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ヌラッと振ってスッと撃つ。小物と遊び、大物をいなす river peak「極 テンカラ」

(2018.12.05)

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 毛鉤釣りの魅力は、魚が鉤をくわえる一瞬に凝縮されている。

 魚に気取られないように近づき、ここぞと思うポイントに毛鉤を落とす。毛鉤を流れに乗せ、アタリに備えて神経を研ぎ澄ます。

 毛鉤への魚の反応はさまざまだ。勢いよく水面を割ることもあれば、モゾっと水面が盛り上がることもある。水中でギラッと腹が光ったり、流れていたハリスがふっと停まったりもする。

 魚の気配は小さな違和感として現れることもある。世界の明度が数段変わるような、水音が一瞬弱まるような、自分でも何を感じたのかを自身に説明できない、ささやかな反応もある。

 毛鉤と仕掛けは、水中に送り込んだセンサーだ。このセンサーは生き物の微細な気配をよく拾う。

 どの反応に対しても、やるべきことはひとつ。ツン、とアワセて、鉤先に魚がいるか確かめる。

 ひと昔前は、反応があれば魚が毛鉤を放す前に電光石火でアワセろと言われていたが、今では魚がしっかり毛鉤をくわえるのを待ち、遅くアワセるのが良いとされている。

 両方試してみたが、結局のところアワセのタイミングは対峙した相手しだいだと思う。見切るのが早い魚なら、毛鉤を放す前にアワセなくてはいけないし、偽の餌と気づかれなければ、深くくわえこむのを待ってアワセる。 

 竿、ライン、毛鉤、空気、水。

 全体で10m近い仕掛けと、魚と自分の間を埋める媒質を介して、アワセるタイミングを魚と相談する。1秒にも満たない時間で判断し、魚と呼吸を合わせる。ときには、判断より先に反射することもある。

 結果、鉤先に1匹の魚がぶらさがる(ぶらさがらないこともある)。会心のアワセがすっぽ抜けることもあるし、タイミングを外したアワセでも魚がかかることがある。

 いわゆる「釣れちゃった」魚は喜べないが、たとえ魚がかからなくても、会心のアワセができた日は、それだけで充足できる。神経が竿とラインを経て鉤先に至り、自分と仕掛けと魚の境界が曖昧になる瞬間に、毛鉤釣りの恍惚がある。

 魚と呼吸を合わせることに、毛鉤釣りのすべてがある。……とは言っても、道具もアプローチもなおざりにはできない。きちんと段取りを踏まなければ、魚に相手もしてもらえない。

 人が渓流に立ったとき、その日トレースするべき線はすでに引かれている。

 淵と瀬には魚が散らばっており、川面には大きく枝が張り出している。ポイントにはアプローチしやすい場所もそうでない場所もある。それらの条件を照らし合わせ、いちばん無理のないルートで歩き、枝葉をかわしてラインを操り、毛鉤をポイントへ送り込む。

 ポイントに毛鉤を撃ち込む順番や、足を置くべき石、ラインの飛ばし方まで「いちばん正しい解」がある。魚の口元へ自然に毛鉤を送ること、理にかなった美しい線をなぞることに集中して、川を釣り上がって行く。

 そんな釣りをしているうちに、道具のことが気になりだす。道具が良ければ、自分はもっと美しくて正確なキャスティングができるのではないか? などと思う。

 未熟な技術を横に置いて、長い竿、短い竿、硬い竿、柔らかい竿、高い竿……。あらゆる竿に手を出してしまう。

 いろいろ試した結果、里川を遊び場にする私は、6:4調子で全長が3.6mの竿に落ち着いた。

 この「6:4」とは竿に負荷をかけたとき、しなりのピークがどこにくるかを示している。6:4の竿では、全長に対して、尻栓から6割の距離にピークがくる。

 現在、テンカラの世界では「レベルライン」と呼ばれる細く軽いラインが使われるが、これを楽に飛ばすには、6:4ぐらいの調子がいい。竿が柔らかいので、ゆっくり振り上げても全体がぐいっとしなり、その反動で糸を飛ばしてくれる。

