることは願ってもないことだ。

 理由としては、フォアフットにより腓腹筋が鍛えられ筋力がアップした、ということもあるだろうが、足全体の瞬発力の飛躍的な向上のほうが大きい。

 足の指が使えるようになり強い瞬発力を生む。足のアーチや足首もが連動して骨までしなっているような感覚だ。強い反発力を利用できるようになり、結果、登りで筋力をあまり使わなくなる。足が疲れにくくなるのだ。

自作 ワラーチシューズを履いているときには、足の指が締め付けられることで自由に動かせず、機能はかなり低下している。ワラーチのときの指先は各指それぞれ独立した動きができ、路面の状況に柔軟に対応ができる。下りのシーンでは、無意識だが、着地のたびに地面を鷲掴みし、意外にも路面へのグリップ性能も発揮してくれる。抜群の足裏感があってこそ成せる技である。

 もう一点はバランス感覚が向上し、悪路でもしなやかな走りとなる点だ。

 裸足に近い状態となるワラーチは、シューズのときと比べて、路面の凸凹情報を足裏から脳へ伝達しやすくなる。そのため、体が俊敏に反応できてバランスがとりやすい。また、足の指も自由に動かせるようになるので、体全体のバランス能力が驚異的に上がるのを実感できる。なにしろ体が軽いのだ。足はワラーチを履くことで本来の機能を取り戻し、バランス感覚も高めることができる。
 
 現代では、高機能のシューズに頼るあまり、足の本来持っている緩衝機能が退化しているように感じる。その機能を取り戻すには裸足で走るワラーチランが適している。ワラーチである程度走りこめば、自分の体が想像以上のポテンシャルを持つことに気づかされるはずだ。太古の記憶をさかのぼり、本来の走りに目覚める。

 今シーズンはシューズを脱ぎ捨ててワラーチで走りだしてみてはいかがでしょうか!!

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