 テンカラの竿には、より穂先側にカーブのピークがくる7:3の調子もあるが、6:4に慣れるとだいぶ硬い。こんな竿で糸を飛ばすには「ビッ!」と勢いよく跳ねあげないと、竿の弾力を活かすことができない。

 7:3の竿は動作が速くなるぶんラインのスピードも速くなる。手返しよく毛鉤を打ち込めて、風にも強い。その反面、腕や関節に大きな負荷がかかる。その点、ゆっくり振れる6:4の竿は1日中使っても疲れない。

 そして、6:4の竿は振っていて気持ちがいい。川に流れる空気に逆らわず、その空間に馴染むようなキャスティングを楽しめる。7:3の竿を使った場合より、釣りがだいぶ優雅になる。「川に自分をなじませる」のを楽しむなら、6:4のほうが無理がない。

 さて、だいぶ枕が長くなってしまったが、この冬に登場した6:4調子のテンカラ竿を触る機会があったので、それを紹介しようと思う。

 竿のメーカーは「river peak」。モデル名は「極 テンカラ」。フライフィッシング用品を扱うショップが企画し、長さは3.3mと3.8mの2つがリリースされている。

 特徴的なのはその外観。全体に螺旋状の膨らみがついている。外側にぐるりとカーボン繊維を巻きつけることで、キャスティング時のブレを抑えているという。

 3.8mのほうに3.5号、5.5mのレベルラインとハリス、毛鉤をつけて振ってみたが、確かにブレは気にならない。一般的な6:4の竿と比べると重心はやや穂先より。ヌラッ、ヌラッとラインを舞わせて、スッとポイントに毛鉤を置きにいくような調子だ。

 フライ用品を扱うショップが企画しただけあって、フライロッドの血を感じさせる。

 グリップは凹凸のない細身のストレート。最近のテンカラの竿の多くは、グリップをひょうたん型にして掌中での吸い付きをよくしているが「極 テンカラ」のようにストレートだと、グリップのどこの位置を握っても同じように手におさまる。ポジションごとに握り方を意識しなくてもよいので、これはこれで、使いやすい。

 3.3mのほうは3.8mとはまるで違う印象を受ける。同じく6:4の調子だが50cm短いぶん3.8mよりかなり軽快だ。重量も55g(!)と超軽量。3.8mより竿先のヌケがよく、テンポよく毛鉤を撃ち込むことができる。かといって、7:3の竿の釣りのようにせわしなくもない。

 魚をかけたあとの印象は……言及したかったが、実釣日に小物しか釣れなかった。メーカーサイドのコメントを紹介する。

「レベルライン対応の竿として実釣性能を追求しました。渓流でのテストは80回以上。大物の取り込みも意識して、管理釣り場での検証も重ねました。渓流魚ではほど良い曲がりを楽しめて、50cm超えの大物ではバットパワーを引き出し、力強く取り込めます。ブレを抑えるために胴に巻いたカーボン糸によって、軽量化と強度の向上ができました。竿のサイズに対する軽さでは、おそらく世界でもトップクラスです」

 現在の販路はネット通販だけだが、近いうちに神奈川県のうらたんざわ渓流釣場に試用ロッドが置かれるという。解禁が待てない関東の釣り人は、竿に触るのをいいわけにして足を伸ばしてもいいかもしれない。

■river peak /極 テンカラ33、38
¥18,800+税(33)
¥19,800+税(38)

重量:55g(33)、70g(38)
継数:7(33)、8(38)
仕舞寸法:58cm(33、38)
商品詳細
https://riverpeak.co.jp/ja/

 
 
ライター
藤原祥弘

採集系野外活動を中心に執筆とワークショップを展開。著書に『海遊び入門』(小学館・共著)ほか。好きな獲物はカンパチとノコギリガザミ。twitterアカウントは@_fomalhaut

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